Antigravity 2.0 vs Cursor 3.5 — 「エディタを捨てたGoogle」と「エディタに全部載せたCursor」の分岐点

5月19日、Google I/O 2026でAntigravity 2.0が発表された。その翌日、Cursor 3.5がAutomationsのAgents Window統合をリリースした。24時間のあいだに、AIコーディングの二大プラットフォームが同時に大きく動いた。
面白いのは、この2つが正反対の方向に進化していることだ。
Antigravityはエディタを捨てた。2.0ではVS Codeベースのコードエディタが消え、複数のAIエージェントを起動・監視・管理するスタンドアロンのダッシュボードになった。コードを書きたければ別のエディタを開けという設計だ。
Cursorはエディタに全部載せた。3.5ではAutomationsがAgents Windowに統合され、コーディングも自動化もエージェント管理も、同じVS Code窓の中で完結するようになった。
どちらが正しいのかはまだ分からない。ただ、選ぶべき人は明確に分かれる。
設計思想の分岐
この2つを同列に比較するのは、実はもう正確ではない。
Antigravity 2.0は「エージェント管理プラットフォーム」だ。Manager Viewからサブエージェントをディスパッチし、複数のタスクを並列で走らせる。Inboxにエージェントの進捗・承認待ち・完了通知が届く。Gemini 3.5 Flashが動き、SDK経由でカスタムワークフローも組める。しかし、テキストエディタは内蔵していない。
Cursor 3.5は「AIが住んでいるIDE」だ。Composer 2.5でコードを書き、Agents Windowで複数エージェントを並列に動かし、Automationsでリポジトリを跨ぐ定期タスクを走らせる。すべてが1つのVS Codeウィンドウの中にある。
言い換えると、Antigravityは「AIエージェントのマネージャー」であり、Cursorは「AIを手足にした開発環境」だ。
料金を並べてみる
| プラン | Antigravity | Cursor |
|---|---|---|
| 無料 | あり(Gemini 3.5 Flashベース、クォータ制限あり) | なし(14日間トライアルのみ) |
| 基本有料 | AI Pro $20/月 | Pro $20/月 |
| 上位プラン | AI Ultra $100/月(5倍クォータ) | Business $40/月(管理機能追加) |
| 最上位 | AI Ultra $200/月(20倍クォータ) | Enterprise(要問い合わせ) |
価格だけ見ると互角だ。$20/月の基本有料プランはどちらも同じ。ただし中身が違う。
Antigravityの無料枠は存在するが、正直に言えば実用には厳しい。ローンチ当初は1日250リクエストだったが、段階的に削減されて現在は1日20リクエスト前後という報告がある。数リクエストで週間クォータに到達したというユーザーの声もあり、無料で本格的に使うのは難しい。
Cursorには無料プランがないが、Pro $20/月で得られる体験の安定感は評価が高い。SOC 2認証を取得しており、エンタープライズのセキュリティ基準を気にするチームには安心材料になる。
Antigravityが強い場面
エージェントの並列オーケストレーション。 Antigravity 2.0の本領はここだ。複数のサブエージェントに「フロントを組め」「APIルートを設定しろ」「ビジュアルリグレッションテストを回せ」と同時に指示を出し、それぞれがバックグラウンドで独立に動く。ノートPCを閉じてもクラウド上でタスクが進む。
Google生態系との統合。 Gemini 3.5 Flash、Google AI Studio、Managed Agents APIとシームレスに繋がる。GCPを主軸にしている組織なら、認証やデプロイのフリクションが最も少ない。
SDKによるプログラマティックな制御。 Antigravity SDKを使えば、CIパイプラインからエージェントを起動したり、スケジュール実行を設定したりできる。開発ツールとしてだけでなく、インフラの一部として組み込める設計になっている。
Cursorが強い場面
コードを書く瞬間の体験。 Composer 2.5の精度はSWE-bench Proで業界トップクラスだ。タブ補完、インライン編集、チャットの3モードがシームレスに切り替わり、コードを書くフローが途切れない。Antigravityにはこの部分がそもそも存在しない。
Automationsの実用性。 Cursor 3.5で追加されたノーリポAutomationsが地味に強い。Slack digest agent、Product analytics agent、Finance agentなど、コードリポジトリに紐づかない業務の自動化テンプレートが用意されている。マルチリポ対応で、複数リポジトリを横断する自動化も1つのAutomationで設定できる。
チームでの開発体験。 Bugbot(自動バグ検出)、Security Reviewer(脆弱性スキャン)、Learned Rules(チーム固有のコーディング規約の学習)など、チーム開発向けの機能が充実している。Antigravityにはまだこの層の機能が薄い。
見落としがちな差異
オープンソースの有無。 どちらもクローズドソースだ。ただし、Antigravityの場合はGemini CLIからの強制移行という文脈がある。OSSだったGemini CLIが廃止され、クローズドのAntigravity CLIに一本化された経緯は、一部の開発者にとって信頼の問題になっている。
モデルの選択肢。 Antigravityは無料枠でもGemini 3.5 Flash、Claude Sonnet 4.6、Claude Opus 4.6、GPT-OSS 120Bなど複数モデルにアクセスできる。Cursorは主にComposer 2.5(自社コーディングモデル)を使い、Claude Opus 4.7やGPT-5.5も選択可能だが、モデル切り替えのたびにクォータ消費が変わる。
ノーコードユーザーへの対応。 Antigravityは「プロンプトからアプリを作る」方向に振り切っており、コードを書かない人でもエージェントにタスクを投げられる。Cursorはあくまで開発者向けで、VS Codeを使ったことがない人には敷居が高い。
結局どちらを選ぶか
判断軸は3つに集約される。
「自分でコードを書く時間」が業務の中心なら、Cursor。 Composer 2.5のインライン補完とAgents Windowの同居は、手を動かす開発者にとって最も摩擦が少ない。
「AIに任せて結果だけ確認する」スタイルなら、Antigravity。 Manager Viewからサブエージェントをディスパッチし、ノートPCを閉じて別の仕事をするワークフローは、Antigravityのほうが自然だ。
両方使うという選択肢も現実的だ。 Antigravityはエディタを持たない設計なので、CursorやVS Codeと併用しても衝突しない。大規模なリファクタリングやプロトタイピングはAntigravityのマルチエージェントに投げ、細かい修正やレビューはCursorで手を動かす。この組み合わせは意外と理にかなっている。
なお、ターミナルAIのClaude Codeも依然として有力な選択肢だ。SWE-bench Verified 87.6%の精度と、サブエージェント構成による大規模リポジトリの扱いは、この2つとはまた異なる強みを持っている。IDE不要のターミナル完結スタイルが好みなら、そちらも検討する価値がある。
AIコーディングツールは「1つを選ぶ」時代から「組み合わせる」時代に移りつつある。AntigravityとCursorが正反対の方向に進化したことで、むしろ併用の余地が広がったのは皮肉だが、開発者にとっては悪くない展開だ。
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