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Google Antigravity — 「無料でClaude Opusが使えるIDE」の実力と、静かに始まった制限強化

CursorやWindsurfが月額20ドル前後で競い合っている横で、Googleが「無料」のAI IDEを出してきた。

Google Antigravityは、2025年11月にGemini 3と同時に発表されたエージェントファーストの開発プラットフォームだ。Gemini 3.1 Pro、Claude Opus 4.6、Claude Sonnet 4.6、さらにはGPT-OSS 120Bまで使える。しかも無料枠あり。開発者の間で「これ、本当に無料で使い続けられるの?」という疑念が渦巻いている。結論から言えば、その直感は正しかった。

Antigravityの設計思想:「コードを書く場所」ではない

Antigravityを初めて触ると、既存のIDE(VS CodeやCursor)とは思想が違うことにすぐ気づく。

Editor Viewは一見普通のコードエディタに見える。タブ補完、インライン編集、AIチャット——Cursorユーザーなら馴染みのある機能が一通り揃っている。ここまでなら「Google版Cursor」で片付けてもいい。

違いが出るのはManager Viewだ。これはエージェントの管理画面で、複数のAIエージェントを同時に異なるワークスペースで走らせ、それぞれの進捗を監視できる。たとえば、エージェントAにフロントエンドのリファクタリングを任せつつ、エージェントBにAPIテストを書かせ、エージェントCにドキュメントを更新させる——それを一つの画面から並列に制御する。

エージェントが作業を終えると「Artifact」が生成される。タスクリスト、実装計画、スクリーンショット、ブラウザ録画といった成果物だ。開発者はArtifact上に直接フィードバックを書き込める。エージェントの実行を止めずに軌道修正できるのは、実際に使うと想像以上に便利だった。

使えるモデルが豪華すぎる

Antigravityで利用可能なモデルは以下の通り。

  • Gemini 3.1 Pro(High / Low)
  • Gemini 3 Flash
  • Claude Sonnet 4.6
  • Claude Opus 4.6
  • GPT-OSS 120B

Claude Opus 4.6が使えるというのが注目点だ。Anthropic公式のClaude Codeでは月額200ドルのMax契約が必要なモデルが、Antigravityでは——少なくとも無料枠の範囲内で——使える。

ただし「使える」と「実用的に使い続けられる」は別の話だ。

料金と制限:「無料」の裏側

ローンチ時は「パブリックプレビュー、個人利用は無料」と謳われていた。実際にしばらくはほぼ無制限で使えたらしい。

しかし2026年3月、状況が変わった。The Registerが「Users protest as Google Antigravity price floats upward」と報じたように、無料枠のクォータが大幅に引き締められた。あるデベロッパーの報告によれば、週あたりの入力トークン上限が3億以上から900万未満に激減したという。

現在の料金体系は以下の通り。

プラン 月額 概要
Free $0 レート制限あり。Gemini 3系中心
Pro $20 制限緩和+追加クレジット
Ultra $249.99 大規模利用向け
追加クレジット $25/2,500クレジット 都度購入

問題は、クレジットとトークンの換算レートがドキュメントに明記されていないことだ。「1クレジット = 何トークン」なのかが不透明で、Google AIデベロッパーフォーラムには不満の声が溢れている。

Cursor・Windsurf・Claude Codeとの比較

Antigravity Cursor Windsurf Claude Code
月額(個人) $0〜$20 $20 $15 $20〜$200
エージェント並列実行 Manager Viewで可能 Cursor 3で対応 限定的 サブエージェント
モデル選択 Gemini/Claude/GPT-OSS 複数対応 独自Adaptive+複数 Claude専用
強み 無料枠+マルチモデル 最大のエコシステム コスパ Claude最適化

Antigravityの「無料で始められる」アドバンテージは確かにある。ただ、本格的に使い込むとクォータの壁にぶつかり、結局Proプラン(月額20ドル)に落ち着く可能性が高い。その場合、Cursorと同価格帯での勝負になる。

Cursorは3月のCursor 3リリースでエージェント並列実行に対応済みで、プラグインエコシステムやコミュニティの厚みで先行している。一方、Antigravityの強みは「Gemini 3.1 ProとClaude Opus 4.6を同一環境で切り替えられる」マルチモデル対応だ。タスクに応じてモデルを使い分けたい開発者にはこの柔軟性が刺さる。

「第三の選択肢」としてのポジション

Google Antigravityは、正直なところ「一つのツールで完結する」完成度にはまだ達していない。無料枠の不透明なクォータ管理、ドキュメントの未整備、Pro版に移行した後のコスパの微妙さ——課題は少なくない。

それでも「試してみる価値はある」と言える理由は二つ。

一つは、エージェント並列管理のManager Viewが本当によくできていること。複数タスクを同時進行で監視・制御するUIとしては、現時点で最も洗練されている。

もう一つは、Google IDがあれば30秒で使い始められること。クレジットカード登録不要。CursorもWindsurfも無料枠はあるが、Antigravityの導入障壁の低さは飛び抜けている。

Cursorに月額20ドル払い続けている人が今すぐ乗り換えるべきかと聞かれたら、答えはノーだ。でも、AI IDEを試したことがない人、あるいは「Cursorの対抗馬を知っておきたい」人にとっては、最初の入口として悪くない。Googleが本気で開発者向けAIツール市場を獲りに来ていることだけは、間違いない。

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