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NotionのAI議事録がCmd+K一発で呼べるようになった — 「細かいけど効く」4月アップデート

筆者は週に10本前後の社内会議に出ている。音声を拾うだけの議事録ツールは複数試してきたが、どれも「起動が面倒」というひとつの理由で定着しなかった。会議ページに先に飛ぶ、専用アプリを立ち上げる、URL を開く。会議は止まらないので、その30秒の操作が毎回のストレス源になる。

2026年4月、Notion がその30秒を数秒に短縮するアップデートを静かに出した。派手な新機能ではない。だが、毎日会議がある人にとっては、体感で一番効くタイプのアップデートだ。

何が変わったのか

Notion の4月リリースノートに載っている内容を整理すると、今回のアップデートは大きく3つ。

  • Cmd+K(Windows では Ctrl+K)からの直接起動: どのページにいても、コマンドサーチで「meeting notes」と入力すれば AI Meeting Notes のキャプチャを開始できる
  • カスタムインストラクション: チームや案件ごとに、要約の構成・トーン・長さ・必須セクションを事前定義できる(3月18日の先行更新と組み合わせ)
  • ワークスペース既定の設定: 管理者がワークスペース全体の AI Meeting Notes の動作をデフォルトとして固定できる

ひとつ一つは小さい変更だ。しかし組み合わさると、「Notion 内で会議を記録すること」が初めて「ログイン中に常にやれる当たり前の操作」に格上げされる。

30秒の短縮が何を生むのか

筆者が実際に試した手順は、こうだ。

会議が始まる。話している途中で Notion のタブに切り替える。Cmd+K を押して「mi」と打つと、候補の1番目に「Start new AI meeting notes」が出る。Enter を押すと、新しいメモページが開いて録音が始まる。ここまで、ストップウォッチで測って4秒。

4秒。これが効く理由は単純で、「会議の途中から慌てて記録を始める」が成立するからだ。これまでは「最初の5分を撮り逃した、もうこの会議の議事録は取らない」という諦めが発生していたが、それがなくなる。会議の半分だけでも記録してくれる AI があるなら、手で取るより圧倒的にマシだ。

カスタムインストラクションで議事録の質が変わる

Notion のカスタムインストラクションは、要は「議事録の書き方テンプレートをチームごとに AI に教え込む」機能だ。設定の中で指定できる項目を筆者の環境で試したところ、以下のようなカスタマイズが効いた。

筆者は「開発チームの技術レビュー会議」用に、次のような指示を入れた。

議論されている技術的な意思決定(選定したライブラリ、アーキテクチャの選択、ボツになった選択肢とその理由)を「Decisions」セクションにまとめてください。発言者の意見よりも、チームとして確定した事項を優先してください。アクションアイテムは「担当者名:タスク内容:期日」の形式でリストアップしてください。

これだけで、要約の品質が目に見えて変わった。従来の AI Meeting Notes は「誰が何を言ったか」を時系列でまとめる傾向があり、結論が埋もれることがあった。カスタムインストラクションを入れると「最終決定 → 根拠 → TODO」という業務視点の構造で出してくれるようになる。

ワークスペース既定の設定も業務視点では地味に重要だ。チームに1人でも Notion の設定を雑にする人がいると、議事録の体裁がバラバラになる。管理者が「社内会議ではこのテンプレートを使う」と固定しておけば、新入社員でも最初から揃ったフォーマットで書き始められる。

Granola・Fireflies との棲み分け

AI 議事録カテゴリには、Granola や Fireflies、tl;dv、Shadow といった専用ツールが既にある。Notion の今回のアップデートは、それらを置き換えるものではない。

ツール 強み 弱み
Notion AI Meeting Notes Notion に全部入っている、Cmd+K 起動、文脈共有 複数デバイスでの録音連携、話者識別は弱め
Granola 手書きメモと AI 要約の融合、オフライン対応 Notion との連携はエクスポートのみ
Fireflies Zoom/Meet/Teams への自動参加、話者ごとの精度 データが外部SaaSに留まる、料金が重い
Shadow 録画ベースの詳細解析、タスク自動抽出 個人利用寄り、チーム共有の設計が粗い

Notion の強みは、議事録と次の行動(タスク、ドキュメント、ロードマップ)が同じプラットフォームに載ることだ。議事録から直接「Projects データベース」のタスクをリンクできるし、会議後の次のドキュメントを開く動線が1クリックで済む。Granola や Fireflies はこの「ワークスペースネイティブ」ではない。

逆に、Zoom や Google Meet に勝手に参加して録音してくれる機能は、Notion にはない。現時点では画面共有している PC のマイクと音声デバイスからキャプチャする形式なので、リモート会議では自分の PC で音声を出している必要がある。ここは Fireflies 系の方がまだ強い。

日本語議事録の実力

日本企業で使うとなると、気になるのは日本語の精度だ。筆者の日本語会議で試した印象としては、要約の文章は自然で読みやすい。敬語も崩れない。固有名詞(製品名、人名、社内プロジェクトコード)は、カスタムインストラクションに事前登録しておけば安定して認識する。

弱いのは話者識別だ。誰が何を言ったかをあまり厳密に分けず、「会議全体で話されたこと」としてまとめる傾向がある。そのため「AさんとBさんが対立した」という状況は要約からは分かりにくい。議事録を「合意形成の記録」として使いたい人には物足りない。一方で、「何が決まったか」を後から振り返る用途には問題ない。

Notion の公式説明によれば、AI Meeting Notes は現在ベータ機能で、提供プランによって利用可能な範囲が異なる。筆者の確認では、Plus プラン(約$10/月)から本機能は使え、Business / Enterprise プランでは管理機能(ワークスペース既定の設定、使用量の監査)がフル解放される。

正直、微妙だと感じるところ

良いアップデートだが、全部が手放しで褒められるわけではない。現時点で気になる点を3つだけ。

1. オフライン対応がない。インターネット接続が必須なので、飛行機や地下の会議室では使えない。Granola がこの点で強みを維持している理由がここにある。

2. カスタムインストラクションを会議ごとに切り替える UI がない。ワークスペース全体のデフォルトは1つしか設定できず、「今日は技術レビュー用」「明日は営業定例用」と切り替えたい場合、毎回コピペするしかない。テンプレートを複数保存して Cmd+K から呼び出せるようになれば完璧だが、現時点ではそこまで来ていない。

3. Notion に依存する。当然だが、Notion を普段使わないチームには意味がない。議事録だけを目的に Notion を導入するのはオーバースペックなので、このアップデートの恩恵を受けられるのは「既に Notion が業務の中心にいる」ユーザーに限られる。

4秒の価値

Cmd+K からの起動は、技術的に見れば単なる UI ショートカットだ。しかし、実際に業務で使ってみると、「AI 議事録を取る」という行為の心理的コストがほぼゼロになった感覚がある。これまでは「記録するほどの会議か」「立ち上げる価値があるか」を無意識に天秤にかけていた。それがなくなり、全会議を記録するのが当たり前になる。

Notion の本体アップデートとしては地味な部類だが、業務のワークフローに与える影響は、派手な新機能より大きい可能性がある。筆者の週10本の会議は、今月から全て AI Meeting Notes で記録されている。1ヶ月後にそれが本当に業務効率に効くのかは、実績を見てからまた報告したい。

今のところの評価は、素直に「入れて良かった」だ。Notion をすでに使っているチームなら、管理者設定を開いて AI Meeting Notes のデフォルトを整える価値は十分にある。

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