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「あの会議で何が決まった?」をAIに聞くだけ — 無料のFathom 3.0が静かに変えること

「先週の定例で、Aクライアントの納期って何日になったんだっけ」

これを上司やSlackのログから探す時間、冷静に計算したことはあるだろうか。筆者の場合、週に少なくとも2〜3回はこの種の「会議の記憶を掘り起こす作業」に遭遇する。議事録を取っていても、その議事録のどこに書いてあるかを探す作業が発生するのだから、結局は同じだ。

Fathom 3.0は、その問いに対する回答が「AIに聞く」だけで済む状態を作ろうとしている。4月15日にProduct Huntで1位(581 upvotes)を獲得したこのアップデートには、会議ツールの使い方を根本から変えうるいくつかの変化が含まれている。

ボットを広めた側が、ボットを捨てた

Fathomは2020年にYCの支援を受けて創業したAI会議ノートツールだ。もともとZoom会議にボットを参加させて録音・文字起こしするスタイルの先駆者の一社だった。

ところが3.0で、そのボットを「オプション」にした。

新しいbot-free captureモードでは、デバイスのシステムオーディオを直接録音する。Zoom、Google Meet、Teamsのいずれでも、参加者リストにFathomの名前は出ない。会議ごとに「文字起こしのみ」「音声キャプチャ」「従来のボット付き動画録画」の3つから選べる。

この転換の背景は明確で、Google Meetがサードパーティのボットをセキュリティリスクとして扱い始めたことが大きい。会議にボットを入れる方式は、プラットフォーム側の方針変更で一夜にして使えなくなるリスクを常に抱えていた。Fathomが自らボットから離れたのは、ユーザーの声だけでなく、プラットフォームリスクへの先手だったのだろう。

MCP連携:ChatGPTやClaudeが「全会議を覚えている」状態

3.0で最も興味深いのは、MCP(Model Context Protocol)対応だ。

これにより、ChatGPTやClaudeのチャットウィンドウから直接、過去の会議内容を検索・参照できるようになった。たとえばClaudeに「先月のB社との打ち合わせで、先方が提示した予算感をまとめて」と聞くと、Fathomに蓄積された会議データから該当箇所を引っ張り出し、引用元のタイムスタンプ付きで回答してくれる。

これは単なる文字起こしツールの枠を超えた変化だ。会議の内容が「検索対象のテキスト」から「LLMが推論できるコンテキスト」に昇格する。自分の会議記録がRAGのデータソースになる、と言い換えてもいい。

もしこのMCP連携をClaude Codeのようなコーディングエージェントと組み合わせたら、プロダクトマネージャーが会議で話した仕様を、コーディングエージェントが直接参照して実装を始める——そんなワークフローが技術的には可能になる。実現にはまだステップがあるが、会議とコードが直結する未来の入口としては十分にリアルだ。

料金:無料プランが異常に太い

Fathomの料金体系は以下のとおり(2026年4月時点)。

プラン 月額 主な機能
Free $0 録音無制限、AI要約5回/月、基本の文字起こし
Premium $19/月 AI要約無制限、Ask Fathom、クリップ作成
Team Edition $29/月 チーム横断検索、プレイリスト、共有ノート
Business $34/ユーザー/月 CRM連携、コーチング分析、カスタム保持ポリシー

無料プランで録音が無制限というのは目を引く。多くの競合が無料枠に月○分の制限をかけている中で、Fathomは「録音は全部させる。AI要約を使いたくなったら課金してね」というフリーミアムの教科書的な設計をしている。月5回のAI要約でも、週1〜2回の重要会議に絞って使えば個人利用なら十分だ。

年間契約にすると、Premiumは約$16/月まで下がる。日本円換算で約2,400円/月。正直、会議が週2回以上ある人なら元は取れる。

Granola派か、Fathom派か

Granolaは同じ「ボットなし」カテゴリの競合だが、設計思想がかなり違う。

Granolaは「ノートパッドに自分でメモを取り、AIがそれを補強する」という、あくまで人間主導のアプローチだ。自分のメモの質がアウトプットの質を左右する。

Fathomは逆で、「全部AIに任せて、必要なときにAIに聞く」スタイル。ライブサマリーが会議中にリアルタイムで表示され、Ask Fathomで過去の全会議を横断検索できる。手を動かすのは最低限にして、AIの出力を後から活用する。

どちらが合うかは仕事のスタイルによる。自分のメモで思考を整理したい人はGranola、とにかく手ぶらで会議に入って後から検索したい人はFathom。併用している人も海外では少なくないようだ。

もう一つの大きな違いは、FathomにはCRM連携がある点だ。SalesforceやHubSpotに会議のサマリーを自動で流せるため、営業チームにとってはFathomのほうが実用的なケースが多いだろう。

正直な評価

強い点。 無料プランの太さ、MCP連携によるLLMとの接続、28言語対応の文字起こし精度(公称95%)。特にMCP対応は、今後の会議AIツールの方向性を先取りしている。

微妙な点。 bot-freeモードはまだ全機能が完全移行しきっていない印象がある。公式サイトの文言にも「coming soon」が散見され、動画録画を含む完全なbot-freeは段階的ロールアウトの途中だ。また、Granolaのような「自分のメモをAIが補強する」体験はFathomにはない。すべてを全自動に任せることに抵抗がある人には合わない。

Ask Fathomの会議横断検索は強力だが、蓄積されるデータ量を考えると、プライバシーとデータ保持ポリシーは事前に確認しておいたほうがいい。特にBusiness未満のプランでは保持期間のカスタマイズができない。

会議AIの次の戦場

Fathom 3.0は、会議AIの主戦場が「文字起こしの精度」から「蓄積された会議データをどう活用するか」に移ったことを象徴するアップデートだ。MCP連携で外部LLMから会議を直接参照できるようにした判断は、他の会議AIツールにも波及する可能性が高い。

個人で使うなら、まず無料プランから始めて、月5回のAI要約で足りるかどうか試してみるのが良い。Fathom公式サイトからすぐにセットアップできる。

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