Figmaの中で画像生成AIが使えるようになった — 重い専用ツールはもう要らないかもしれない
デザイナーの机には、いつの間にか妙な数のタブが並んでいる。
Midjourneyでキービジュアルを試作し、FluxでプロダクトのAバリエーションを作り、Veoで5秒の動画を回し、Runwayで音を足して、最後にFigmaに戻ってレイアウトに組み込む。ツールの切り替えだけで午後が溶ける。ComfyUIを入れてみようとしたけれど、CUDAドライバを直しているうちに依頼の締切が来た — そんな経験はデザイナーあるあるだ。
このカオスに対して、Figmaがついに重い腰を上げた。2025年10月に$200M超で買収したWeavyを、自社ブランドで Figma Weave として正式ローンチしたのだ。
Figma Weaveは何者か
一言でいうと「キャンバス上のノードグラフで、複数の生成AIモデルを同時に扱えるプロ向け制作環境」だ。
ComfyUIを触ったことがある人なら、あの箱と線のUIをそのまま想像してほしい。入力ノードに参照画像やプロンプトを放り込み、モデルノードに FLUX だの Veo 3 だのをぶら下げ、出力をコンポジットノードで重ねる。ブランチを切って別のモデルで試し、結果を並べて比較する。ComfyUIのワークフローそのものである。
違うのは、クラウド前提・商用モデル前提という点だ。
Figma Weaveは、Google Veo 3、OpenAI Sora 2、FLUX、Recraft、Grok Imagine、Higgsfield など、OSS で手に入らない最前線の商用モデルを最初から取り揃えている。ComfyUIはローカル実行の自由度が魅力だが、Veo や Sora のような API 専用モデルには触れない。Figma WeaveはSaaSなので、ドライバ更新もGPU調達も要らない。ブラウザを開けば、いきなり Veo 3 が動き出す。
もう一つの違いは、プロ向け編集機能がネイティブで入っていることだ。マスキング、タイミング調整、コンポジット、リライティング、マットコントロール。単に画像を生成するだけではなく、生成結果をそのまま映像制作の素材として仕上げるところまで面倒を見てくれる。
料金 — 無料枠150クレジットから、チームで$48/人まで
公式の価格表を見ると、大枠は以下のようになっている。
- Free: 150クレジット/月
- Starter: 月額の有料プラン。追加クレジットは $10 / 1,000クレジット
- Professional: 4,000クレジット/月。追加クレジットは $10 / 1,200クレジット
- Team: $48/人/月、4,500クレジット/人
クレジットはモデルごとに消費量が違う。FLUXの静止画1枚は数クレジット、Veo 3 の動画は数十〜百超のクレジットを食う。最上位の Team プランでも、Veo を本気で回せば4,500クレジットは数日で溶けるだろう。「無料で試せて、本番制作は都度追加課金」という読み方が現実的だ。
ここで注意すべきは、**Figma 本体とは当面「別プロダクト・別課金」**であることだ。FigmaのProfessional や Organization を契約していても、Figma Weave は別途サインアップして別途請求される。公式は「時間をかけてFigmaプラットフォームに統合していく」と言っているが、少なくとも今日時点で買収前のWeavyとほぼ同じ独立製品として動いている。
ComfyUIと何が違うのか — そして、何が劣るのか
ここは正直に書いておきたい。Figma WeaveはComfyUIの上位互換ではない。
ComfyUIは、ノードをいくつでも増やせるし、モデルの内部を分解して独自のパイプラインを組める。LoRAを差し込み、VAE を入れ替え、サンプラーを自作する、といった「モデルの内臓を開けて改造する」作業に耐える。パワーユーザーにとって、この自由度は譲れない。Figma WeaveのノードはもっとAPIレイヤーに近く、「Veo 3 のノードに参照画像を入れると動画が出てくる」という抽象度で止まっている。
その代わり、Figma Weaveは「共同作業と運用」の部分で遥かに先を行っている。ワークフローは URL でチームに共有でき、非エンジニアのディレクターやクライアントに対しては「App Mode」というシンプル化されたUIに切り替えて渡せる。ノードグラフのまま見せたら引かれてしまうクライアントに対して、入力フォームと出力ギャラリーだけの顔を見せられるのは、代理店やプロダクションの現場で効く機能だ。
このあたりは、Figmaが Config 2026のセッション でも強調しているところだ。「AIを個人の遊びではなくチームのワークフローに埋め込む」というFigma一貫の哲学が、Weaveにも流れている。
この形式が普及したら何が起きるか
機能リストよりも、個人的にはこの先の話の方が重要だと思っている。
まず、映像プロダクションの試作フェーズがFigmaに吸い込まれる可能性がある。これまで「絵コンテ → Premiere → After Effects → レンダー待ち」だったループが、「Weaveで生成 → Weaveで繋ぐ → Weaveで共有」で終わる。シリアスな本編はまだAfter Effectsが必要でも、プリビズ(先行ビジュアル確認)はほぼ全てWeaveに持っていけるはずだ。クライアントへの初稿を「動く状態」で提出するハードルが一段下がる。
次に、ブランドガイドラインのプログラム化が実現するかもしれない。ノードグラフとして「このブランドの画像はこう作る」を保存しておけば、別の担当者が同じワークフローを呼び出して別シーンを作れる。色味、タイポ、構図のブランド感を、プロンプトではなくワークフローとして継承できる。ブランドマニュアルが静的なPDFから動的なノードグラフに進化する、という未来は割と近いと感じる。
三つ目は、既存のFigma AI機能との合流だ。FigmaはAI Design Development MCPでデザインとコードの橋渡しを始め、Design / FigJam / Slides / Buzz に画像生成機能を入れ、そして今回Weaveを持ち込んだ。ここに AI Agent がキャンバス上で直接デザインを書き換える動きが加わってくると、「Figmaを開いている時間 = 何かしらAIが裏で走っている時間」になる。デザインツールとしてのFigmaが、作業用SaaSの枠を超えてクリエイティブワークフローのハブに化ける日は案外すぐかもしれない。
正直な評価
悪い点もある。
まず、Figma本体との別課金はどう考えても過渡期の不自然さだ。Figmaを契約しているユーザーが、同じ会社のAIプロダクトを使うために別のサインアップと別の請求を受け入れる、というのは心理的抵抗が大きい。早めに統合されることを期待したい。
次に、日本語プロンプトへの最適化がまだ薄い。ベースモデルの多くが英語中心の学習データで動いているため、日本特有のビジュアル(「和モダン」「渋谷系」といった感覚的な形容)は期待通りに出にくい。英語でプロンプトを書き直すか、生成後の編集で詰めるかが必要になる。
三つ目は、クレジット経済の不透明さ。どのモデルが何クレジットかは画面に出るものの、「1回の生成の合計コストが事前に見えにくい」という声がWeavy時代から根強くある。本番制作で使うなら、事前にチームで「この1プロジェクトはクレジット何個まで」と予算線を引いておく運用が必須だ。
それでも、ComfyUIを立ち上げる気力はないけれど生成AIを制作に組み込みたいというデザイナー・映像制作者にとって、Figma Weaveは2026年現在もっとも現実的な選択肢の一つだ。Figma自身がこの方向に張ったこと自体が、生成AIが「遊びのツール」から「制作パイプラインの構成要素」へと昇格したことを示しているようにも見える。
まずはFreeの150クレジットで、手持ちのプロジェクトのキービジュアル1枚分だけでも回してみるのがいい。ComfyUIの沼に落ちずに、あの感覚を味わえるかどうか — それがFigma Weaveの試金石だ。
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