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Dify vs n8n 徹底比較 2026 — 「AIアプリを作りたい」と「業務を自動化したい」で答えが変わる

「Difyとn8n、どっちを使えばいいのか」という質問をよく見かける。結論から言うと、AIチャットボットやRAGアプリを作りたいならDify、業務プロセスの自動化がしたいならn8n。重なる部分はあるが、設計思想がまったく違うので「代替」にはならない。

筆者は両ツールを3ヶ月並行して使い、社内の問い合わせ対応とリード管理の自動化に組み込んだ。最初は「Difyだけで全部やれるのでは」と思っていたが、SlackやGmail等の外部連携が必要になった瞬間にn8nの存在意義を痛感した。逆に、n8nだけでRAGを組もうとして挫折もした。両方触ったからこそ言えるのは、この2つは競合ではなく補完関係にあるということだ。

5軸比較表

※価格は2026年5月22日時点の公式サイト情報。

比較軸 Dify n8n おすすめな人
設計思想 AIアプリ構築プラットフォーム ワークフロー自動化ツール Dify = 対話型AI作りたい人 / n8n = 業務効率化したい人
料金(クラウド) 無料〜$59/月(Professional) 無料〜€24/月(Starter) 予算重視ならn8n(Starterが安い)
セルフホスト Docker Compose(8サービス、4GB RAM〜) Dockerコンテナ1つ(2GB RAM〜) 手軽さならn8n / AI全振りならDify
AI機能 RAG・プロンプト管理・モデル比較・エージェント構築 AIノード(LLMチェーン・エージェント)は外部API経由 AI中心ならDify圧勝
外部連携 API公開中心(連携先は限定的) 400+プリセットノード(Gmail, Slack, Notion等) SaaS連携ならn8n圧勝

どちらもオープンソースで、セルフホストすれば無料で使える。まずはDifyn8nの無料プランで触ってみるのが一番早い。

Difyの強み — AIが「考える」部分を丸ごと任せる

Difyの核心は、LLMを使ったアプリケーションの構築に特化していること。プロンプトのバージョン管理、複数モデルの比較、RAGパイプラインの構築、会話履歴の管理まで、AIアプリに必要な要素がすべて揃っている。

特に強いのがRAG(検索拡張生成)だ。ドキュメントのアップロード→チャンキング→ベクトル化→検索まで、コードを一行も書かずにナレッジベースが構築できる。n8nでも理論上は可能だが、ベクトルDB連携やチャンキング設定を全部ノードで組む必要があり、工数が段違いだった。

v1.6.0で双方向MCP対応が入ったのも大きい。DifyのワークフローをMCPサーバーとして公開でき、Claude DesktopやCursorから直接呼び出せる。Dify v1.13のHuman-in-the-Loop機能と組み合わせれば、重要な判断だけ人間に確認を求めるAIエージェントが作れる。

Difyの弱点

外部サービスとの連携が弱い。Slackに通知を飛ばしたい、Google Sheetsにデータを書き込みたい、といった「AIの外側」の処理は自前でAPI連携を書くか、n8nに任せるかになる。筆者の感覚では、Difyは「AIが考える」パートの構築に全力を注いでいて、周辺の自動化は守備範囲外だ。

セルフホストの構成がやや重い。Docker Composeで8つのサービス(API、Worker、Redis、PostgreSQL、Weaviate等)を立ち上げる必要があり、最低4GB RAMが推奨。個人で軽く試すにはちょっとハードルがある。

n8nの強み — あらゆるSaaSを線でつなぐ

n8nの本領は、業務プロセス全体をノーコードで自動化すること。Gmail、Slack、Notion、HubSpot、Google Sheets、Webhook——400以上のプリセットノードがあり、ほぼすべてのSaaSを「つなげる」。

たとえば「新しいリードがHubSpotに登録されたら、LLMで企業分析→Slackに通知→Google Sheetsに記録」というワークフローが30分で組める。この手の処理はDifyの守備範囲外だ。

n8nがSAPとの提携で評価額が8,000億円に到達したのも、エンタープライズの業務自動化需要の大きさを物語っている。

MCP対応も進んでいる。MCP Server Triggerノードでn8nのワークフローをMCPサーバーとして公開でき、MCP Client Toolノードで外部MCPサーバーのツールを呼び出せる。Claude CodeやCursorからn8nのワークフローを直接実行できるのは実用的だ。

n8nの弱点

AIネイティブではない。LLMノードはあるが、あくまで「ワークフローの中の1ステップ」としてAIを使う設計だ。RAGの構築、プロンプトの反復改善、モデル間の比較といったAI開発の核心的な作業には向いていない。

Starterプランの2,500実行/月は、本格運用には心もとない。1日あたり約83回。バッチ処理や高頻度ワークフローを回すとすぐに上限に達する。Proプラン(€60/月)に上げるか、セルフホストにするかの判断が早い段階で来る。

使い分けの実践ガイド

多くの比較記事が「Difyか、n8nか」の二択で語るが、筆者の結論は両方使うのが正解だ。

パターン1: Dify単体で十分なケース

社内FAQ対応のチャットボットを作りたい。ドキュメントを読み込ませて質問に答えるRAGアプリが欲しい。外部サービス連携は不要か、APIを自分で書ける。こういう場面ではDify一本で完結する。

パターン2: n8n単体で十分なケース

メールの自動仕分け、スプレッドシートへの定期データ集計、Slackボットの通知ワークフロー。AIの「考える」部分が不要か、単純なLLM呼び出しで済む自動化ならn8nだけで十分。

パターン3: 両方を連携させるケース(おすすめ)

ここが本記事で一番伝えたいポイント。n8nのHTTP RequestノードでDifyのAPIを呼び出し、AIの処理結果をn8nのワークフローに組み込む構成が実務では最も強い。

たとえば「問い合わせメールをn8nで受信→Dify APIでRAG分析→回答案を生成→Slackで担当者に確認→承認されたらメール返信」というフローが、コードなしで実現する。DifyがAIの頭脳、n8nが手足。この役割分担が2つのツールの最適な使い方だ。

CrewAI vs LangGraphの比較記事でも触れたが、AIエージェントの構築は「考える部分」と「実行する部分」を分離するのがベストプラクティスになりつつある。Dify + n8nの構成はまさにその思想を体現している。

料金の現実的な比較

個人や小規模チームが最も気にする料金について、現実的なシナリオで比較する。

月に500件の問い合わせにAIで自動対応したい場合:

  • Dify Cloud Professional: $59/月(5,000メッセージクレジット。十分余裕あり)
  • n8n Cloud Starter: €24/月(2,500実行。500件 × 5ステップ = 2,500でギリギリ)

両方セルフホストする場合:

  • Dify: 無料だが4GB RAM以上のサーバーが必要(VPS月額$20〜40程度)
  • n8n: 無料で2GB RAMのサーバーで動く(VPS月額$10〜20程度)

セルフホストなら合計$30〜60/月で両方のフル機能が使える。クラウドで両方契約するより安く、機能制限もない。技術力があるならセルフホストが最もコスパが良い。

まとめ — 「AI頭脳」と「自動化ハブ」は別物

Difyとn8nを「どちらが上か」で比べるのは、ExcelとPhotoshopを比べるようなものだ。解決する問題が違う。

AIチャットボット・RAG・エージェントを作りたいならDifyから始める。業務プロセスの自動化がしたいならn8nから始める。そしてどちらか一方では足りなくなったとき、もう一方を足す。筆者が3ヶ月かけて辿り着いたのは、この「片方ずつ始めて、必要に応じて連携する」というシンプルな答えだった。

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