n8n・Make・Zapier、結局どれを選ぶべきか — AI時代のワークフロー自動化ツール比較
「Slackに通知が来たら、スプレッドシートに行を追加して、Notionのデータベースも更新する」——こんな自動化を組むとき、最初に突き当たるのがツール選びだ。
ワークフロー自動化の定番はZapier、Make(旧Integromat)、そしてn8nの3つ。2026年に入って三者ともAIエージェント機能を載せてきたことで、選択基準が変わった。従来の「連携数の多さ」だけでは決められなくなっている。
この記事では、料金体系の根本的な違い、AI連携の現在地、そして「あなたのチームならどれか」を整理する。
料金の仕組みがそもそも違う
3ツールの最大の違いは、課金の「単位」だ。
| ツール | 課金単位 | カウントの仕方 |
|---|---|---|
| Zapier | タスク | ワークフロー内の各アクションステップが1タスク |
| Make | オペレーション | 各モジュール呼び出しが1オペレーション(条件分岐も含む) |
| n8n | エグゼキューション | ワークフロー1回の実行が1エグゼキューション(ステップ数不問) |
この違いは小規模なら誤差だが、スケールすると劇的に効いてくる。たとえば5ステップのワークフローを月1万回動かす場合:
- Zapier: 5万タスク消費 → Teamプラン以上が必要(年間約10万円〜)
- Make: 5万オペレーション消費 → Proプラン(月約$19、年間約3.5万円)
- n8n: 1万エグゼキューション → Cloud Proプラン(月€60、年間約11万円)。セルフホストなら無制限で無料
n8nのセルフホスト版は、エグゼキューション数に制限がない。サーバー代だけで済むため、月1万件を超える自動化では圧倒的にコスト有利だ。年間のコスト差は、Zapierと比較して数十万円になることもある。
各ツールの料金プラン早見表
Zapier
| プラン | 月額(年払い) | タスク/月 |
|---|---|---|
| Free | $0 | 100タスク |
| Professional | $19.99 | 750タスク |
| Team | $69.99 | 2,000タスク |
| Enterprise | 要問合せ | カスタム |
Make
| プラン | 月額(年払い) | オペレーション/月 |
|---|---|---|
| Free | $0 | 1,000 |
| Core | $10.59 | 10,000 |
| Pro | $18.82 | 10,000(優先実行あり) |
| Teams | $34.12 | 10,000(チーム管理) |
n8n
| プラン | 月額 | エグゼキューション/月 |
|---|---|---|
| Community(セルフホスト) | 無料 | 無制限 |
| Starter(Cloud) | €24 | 2,500 |
| Pro(Cloud) | €60 | 10,000 |
| Business(Cloud) | €800 | 40,000 |
AI連携 — 3ツールとも本気を出してきた
2026年の比較で無視できないのがAI連携だ。
n8nのAI対応が最も深い。2026年1月のn8n 2.0で、LangChainのネイティブ統合と70以上のAIノードが追加された。OpenAI、Anthropic、Google Geminiはもちろん、ローカルLLMにも接続できる。AIエージェントがツールを呼び出すワークフローを、ノーコードのビジュアルエディタで組める。しかもAIワークフローに追加料金はかからない。通常のエグゼキューションとしてカウントされるだけだ。
**Zapier**もAI Builder機能を提供している。自然言語でワークフローを記述すると、Zapierが自動でZapを構成してくれる。7,000以上のアプリ連携と組み合わせられるのが強みだ。ただし、エージェント的な動作(ツール呼び出しを伴う自律的なタスク実行)はn8nほど柔軟ではない。
MakeはAIモジュールとしてOpenAI、Anthropic等を提供しているが、エージェント構築の深さではn8nに及ばない。Makeの強みはあくまでビジュアルフローの設計しやすさとコストパフォーマンスにある。
AIエージェントを業務に組み込みたいなら、現時点ではn8nが一歩リードしている。ただし、「既存のSaaSを繋ぐだけ」のシンプルな自動化にAIエージェントは不要だ。ユースケースに合わせて判断すべきポイントになる。
連携アプリ数
- Zapier: 7,000以上
- Make: 2,000以上(9,000以上のテンプレート)
- n8n: 400以上(コミュニティノード含めると増加中)
Zapierの連携数は圧倒的だ。ニッチなSaaSとの連携が必要な場合、Zapierにしか対応していないケースは珍しくない。ただし、主要なツール(Slack、Google Workspace、Notion、Salesforce等)は三者とも対応しているので、使うアプリが決まっている場合は連携数の差は関係なくなる。
セルフホスティングという選択肢
n8nだけが持つ決定的な差別化がセルフホスティングだ。
自社サーバーやAWS/GCPにn8nをデプロイすれば、データが外部に出ない。金融機関や医療機関のように「顧客データをSaaSに渡せない」企業にとって、これは要件そのものになる。日本企業で社内承認を通す際にも「データは自社管理」と言えるのは大きい。
一方、セルフホストにはサーバー管理、アップデート適用、障害対応のコストがかかる。DevOpsの体制がないチームが安易にセルフホストすると、運用が属人化するリスクがある。その場合はn8n Cloudか、素直にMakeやZapierのマネージドサービスを使うほうが合理的だ。
どう選ぶか — 3つの判断軸
1. 「非エンジニアが自分で組む」→ Zapier
セットアップの簡単さとアプリ連携数はZapierが最強。営業やマーケティングチームが自分たちで自動化を組む文化を作りたいなら、学習コストの低さがそのまま導入速度に直結する。コストが高いのは事実だが、「エンジニアの工数を使わなくて済む」というROIで正当化できる場面は多い。
2. 「複雑なロジックを低コストで」→ Make
条件分岐が多段階になる、エラーハンドリングを細かく制御したい、でもコードは書きたくない——そんなチームにはMakeが合う。ビジュアルエディタの表現力はZapierより高く、料金は60〜70%安い。日本語UIにも対応している。
3. 「大量実行 + データ管理 + AIエージェント」→ n8n
月1万件以上の自動化、セルフホストの要件、LLMを組み込んだエージェント的なワークフロー——これらのどれかに該当するなら、n8nが第一候補になる。OSSコミュニティが活発で、カスタムノードの開発もできる。ただし、多少のコマンドライン操作やDockerの知識は前提になる。
組み合わせるという発想
「1つに決めなければいけない」わけではない。
たとえば、社内の定型業務(Slackリマインダー、スプレッドシート更新)はZapierで非エンジニアが組み、データ処理やAIエージェントのワークフローはn8nでエンジニアが構築する——という使い分けは実際に機能する。FlowTune Mediaでも、記事のパブリッシュフローにn8nを使いつつ、通知系はZapierに任せている。
また、DifyのようなAIエージェントビルダーとn8nを組み合わせるパターンも増えている。Difyでエージェントのロジックを構築し、n8nで外部サービスとの連携を担当するという役割分担だ。
自動化ツールの選択は「これがベスト」ではなく「この場面ではこれ」という粒度で考えるほうが、結果的にうまくいく。まずは無料プランで3つとも試し、自分のチームの自動化パターンに合うものを見極めるのが最短ルートだ。
関連記事
Dify vs n8n 徹底比較 2026 — 「AIアプリを作りたい」と「業務を自動化したい」で答えが変わる
Difyとn8nの違いを5軸で徹底比較。AIチャットボット構築ならDify、業務ワークフロー自動化ならn8n。料金・機能・MCP対応まで解説。
Dify 1.14 — AIワークフローを「作って終わり」から「チームで回す」に変える
Dify v1.14.0/1.14.1のアップデート内容を解説。ワークフローのチーム資産化、Docker環境のSECRET_KEY自動生成、UIプラットフォーム移行の進捗をまとめる。
OSSの自動化ツールがSAPに認められた — n8nの評価額が8,000億円に倍増した背景
SAPがn8nに戦略投資し評価額$5.2B(約8,000億円)に倍増。Joule Studioへのネイティブ統合の意味とZapier・Makeとの差を解説する。