コードの89%をAIが書く会社が、評価額3.8兆円になった — Devin開発元Cognitionの1年間
89%。
Cognitionの社内コードのうち、Devinが書いた割合だ。2025年12月時点では13%だったこの数字が、わずか5ヶ月で89%まで跳ね上がった。そして5月27日、この会社は10億ドル(約1,500億円)の資金調達を完了し、評価額は260億ドル(約3.8兆円)に達した。
AIコーディングエージェントの開発元がここまで急成長している事実は、「AIがコードを書く」がもう実験段階ではないことを意味している。
8ヶ月で評価額2.5倍、売上は13倍
今回のシリーズDラウンドはLux Capital、General Catalyst、8VCが共同リードし、Founders Fund、Ribbit Capital、Atreides Managementも参加した。
数字のインパクトは大きい。2025年9月のラウンドでは評価額102億ドルだった。それが8ヶ月で260億ドル — 2.5倍以上になった。しかし本当に注目すべきは評価額ではなく、売上の方だ。
ARR(年間経常収益)は2025年5月の3,700万ドル(約54億円)から、2026年5月には4億9,200万ドル(約714億円)へ。12ヶ月で約13倍という成長率は、SaaS企業として異例中の異例と言っていい。
顧客は「実験段階」を超えた
Goldman Sachs、Mercedes-Benz、米国政府。Cognitionが公表した顧客リストには、AIツールを「試しに使っている」企業は含まれていない。いずれも本番環境での導入を意味する名前ばかりだ。
正直、1年前のDevinは「デモはすごいが実務で使えるのか」という評価が大半だった。それがこの顧客リストと売上数字で、疑念はかなり払拭された形になる。
「89%がAIコード」の現実
ここがこの記事の核心だ。
Cognition自身が、自社の開発において89%のコードをDevinに書かせている。これは外部向けのマーケティング数値ではなく、社内の実績だ。2025年12月の13%から5ヶ月で89%に到達したということは、Devinの能力向上とチームの活用ノウハウの蓄積が同時に進んだことを示している。
ただし、冷静に見る必要もある。「コードの89%」が何を指すのかによって、この数字の意味は大きく変わる。ボイラープレートや定型的なCRUD処理が大半なら驚くほどの話ではない。アーキテクチャ設計やセキュリティ上のクリティカルな判断を含むコードまでAIが書いているなら、それはまったく別の話だ。
Cognitionのブログによれば、Devinは単純なコード生成だけでなく、マルチステップの開発タスクを自律的にこなしているとされる。もしこれが事実なら、「開発チームにDevinという常時稼働のエンジニアが加わる」という世界はもう来ている。
AIコーディング市場の過熱とCognitionの立ち位置
AIコーディング市場はいま過熱している。Cursorは500億ドル規模の資金調達が報じられ、Windsurf(Codeium)はCognitionに買収された。Claude CodeはAnthropicの主力プロダクトの一つになり、GoogleもAntigravity CLIを投入した。
この市場でCognitionが特異なのは、「IDE」ではなく「自律エージェント」というポジションを取っていることだ。CursorやWindsurfが人間の隣で一緒にコードを書くツールだとすれば、Devinはタスクを渡したら自分で完了させるエージェントに近い。
260億ドルという評価額は、この「自律型」へのベットにほかならない。
懸念と期待
リスクも見えている。Devinの信頼性に対する懸念は、この資金調達のニュースと同時に報じられている。「89%のコードをAIが書く」と言っても、そのコードの品質管理やレビューにどれだけ人間のリソースが必要なのかは外部からは見えない。
また、CursorやClaude Codeのようなツールが急速に進化しているなか、「自律エージェント」という差別化がどこまで持続するかも未知数だ。各社がエージェント機能を強化すれば、Devinの独自性は薄まる可能性がある。
それでも、12ヶ月で売上13倍という数字は、市場が「AIにコードを書かせる」ことに本気でお金を払い始めたことの証拠だ。Devinがどれだけのコードを書こうと、それを導入した企業が収益を上げているからこそ、この成長率が実現している。
コードの89%がAI製。この数字が業界のスタンダードになる日は、想像よりずっと近いのかもしれない。
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