Windsurf、名前ごと消えた — 後継「Devin Desktop」で何が変わるのか
6月2日、Windsurf公式から1通のアナウンスが届いた。「Windsurf is now Devin Desktop」。
名前がまるごと変わった。Cognition(Devinの開発元)がWindsurfを買収し、2026年4月にDevinクラウドエージェントをIDE内に統合したのは記憶に新しい。だが今回は「統合」ではなく「吸収」だ。Windsurfというブランドそのものが消え、Devin Desktopとして生まれ変わった。
既存のWindsurfユーザーにとって気になるのは「何が壊れるのか」だろう。結論から言えば、壊れるものはほとんどない。OTA(Over-The-Air)更新で自動的にDevin Desktopに移行し、プラン・価格・設定・拡張機能はすべて引き継がれる。VSCode拡張との互換性も維持されている。
ただし、中身はかなり変わった。
「IDEにAIを載せた」のではなく「エージェント管理画面にIDEを載せた」
Devin Desktopの最大の変化は設計思想だ。Windsurf時代は「IDEの中にAIエージェントがいる」構造だった。Devin Desktopは逆で、Agent Command Centerがデフォルトの画面になる。ローカルエージェントもクラウドエージェントも、カンバン形式(進行中 / ブロック中 / レビュー待ち / 完了)で一覧管理される。
正直、初めて見たときは「IDEの上にJiraが載ったのか?」と思った。コードを書く場所にタスク管理画面が居座っている違和感がある。ただ、複数のエージェントを並行して走らせる使い方が前提なら、この設計は筋が通っている。Cursor 3が「Agent Tabs」で複数エージェントを並べたのに対し、Devin Desktopはローカルとクラウドを1画面で束ねることを選んだ。
SWE-1.6とDevin Local — 速度を選んだ
コーディングモデルも世代交代した。新しいSWE-1.6は、Cognition自社開発のモデルで、有料プランなら追加課金なしで使える。前モデルSWE-1.5が約950トークン/秒だったのに対し、SWE-1.6はさらに高速化されている。Tab補完やインライン編集が「待つ」感覚のない速度になったのは体感として大きい。
ローカルエージェントも一新された。旧CascadeはDevin Localに名前を変え、Rustで完全に書き直された。公称でトークン効率が30%改善。サブエージェント機能も追加されている。「エディタの中にCascadeがいる」時代から、「Devin Localが足元で動き、Devin Cloudが遠くで動く」構成に切り替わった格好だ。
ACP — エージェント版LSP
個人的に最も注目しているのはAgent Client Protocol(ACP)だ。LSP(Language Server Protocol)がエディタと言語サーバーの接続を標準化したように、ACPはエディタとAIエージェントの接続を標準化するオープンプロトコルとして設計されている。
ローンチ時点でOpenAIのCodex、AnthropicのClaude Agent、OpenCodeがACP経由で動作する。つまりDevin Desktopの中で、Devin・Codex・Claude Agentを並行して走らせ、同じカンバンビューで管理できる。
もしACPが広く普及すれば、エージェントとエディタの「ベンダーロック」がなくなる。CursorでもZedでも、ACP対応さえすれば任意のエージェントが動く世界だ。ただし現時点では対応エディタはDevin Desktopのみ。LSPが実質標準になるまで数年かかったことを考えると、ACPの行方はまだわからない。
Spacesとマルチリポジトリ
もうひとつの新機能がSpaces。セッション・PR・ファイル・コンテキストをグループ化し、エージェント間で共有する仕組みだ。フロントエンドとバックエンドを別エージェントに任せつつ、同じSpaceで文脈を共有するような使い方が想定されている。
マルチリポジトリでの作業が日常の開発チームにとっては、ようやく「エージェントにコンテキストを説明し直す」手間が減る可能性がある。
正直な評価
良い点:
Windsurf時代の「Cascade + Devin Cloud」という二層構造がDevin Local + Devin Cloudに整理され、一貫性が出た。ACP対応でサードパーティエージェントも動くため、モデルの選択肢がCursorより広い。価格据え置き(月額20ドル〜)も悪くない。
微妙な点:
「Windsurf」というブランドへの愛着がある開発者は少なくない。名前が消えたこと自体にネガティブな反応もXで散見される。また、Agent Command Centerを中心にした設計は、「コードを書く時間の方がエージェント管理より長い」開発者にはオーバーエンジニアリングに感じる。全員がマルチエージェント運用をしたいわけではない。
ACPについても、Cognition主導のプロトコルが業界標準になるかは未知数だ。GoogleはGemini CLIを6月18日に終了してAntigravity 2.0に集約するなど、各社とも自社エコシステムに囲い込む動きが強い。
Cursorとの分岐が決定的に
今回のリブランドで、CursorとDevin Desktopの思想の違いが鮮明になった。Cursorは「開発者がすべての判断を持ち、AIが実行を加速する」設計。Devin Desktopは「エージェントにタスクを委任し、開発者はレビューと方針決定に集中する」設計。
どちらが正解かはプロジェクトによる。小〜中規模のコードベースを自分の手で書きたい人はCursor。大規模リファクタリングや複数リポジトリの保守を複数エージェントに振りたい人はDevin Desktop。使い分けの時代に入ったと言える。
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