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Devinの評価額が半年で2.5倍に — $25Bの数字が映す「AIがコードを書く」市場の現在地

$10.2Bから$25B。半年で2.5倍。

4月23日、Bloombergが報じたCognition AIの新たな資金調達交渉の数字だ。AIコーディングエージェント「Devin」を開発する同社が、数億ドル規模の調達を$25B(約3.5兆円)の評価額で協議しているという。

この数字だけ見れば「また調達か」で終わる話だが、背景を整理すると見えてくるものがある。

評価額の推移が語ること

Cognitionの評価額の推移はこうだ。

2024年3月にDevinを発表した時点では$2B。2025年3月に$4B。同年7月にWindsurfを約$250Mで買収し、9月にFounders Fund主導の$400M調達で$10.2Bに。そこから半年で$25B。

上昇カーブが急すぎないか? 正直な感想はそれだ。

だが、比較対象を置くと景色が変わる。Cursorは4月時点で$50Bでの$2B調達を協議中。2026年末の年間売上見通しは$6B超。$25BのDevinはCursorの半分で、むしろ「控えめ」とさえ言える。

AIコーディング市場全体がこの規模感に入ったということだ。

売上は追いついているのか

評価額が正当かどうかを見る簡単な指標は、ARR(年間経常収益)との倍率だ。

Devin単体のARRは2024年9月時点で$1M、2025年6月に$73Mまで成長した。そこにWindsurfの$82M ARRが加わった。買収後は複合ARRが30%以上増加したとCognitionは公表している。仮に現在のARR合計が$200〜250Mだとすると、$25B評価額はARRの100〜125倍にあたる。

一方のCursorは2026年2月に$2Bのannualized revenue到達を報告済みで、$50B評価はARRの25倍。数字の上では、Cursorの方がはるかに「割安」に見える。

ただし、Cognitionの賭けはDevinだけではない。Windsurf買収で得たIDE事業を含めた「AIコーディングのフルスタック」を評価させようとしている。Devinの自律エージェント路線とWindsurfのIDE路線を1社で持つことの意味は、片方しかない企業とは構造が違う。

Windsurf買収が変えたもの

2025年7月のWindsurf買収は、この市場の勢力図を一変させた。

Codeiumとして始まったWindsurfは、IDE内にAIを統合する路線の急先鋒だった。Cognitionはそれを丸ごと取り込み、「人間がIDEで書く + AIエージェントが自律で書く」の両方をカバーする企業になった。

買収後のWindsurfはLogRocketのAI Dev Tool Power RankingsでCursorやGitHub Copilotを抑えて1位を獲得している。Devinのブランドだけでなく、Windsurfの収益基盤が評価額を支えている側面はある。

この数字をどう見るか

冷静に見れば、ARR 100倍超の評価額は「期待値込み」だ。SaaSの平均的な評価倍率(10〜30倍)からは大きく外れている。

ただし、AIコーディング市場そのものが2024年にはほぼ存在しなかった。Cursorが$6B ARR見通しまで来た事実は、市場全体の拡大速度が従来のSaaSとは別次元であることを示している。Cognitionが$25Bで調達できるなら、それは「Devinが優秀だから」というよりも「コードを書くAIの市場がそこまで膨らんだから」と読むべきだろう。

気になるのは、この評価額競争がツールの進化速度に見合っているかどうかだ。Devinは先日のアップデートでcomputer useとE2Eテスト自動化を追加し、Managed Devinsで並列実行も可能になった。機能面では確かに進んでいる。だが「$25Bの会社の製品」として見ると、まだ安定性や精度にムラがあるのも事実だ。

AIコーディング市場は間違いなく本物だ。問題はその中で「勝者」が何社残るかで、全員が現在の評価額を正当化できるとは限らない。

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