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Zed Agentic Editing——CursorでもWindsurfでもない、Rust製エディタが見せる「第三の正解」

AI IDEの話になると、だいたいCursorかWindsurfの名前が出る。そこに「いや、Zedがあるだろ」と割り込んでくる人が増えてきた。正直に言えば、自分もここ数週間で完全にその一人になった。

ZedはRustでゼロから書かれたコードエディタで、もともとAtomの開発者たちが「速さ」を最優先に設計したプロジェクトだった。それがいつの間にか、AIエージェントがコードを書き、テストを走らせ、ファイルを横断して編集する——いわゆる「Agentic Editing」の本格的なプラットフォームに進化している。2025年8月にはSequoia Capital主導で$32MのSeries Bを調達。Dylan Field(Figma創業者)やTom Preston-Werner(GitHub共同創業者)がエンジェル投資家として参加しているあたり、業界からの期待値の高さが窺える。

120fpsでエージェントの仕事を「観る」体験

Zedのエージェント機能を初めて使ったとき、最も印象に残ったのはスピードだ。

Agent Panelでタスクを記述すると、エージェントがコードベースのコンテキストを自動的に読み取り、複数ファイルを同時に編集し始める。ここまでは他のAI IDEと変わらない。違うのは、その編集過程を120fpsのネイティブレンダリングでリアルタイムに追えることだ。エージェントがファイルを開き、コードを書き換え、次のファイルに移る。その一連の流れが、まるでペアプロでベテラン開発者の画面を横から覗いているような感覚で展開される。

CursorやWindsurfではエージェントの編集結果がdiffとして「事後報告」されることが多い。Zedは違う。編集の過程そのものがライブで見える。これはZedがもともとマルチプレイヤー対応のリアルタイム共同編集インフラを持っていたからこそ実現できた設計で、AIエージェントもそのインフラの上で「もう一人のコラボレーター」として動く。

変更は統合diffで表示され、行ごとに承認・拒否できる。全変更をまとめて受け入れることも、一部だけ採用して残りは手動で修正することもできる。

Agent Client Protocol(ACP)という賭け

Zedが他のAI IDEと決定的に異なるのは、Agent Client Protocol(ACP)という独自プロトコルの存在だ。

ACPは、外部のAIエージェントをZedのエディタ内にネイティブに統合するためのオープンプロトコルで、JetBrainsとの共同策定が進んでいる。これにより、Claude Code、Gemini CLI、Codex、OpenCodeといったCLIベースのエージェントを、Zedの中で直接実行できる。

つまり、Zedは「自社モデルで囲い込む」のではなく、「どのエージェントでも持ち込める場所」になろうとしている。CursorがClaude中心、WindsurfがCascade中心という方向性を取る中で、Zedは明確に逆張りをしている。

実際に使ってみると、この設計は実用的だ。あるタスクではClaude Codeを使い、別のタスクではGemini CLIに切り替える、ということがエディタを離れることなくできる。モデルの選択もAnthropicやOpenAI、Google、Ollamaなど8以上のプロバイダーに対応しており、ローカルモデルとクラウドAPIを混在させることもできる。

MCP統合とツール権限の粒度

エージェントが使えるツールも幅広い。ファイルの読み書き、コード検索、ターミナルコマンドの実行、Web検索、そして診断情報へのアクセスが標準装備されている。さらにMCP(Model Context Protocol)サーバーを接続すれば、エージェントの知識や操作範囲を拡張できる。

注目すべきはツール権限の設定粒度だ。「ファイルの読み取りは許可するが、書き込みは確認を求める」「ターミナルコマンドは特定のコマンドだけ自動実行を許可する」といった細かい制御ができる。エージェントに任せたいが、暴走はさせたくない——そのバランスを取れる設計になっている。

Edit Prediction——Zeta2による編集予測

エージェント機能とは別に、Zedには「Edit Prediction」という機能がある。これはZeta2というオープンソースの言語モデルが、次の「トークン」ではなく次の「編集」を予測する仕組みだ。

通常のオートコンプリートは「次に来そうな単語」を提案する。Zeta2は「次にやりそうな編集操作」を提案する。複数行にまたがる変更をTabキー一つで受け入れられる。ローカルで動作し、ベータ期間中は無料だ。

コード補完と聞くと地味に感じるかもしれないが、キーストローク単位で予測が走る体感速度は、他のエディタでは味わったことがないものだった。

料金体系

Zedの料金は3プランに分かれている。

Personal(無料) は月2,000回のEdit Prediction利用と、自前のAPIキーや外部エージェント(Claude Codeなど)の無制限利用が含まれる。自分のAPIキーを持っている開発者なら、無料プランのままでもエージェント機能をフルに使える。

Pro(月額$10) はEdit Predictionが無制限になり、月$5分のトークンクレジットが付く。超過分はAPIリスト価格+10%の従量課金で、デフォルトの追加上限は月$10。つまり最大でも月$20程度で収まる設計だ。2週間の無料トライアルがあり、トライアル中は$20分のクレジットが使える(ただしOpusモデルはトライアル対象外)。

Enterprise はSSO、利用分析、セキュリティ保証などを含む要問い合わせプラン。

CursorのPro($20/月)やWindsurfのPro($20/月)と比べると、Zedの$10/月は明らかに安い。ただし、Zedは従量課金の要素が強く、ヘビーユースすれば結局同等以上になる可能性はある。逆に言えば、ライトユースなら圧倒的にコスパが良い。

正直、微妙な点もある

ここまで褒めてきたが、手放しではない。

まず、プラグインエコシステムが弱い。VS CodeやCursorの拡張機能の数と比べると、Zedのエクステンションはまだ発展途上だ。特定の言語やフレームワーク向けの拡張が足りないと感じる場面は確実にある。

次に、エージェント関連のUIにまだ粗さが残る。Agent Panelの操作感やdiffビューの表示は改善の余地がある。Builder.ioのレビューでも「papercuts(小さな不満)がある」と指摘されており、日常使いで引っかかるポイントがゼロではない。

そして、コミュニティの規模。オープンソース化以降1,100人以上のコントリビューターと15万人以上のアクティブ開発者を集めているが、VS Codeの圧倒的なエコシステムには遠く及ばない。Stack OverflowやRedditで質問しても、Zed固有の問題に答えられる人はまだ限られている。

誰に向いているのか

Zedが最もフィットするのは、「エディタの速さ」と「AIエージェントの柔軟性」の両方を求める開発者だ。

特定のモデルやプロバイダーに縛られたくない。自分のAPIキーを使いたい。ローカルモデルも試したい。でもエディタ自体はネイティブの速度で動いてほしい。そういう要求を持つ人にとって、Zedは現時点で最も合理的な選択肢になりつつある。

一方で、「拡張機能が豊富で、何でもエディタ内で完結させたい」というタイプにはまだ早い。VS CodeやCursorのエコシステムの厚みには、Zedは追いついていない。

Rustで書いたことの意味

最後に触れておきたいのは、ZedがRustで書かれていることの本質的な意味だ。

速いのは当たり前として、重要なのはメモリ効率の良さだ。50ファイル規模の同時編集でもエディタがもたつかないのは、単にCPUが速いからではなく、メモリの使い方が根本的に違うからだ。大規模プロジェクトで複数のエージェントが並列に動くとき、この差はじわじわと効いてくる。

Electron(Chromium)ベースのCursorやWindsurfと比べて、ネイティブアプリとしてのリソース消費の少なさは、長時間の開発セッションで確実に体感できる違いだ。

AI IDEの競争は「どのモデルが使えるか」から「どれだけ快適にエージェントと協業できるか」にフェーズが移りつつある。Zedは後者で勝負しようとしている。そしてその賭けは、わりと筋が良いと思っている。

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