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Manus 2.0、AIエージェントに「自分のメールと財布」を持たせてきた — 新基盤Cascadeでコスト3割減

自律AIエージェントに「自分専用のメールアドレスと電話番号、そして財布」を持たせる。文字にすると一気にSFめくが、これが9月28日に発表された Manus 2.0 の目玉のひとつだ。

Manusは去年、「指示を一つ投げるとブラウザもコードも自分で操作して成果物まで作る」自律エージェントとして一気に名前を広めた。その本体が、アーキテクチャから作り直された。

何が変わったのか——中身は「Cascade」に載せ替え

2.0の心臓部は、新しく内製した Cascade というエージェントハーネス(エージェントを動かす土台)だ。

これまでのエージェントは、タスクの重さにかかわらず最初から一定のリソースを抱えて動くものが多かった。Cascadeの考え方は逆で、プロジェクトを少ないリソースで始め、必要になったら専門的な能力を継ぎ足していく。負荷に応じて計算資源を段階的に伸ばす、という発想だ。

効果として、Manusは内部テストで「トークン使用量23.2%減、タスク完了28.2%高速化、運用コスト32%削減」という数字を出している。

ここは正直、話半分で聞いておきたい。あくまで自社の内部テスト、しかも「あるひとつの構成で」という但し書き付きだ。とはいえ、自律エージェントの最大のネックは「長く動かすと課金が読めない」ことなので、コスト構造に手を入れてきたこと自体は方向として正しい。

エージェントがメール・電話番号・財布を持つ意味

今回いちばん想像力を刺激されたのが、新しい個人向けアプリ Cue だ。スマホとデスクトップで動くパーソナルエージェントで、ここに例の「各エージェントが固有のメール・電話番号・ウォレット・コンピュータを持つ」仕組みが載る。さらに複数のエージェントが一つのゴールをグループチャットで共有して動ける。

これが何を可能にするか、少し具体的に考えてみる。

エージェントが自分のメールを持てば、予約確認メールを自分で受け取って次の行動に移せる。電話番号があれば、SMS認証が絡む手続きを人間を介さず通せる。財布があれば、サブスクの支払いや少額の決済まで完結できる。つまり「調べて提案する」で止まっていたエージェントが、「調べて、手続きして、支払いまでやる」ところまで地続きになる。

グループチャットで複数エージェントが協調する部分も面白い。旅行の計画なら、フライト担当・宿担当・現地アクティビティ担当をそれぞれ立て、一つのチャットで擦り合わせながら予約まで持っていく——そんな「エージェントのチーム」を個人が持てるようになる、という絵が描ける。

もっとも、ここは期待と不安が半々だ。自分の財布を持ったエージェントが誤った判断で課金したら誰が責任を取るのか、電話番号やメールを乗っ取られたときの被害はどこまで広がるのか。自律性が上がるほど、失敗したときの後始末も自動化されてほしいが、そこはまだ見えていない。

Studio・Cloud Computer・Automations

2.0では周辺も一式アップデートされた。作業環境の Manus Studio、クラウド上の作業マシン Cloud Computer、定型処理を回す Automations が加わり、単発の指示だけでなく「定期的に走らせる」使い方に寄ってきている。

ここまで並ぶと、Manusが狙っているのは単なる便利ツールではなく、「個人や小チームが自分のエージェント群を常駐させて回す基盤」だと分かる。OpenAIがDevDayで出した常駐エージェント「Dots」とも問題意識は重なる。各社が同じ方向——AIを「呼び出すもの」から「常に動いているもの」へ——に走り始めている。

背景——独立したばかりで$40億を狙う

タイミングも意味深だ。Manusは9月1日に独立運営を再開したばかりで、いまおよそ40億ドル(約6,000億円)の評価額で5億ドル規模の資金調達を進めていると報じられている。2.0はその文脈での「本気を見せる一手」でもある。

使いどころと正直な評価

現時点でManus 2.0が刺さりそうなのは、「定型だが人間がやると面倒な手続き」を抱えている人だ。リサーチ、情報収集、予約・申し込みの下ごしらえ——このあたりを丸ごと預けたい人には試す価値がある。

逆に、ミスが許されない業務(支払いを伴う確定処理、対外的なやり取り)をいきなり任せるのは、まだ怖い。エージェントに財布を持たせられる時代になったからこそ、最初は「上限を決めて、確認を挟んで」使うのが現実的だろう。

方向性は素直に面白い。あとは「内部テストの数字」が実運用でどこまで再現されるか、そして自律の代償であるリスクをManusがどう可視化してくるか。詳細はManus公式で追える。触ってみて、また実機の手触りをまとめたい。

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