スマホの動画が10秒で「映画の一場面」になる — Google Photos Video Remixが日本上陸
子どもの運動会を撮ったスマホ動画がある。背景はごちゃごちゃした校庭、照明は曇天の自然光、手ブレもそこそこ。思い出としては大事だけど、見返すたびに「もうちょっとキレイだったらな」と思う。
Google Photosの新機能「Video Remix」は、そういう動画をAIでまるごと作り変える。7月8日に発表され、日本を含む14カ国で利用可能になった。
何が変わるのか
Video RemixはGoogle PhotosのCreateタブに追加された機能で、手持ちの動画を3つの方向で変換する。
シネマティック・リライティングは、暗い場所や逆光で撮った動画の照明をAIが補正する。単なる明るさ調整ではなく、被写体に当たる光の方向や色温度まで再構築する。夜の室内で撮った映像が「窓からの柔らかい自然光が入る部屋」に見えるようになる。
背景スワップは、動画の被写体を切り抜いて背景を差し替える。散らかったリビングで撮った犬の動画を、芝生の公園に移し替えるようなことができる。静止画の背景除去はすでに一般的だが、動画でフレームごとにリアルタイム合成するのはかなり計算量が大きい処理だ。
アーティスティックフィルターは、動画全体を水彩画や鉛筆スケッチ、油絵のタッチに変換する。Instagramのフィルターの進化系に近いが、フレーム間の整合性を保って動画として破綻しないように処理する点が違う。
裏側で動いているのはGemini Omni。5月のGoogle I/Oで発表されたマルチモーダルモデルで、「あらゆる入力からあらゆる出力を生成する」というコンセプトのモデルだ。重力や運動エネルギーといった物理法則への理解が改善されていて、変換後の映像が不自然に浮いたり歪んだりしにくいとGoogleは説明している。
日本で使える。ただし有料
Video Remixの対象国は14カ国で、日本は初期ローンチに含まれている。アメリカ、韓国、インド、ブラジル、メキシコなども対象だ。
ただし無料ではない。Google AI Plus、Pro、Ultraのいずれかのサブスクリプションが必要で、18歳以上限定。無料トライアルも、1回ごとの課金オプションもない。
Google AI Ultraは月額$49.99(約7,500円)。正直、Video Remixだけのために契約する金額ではない。ただし、Gemini 3.5 Pro、100GBのストレージ、Veo 4の動画生成なども含まれるので、Googleのエコシステムを日常的に使っている人なら元は取れるかもしれない。
10秒の壁
現時点で最大の制約は、処理できる動画が10秒までということ。長い動画は手動で10秒の区間を選ぶ必要がある。30秒の料理動画を丸ごとアート風にしたい、といった使い方はできない。
生成にも最大2分ほどかかる。リアルタイム変換ではないので、「撮ってすぐSNSに投稿」という使い方には少し待ち時間が生じる。
この制約は正直きつい。SNS用のショート動画なら10秒でギリギリ成立するが、旅行のハイライトや子どもの成長記録を変換しようとすると、何度も分割して処理する手間が発生する。今後のアップデートで尺の上限が伸びるかどうかは注目ポイントだ。
動画を「作る」と「加工する」の境界が曖昧になる
素直に面白いと思ったのは、これが生成AIではなく変換AIだということ。SoraやVeo 4のようにゼロから動画を作るのではなく、既存の動画を別のスタイルに変える。素材はあくまでユーザーの撮影した映像だ。
これによって「著作権のグレーゾーン」が減る。自分が撮った動画を自分でスタイル変換するだけなので、AIによる動画生成で常に議論になる権利関係の問題がほぼ発生しない。
もう一つの可能性として、結婚式や七五三の動画を映画風に仕上げ直すような「思い出のリマスター」が一般家庭で手軽にできるようになる。これまでは映像制作のプロに依頼するか、After Effectsを自力で学ぶしかなかった領域だ。10秒制限が外れた段階で、かなり実用的な選択肢になると思う。
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