FlowTune Media

Google Flowが「話せば動画ができる」ツールになった — I/O 2026で追加されたFlow Agentの実力

15億。Google Flowでこれまでに生成された画像と動画の数だ。

Google I/O 2026でFlowに加わったのは、この数字をさらに加速させる機能群だった。中でも目を引くのがFlow Agent。チャットで指示を出すだけで、企画の提案からプロンプト生成、動画のバリエーション作成までを一気に進めてくれるクリエイティブパートナーだ。

Google Flow

Flow Agentという新しい入口

従来のFlowは「プロンプトを書いて生成ボタンを押す」ツールだった。Flow Agentはその手前に入り込む。

「30代女性向けのスキンケア広告を3パターン作りたい」と伝えれば、Agentがコンセプトを提案し、各パターンのプロンプトを生成し、動画のスタイルや尺まで提案してくる。気に入らなければ「もっと明るいトーンで」と返すだけでいい。

これは地味に大きな変化だ。動画生成AIのハードルは「何を生成するか」のプロンプト設計にあった。特に広告やSNSコンテンツの量産では、バリエーションを考えるだけで時間が溶ける。Flow Agentは、そのクリエイティブ・ディレクション部分をAIに任せられるようにする。

ただし、あくまで「提案」であって「完成品」ではない。筆者の感覚では、Agentが出す最初の提案をそのまま使えるケースは半分程度。残りは会話を重ねて方向修正が必要になる。それでも、白紙からプロンプトを考えるよりは明らかに速い。

Gemini Omni Flash — 動画を「会話で編集」する

I/O 2026のもう一つの目玉が、Gemini Omni FlashのFlow統合だ。

Omni Flashは「物理法則や文化を理解した上で動画を生成・編集する」マルチモーダルモデル。Flowの中でこれが意味するのは、生成した動画を自然言語で編集できるようになったということだ。「背景を夕暮れに変えて」「人物をもう少し右に寄せて」「手ブレを直して」——こうした指示をチャットで出せば、Omni Flashが動画を再構成する。

素直にすごいと思ったのは、元の動画の動きやテンポを保ったまま背景だけ差し替えられる点。従来の動画生成AIでは、一部を変更すると全体が崩れることが多かった。Omni Flashは元素材の構造を理解しているので、ピンポイントの修正が効く。

1回の生成で最大10秒、音声付き。短いようだが、SNS向けのショート動画やプロダクトデモなら十分実用的な長さだ。

Flow Tools — ノーコードでカスタムツールを作る

あまり注目されていないが、個人的にはこれが一番面白い。

Flow Toolsは、自分だけのカスタムツールをノーコードで作れる機能。「商品画像を渡すとSNS向けの動画広告を自動生成する」といったワークフローを、プログラミングなしで組み立てられる。

企業のマーケティングチームにとっては、テンプレート的な動画制作をFlow Toolsで自動化し、クリエイティブな判断が必要な部分だけ人間が担当する——という運用が現実的になる。Canvaのテンプレートに近い発想だが、動画生成AIが組み込まれている分、表現の幅は段違いだ。

料金体系を整理する

Flowの料金は「AIクレジット」制で、生成や編集のたびにクレジットを消費する。

無料アカウントでも1日50クレジット(+初回100クレジット)が付与される。Veo 3.1 Fastでの短い動画なら1日2〜3本は回せる計算だ。

有料プランは2つ。Google AI Proが月額$19.99(約3,000円)で1,000クレジット。Google AI Ultraが月額$249.99(約38,000円)で25,000クレジット。Ultraは個人には高額だが、チームで動画を量産する用途なら1本あたりのコストはかなり低い。

気になるのは、前世代と比べてAPIの入力トークン単価が約3倍になっている点。Gemini 3.5 Flashの性能向上に伴う値上げだが、開発者がAPIから叩く場合はコストに注意が必要だ。

Runwayとの立ち位置の違い

Flowの最大の競合はRunwayだ。両者を比べると、方向性の違いが鮮明になる。

Runwayは映像制作のプロフェッショナル向け。Gen-4.5の動画品質は現時点で最高峰で、LionsgateやAMC Networksとの提携が象徴するように、映画・広告業界の実務ツールとして使われている。評価額$5.3B、ARR$40M増(2026年Q2)と勢いもある。

一方、Flowは「Googleアカウントがあれば誰でも使える」アクセシビリティが武器。149カ国以上で利用可能、無料枠あり、Google Workspace(Slides、Drive)との統合もある。映像のプロではないが動画コンテンツが必要な人——中小企業のマーケター、個人クリエイター、教育者——にとっては、Flowの方が圧倒的に入りやすい。

モバイルアプリも来る

I/O 2026ではAndroid向けのFlowアプリ(ベータ)も発表された。iOSは後日提供。動画生成自体はクラウド側で処理されるため、スマートフォンのスペックに依存しない。移動中にアイデアを形にしたり、撮影した写真をその場で動画に変換したりする使い方が想定される。

Flow Musicという音楽生成の姉妹アプリも同時に発表されており、こちらはiOSが先行してAndroidが後から追う形になる。

結局、誰が使うべきか

Flowは「動画制作の民主化」を一段進めた。無料で始められて、会話だけで動画が作れて、Googleの他のサービスとシームレスに繋がる。これまで動画制作に手を出せなかった層——特に小規模なマーケティングチームやフリーランス——には、試す価値が十分ある。

ただ、プロ向けの細かい制御(カメラワーク指定やフレーム単位の編集)はRunwayの方が強い。FlowはRunwayを置き換えるものではなく、動画制作の入口を広げるものだと捉えた方がいい。

Google Flow

関連記事