Googleの「調べもの」AIが別物になった — Deep Research Max、社内データもMCPで接続する時代へ
「AIに調べものを任せる」という行為が、この半年で急速に当たり前になった。PerplexityのDeep Research、OpenAIのo3ベースリサーチ、ClaudeのResearch機能。どれも使えるが、どれも同じ壁にぶつかる。調べられるのは、公開されたウェブの情報だけだ。
Google Cloud Next 2026で発表されたDeep Research Maxは、その壁を正面から突破しにきた。Gemini 3.1 Proを基盤とする自律研究エージェントで、ウェブ検索に加え、MCP(Model Context Protocol)経由で社内データベースや専門データプロバイダーにも接続できる。
つまり、「ウェブで見つかる情報」と「自社だけが持っている情報」を、1回のリサーチで横断的に調べてレポートにまとめてくれる。これは地味だが、実務的にはかなり大きい。
何が変わったのか
従来のDeep Researchは、Geminiアプリ上でウェブを巡回し、長いレポートを生成する機能だった。便利だが、データソースは公開ウェブに限定されていた。
Deep Research Maxでは3つの大きな変化がある。
MCP経由のプライベートデータ接続。 FactSet、S&P、PitchBookといった金融データプロバイダーと連携するMCPサーバーの設計をGoogleが共同で進めている。自社のデータベースやAPIにMCPサーバーを立てれば、Deep Research Maxがその中身を読んでリサーチに組み込む。ウェブ検索を完全にオフにして、社内データだけで調査を実行することも可能だ。
ネイティブなチャート・インフォグラフィック生成。 調査結果をHTMLやNano Banana形式で直接可視化する。数字の羅列ではなく、グラフ付きのレポートが出てくる。
研究計画の共同編集。 エージェントが提示するリサーチプランを、ユーザーが実行前にレビュー・修正できる。「この方向は不要」「代わりにこのデータソースも見て」といった介入が可能。PDFや音声、動画をマルチモーダルに入力することもできる。
性能と料金
DeepSearchQAベンチマークで93.3%を記録した。2025年12月時点の66.1%から約27ポイントの向上で、ここは素直にすごい。
1回のリサーチで最大160件のウェブ検索クエリを発行し、最長60分間にわたって自律的に調査を続ける。入力約90万トークン(50〜70%はキャッシュヒット)、出力約8万トークンが典型的な使用量だ。
料金はGemini 3.1 Proの従量課金ベース。入力100万トークンあたり$2.00(約300円)、出力100万トークンあたり$12.00(約1,800円)。標準的なリサーチタスクは1回あたり$1〜3(約150〜450円)が目安になる。Deep Research Maxはさらにプレミアムが乗る可能性があるが、確定した価格はまだ発表されていない。
Gemini APIのPaid tier経由でパブリックプレビューとして利用可能。Google Cloud経由のエンタープライズ提供も計画されている。
PerplexityやOpenAIと何が違うのか
正直なところ、「ウェブを調べてレポートを書く」だけなら、Perplexity Deep Researchのほうが速い。3分以内で結果が返ってくるPerplexityに対し、Deep Research Maxは数十分かかることもある。日常的な調べものにはPerplexityのほうが向いている。
OpenAIのo3ベースDeep Researchは推論の深さで勝るが、こちらも15〜25分かかり、料金もクエリ1回$1.50〜$8.00と高い。
Deep Research Maxの差別化ポイントは明確で、MCPによるプライベートデータ接続だ。PerplexityもOpenAIも、基本的には公開ウェブの情報しか扱えない。社内のConfluence、Salesforce、独自のデータベースを横断してリサーチするには、現状ではDeep Research Maxしか選択肢がない。
もうひとつ、Google Workspaceとの統合がある。GmailやGoogleドライブのファイルをリサーチソースとして指定できるため、Google Workspaceを業務基盤にしている組織にとっては、セットアップのハードルが圧倒的に低い。
実務で効くのはどんな場面か
このツールが真価を発揮するのは、「複数のデータソースを横断する調査」が日常的に発生する場面だ。
たとえば、投資判断の前のデューデリジェンス。市場の公開データとFactSetの財務データを突き合わせ、競合分析レポートを自動生成する。従来なら数日かかる調査が、設定次第では1時間以内に粗稿が手に入る。
あるいは社内ナレッジの棚卸し。Confluenceに散在する仕様書とGoogleドライブの議事録を横断的に検索し、「このプロジェクトに関連する意思決定の経緯」をまとめてもらう。人間が手動で探すと半日仕事だが、MCPサーバーさえ立てておけばDeep Research Maxが一括で処理する。
逆に向いていないのは、速さが命のカジュアルな検索だ。「今日のニュースを要約して」「この単語の意味は?」のような質問には、PerplexityやGeminiの通常モードで十分。Deep Research Maxは、じっくり腰を据えて調べたいときのためのツールだ。
気をつけるべきこと
MCP対応は強力だが、MCPサーバーの構築・運用は自前で行う必要がある。GoogleがFactSetやS&Pと連携しているとはいえ、自社固有のデータソースに接続するには、MCP仕様に沿ったサーバーを立てなければならない。ここのエンジニアリングコストは見積もっておくべきだ。
また、1回のリサーチで最大90万トークンを消費する点も注意が必要。キャッシュヒット率が高いとはいえ、チームで日常的に回すとAPI料金が積み上がる。「本当にDeep Research Maxが必要な案件」と「通常のGeminiで足りる案件」の線引きが、運用の鍵になる。
「調べもの」の定義が変わる
Deep Research Maxが示しているのは、AIリサーチの対象が「公開ウェブ」から「あらゆるデータソース」に広がりつつあるという流れだ。MCPという共通プロトコルが橋渡し役となり、CRMの顧客データも、社内Wikiも、金融データベースも、AIリサーチエージェントの調査対象になる。
PerplexityがMCP対応を発表するのも時間の問題だろうし、OpenAIも同じ方向に進むはずだ。ただ、Google Workspaceとの自然な統合を持つGoogleが、この領域ではしばらく有利に立てる。仕事でGoogle Workspaceを使っていて、かつ調査業務が多い人にとって、Deep Research Maxは最初に試すべき選択肢だ。
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