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Googleが「ネット全体のカート」を作った — 検索もYouTubeもGmailも、1つのカゴに入る

ネットで買い物をしていると、カゴの中身がバラバラになる。

Amazonで見つけたキーボード。楽天で安かったマウスパッド。Shopifyのニッチなブランドで気になったデスクマット。それぞれ別々のカートに入れて、別々に決済して、別々に届くのを待つ。比較したければタブを何枚も開いて、価格とレビューを行ったり来たりする。

Google I/O 2026で発表された「Universal Cart」は、この面倒を丸ごと引き受けようとしている。

検索中に見つけた商品を、1つのカゴに放り込む

Universal Cartの発想はシンプルだ。Google検索、Geminiアプリ、YouTube、Gmailのどこで商品を見つけても、同じカートに追加できる。

YouTubeのレビュー動画を見ていて「これいいな」と思ったらカートに入れる。Gmailに届いたセール通知から気になった商品をカートに入れる。Geminiに「予算5万円で在宅デスクを揃えたい」と相談して、提案された商品をそのままカートに入れる。すべてが1つの場所に集まる。

ここまでなら「ただのウィッシュリスト」だが、Universal Cartはその先がある。

AIが値段を見張り、パーツの相性まで確認する

カートに入れた瞬間から、GeminiのAIがバックグラウンドで動き始める。

価格監視: 商品の価格変動をリアルタイムで追跡し、値下げがあれば通知する。過去の価格履歴も見られるため、「今が買い時か」の判断材料になる。

在庫アラート: 品切れになった商品が再入荷したら教えてくれる。限定品や人気商品を追いかけるときに地味に助かる機能だ。

互換性チェック: これが一番インパクトがある。たとえば自作PC用のパーツを複数のショップから集めてカートに入れたとき、AIが「このCPUはこのマザーボードに対応していない」と警告し、互換性のある代替品を提案する。

素直にすごいと思ったのはこの互換性チェックだ。PCパーツに限らず、カメラのレンズとボディ、インテリアの色合わせ、キャンプ用品のサイズ互換など、応用範囲は広い。Googleが持つ商品知識グラフとGeminiの推論能力を組み合わせることで、「店員に相談する」体験をオンラインで再現している。

決済はどうなるのか

Universal Cartからの購入は2つのルートがある。Google Payに対応しているマーチャントなら、カート内から数タップで決済できる。対応していないマーチャントの場合は、商品をマーチャントのサイトに転送して、そこで決済を完了する。

参加マーチャントにはNike、Sephora、Target、Ulta Beauty、Walmart、Wayfairの名前が並ぶ。Shopifyのマーチャントも対応しているため、小規模なブランドもカバーされる。

ただし、すべてのECサイトがUniversal Cartに対応するわけではない。Amazonは当然ながら含まれていないし、今後も参加する可能性は低い。「ネット全体のカート」とは言いつつ、実質的にはGoogle経済圏内のカートだ。この点は正直に認識しておく必要がある。

KlarnaとChatGPT、同じ週の発表

興味深いのは、Universal CartとKlarnaのChatGPTショッピング検索がほぼ同じ週に発表されたことだ。

Klarnaは「ChatGPTの中で商品を探す」体験。Universal Cartは「Googleのサービスを使いながら、シームレスに買い物をする」体験。前者は「何を買うか決める」フェーズに強く、後者は「決めてから買うまで」のフェーズに強い。

この2つが組み合わされると、AIが購買プロセスの全段階に介入する世界が見えてくる。相談→発見→比較→監視→購入——この流れをすべてAIが媒介する「エージェンティックコマース」は、もはやコンセプトではなく、動くプロダクトとして存在し始めている。

日本ではいつ使えるか

Universal Cartは2026年夏にアメリカのGoogle SearchとGeminiアプリでローンチ。その後YouTubeとGmailに拡大する予定だ。

日本向けの展開スケジュールは未発表だが、Google Shoppingが日本で利用可能であること、Geminiアプリが日本語対応済みであることを考えると、年内に何らかの形で展開される可能性はある。ただし、マーチャント側の対応が必要なため、参加ブランドが限定的な形での開始になるだろう。

楽天やYahooショッピングがUniversal Cart Protocolに参加するかどうかは未知数だ。参加すれば日本のECユーザーにとって大きな利便性向上になるが、自社の購買データをGoogleに渡すことになるため、戦略的な判断が求められる。

買い物の仕方が変わるのは確かだ。問題は「いつ」「どこまで」かだけで、方向性は決まっている。

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