無料の動画編集ソフトにAIが8つ載った — DaVinci Resolve 21のAI機能を整理する
DaVinci Resolveを使っている人は「また無料で使えるんだろうか」が最初に気になるはずだ。答えはイエス。DaVinci Resolve 21も無料だ。そして今回、8つの新しいAI機能が追加された。
4月14日のNAB 2026でBlackmagic Designが発表したDaVinci Resolve 21は、パブリックベータとして既にダウンロードできる。AI機能に加えて、写真編集用の「Photo」ページが新設されたことでも話題になっているが、このメディアではAI側に絞って見ていく。
8つの新AI機能
IntelliSearch — 「あのシーン」を言葉で探す
メディアプールの映像を自然言語で検索できる。「赤い車が映っているシーン」「田中さんが話している場面」のように、オブジェクトや顔、セリフの中のキーワードで目当てのクリップを探し出す。
素材が数百本、数千本になるプロジェクトでは、目的のシーンを探すだけで数十分かかることがある。IntelliSearchはこの作業を数秒に圧縮する。個人的には、8つの中で最も多くの人に恩恵がある機能だと思う。
CineFocus — 撮影後にボケ味を変える
後からフォーカスポイントを変更し、被写界深度を調整できる。クリックした箇所にフォーカスを合わせ、絞りや焦点距離を調整。ボケの形状選択やキーフレームによるラックフォーカスにも対応する。
iPhoneのポートレートモードの映像版と言えば伝わるだろうか。ただしこちらはプロ向けで、光学的なボケの質感を再現する。撮影時にフォーカスを外してしまったショットの救済にも使える。
AI Speech Generator — 10秒の音声から声を作る
テキストからナレーションを生成する機能。Blackmagicが用意した声のプリセットに加え、10秒の音声サンプルから独自の声モデルを作成できる。
ナレーターを手配せずに仮ナレーションを入れたい場面は制作現場で頻繁にある。10秒のサンプルで声を複製できるというのは、ポッドキャストや企業VP(ビデオパッケージ)の制作効率を大きく変えるだろう。
Face Age Transformer — 顔の年齢を変える
トラッキングされた顔を分析し、年齢オフセットスライダーで老化・若返りを適用する。シワの追加・除去、肌のハリの調整など。フラッシュバックやフラッシュフォワードのシーンで時間経過を表現するのに使える。
その他のAIツール
- Face Reshaper: 顔の形状や特徴をトラッキングしたまま調整
- Blemish Removal: 肌のレタッチ・シミ除去
- Slate ID: カチンコからメタデータを自動抽出
- Motion Deblur: モーションブラーの低減
- AI UltraSharpen: 映像のシャープネス強化
無料版と有料版の違い
DaVinci Resolveは無料版でも透かしなし・商用利用可で、編集・カラー・Fusion(VFX)・Fairlight(音声)の全ページが使える。
ただし、AI機能の多くはDaVinci Neural Engineを利用しており、これはStudio版(買い切り$295 / 約4.5万円)の機能だ。IntelliSearchやCineFocusなどの高度なAI機能はStudio版が必要になる可能性が高い。過去のバージョンでも、顔認識やスピードワープなどのAI機能はStudio限定だった。
とはいえ$295の買い切りで、しかも以降のメジャーアップデートも無料というのは、映像編集ソフトの中では破格だ。Adobe Premiere Proの月額$22.99(年額約$276)と比べると、2年目以降はDaVinci Studioのほうが安くなる計算になる。
Photoページ — Lightroomへの挑戦
AI機能ではないが触れておく。DaVinci Resolve 21にはカラーページの技術を応用した写真編集ページが追加された。ノードベースのカラーグレーディングをスチル写真に適用でき、テザー撮影にも対応する。
ハリウッド映画のカラリストが使うツールで写真を編集できるというのは面白い。Lightroomの牙城を崩すかどうかはさておき、映像と写真を同じソフトで扱えるメリットは大きい。
映像AIの競争地図
映像編集のAI化はDaVinci Resolveだけの話ではない。Adobe Premiere ProはFirefly Video ModelでAI生成映像をタイムラインに挿入できるようになり、CapCutはByteDance傘下の技術を活かした自動編集機能を強化している。
DaVinci Resolveの立ち位置は「生成AIで映像を作る」ではなく「既存の映像をAIで効率的に編集する」だ。IntelliSearchやCineFocusは派手さでは劣るが、毎日の編集作業に直結する実用性がある。この地に足のついたアプローチは、プロの編集者ほど評価するだろう。
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