AIが代わりに電話をかけてくれる — 歯医者の予約も銀行の問い合わせもAsmi AIに丸投げ
歯医者に予約の電話を入れたいが、診療時間中に電話する余裕がない。銀行に問い合わせたいが、IVR(自動音声応答)を延々たらい回しにされるのが嫌で後回しにしている。保険会社に電話したら30分保留で待たされた。
こういう「電話しなきゃいけないけど面倒すぎて放置している用事」は、誰しも1つや2つ抱えているはずだ。
Asmi AIは、この面倒な電話をAIが代わりにかけてくれるサービスだ。Product Huntで335 Upvoteを獲得し、「チャットで答える」から「電話で動く」へと進化したAIエージェントの一つとして注目を集めている。
毎朝AIから電話がかかってくる
使い方は独特だ。Asmi AIは毎朝ユーザーに電話をかけてくる。その電話で「今日やってほしいこと」を口頭で伝える。スクリーンもキーボードも不要。話すだけでタスクが登録される。
たとえば「今日の14時に歯医者に予約を入れてほしい」「水道の修理業者を手配して」「保険会社に保険金の請求状況を確認して」。これらを伝えると、Asmi AIが実際にその相手先に電話をかけて交渉・予約・確認を行う。
終わったらWhatsAppかiMessageで結果を報告してくれる。「14時に○○歯科で予約が取れました」という具合だ。
IVRの保留もAIが耐える
Asmi AIの技術的に面白い点は、IVRの操作や保留待ちをAIが代行することだ。「1を押してください、2を押してください」のメニューをAIが聞き分けて操作し、30分の保留も人間の代わりに待ってくれる。複数の業者に同時並行で電話をかけることも可能で、3社の見積もりを取りたいときなどは一気にコールして比較結果を返してくれる。
50以上の言語に対応しているため、英語圏のサービスへの問い合わせに限らない。
正直、どこまで使えるのか
コンセプトは魅力的だが、気になる点もいくつかある。
まず、複雑な交渉にどこまで対応できるのか。予約や問い合わせのような定型的なやり取りは得意だろうが、「料金を交渉してほしい」「クレーム対応をしてほしい」となると、現時点のAIには荷が重い場面がありそうだ。相手方も「あなたはロボットですか?」と聞いてくる時代なので、その対応も気になる。
日本のサービスに対応しているかも不明だ。Product Huntでのローンチを見る限り、主に英語圏をターゲットにしている印象で、日本の歯医者や銀行に電話をかけてくれるかどうかは確認が必要。日本語対応は50言語のリストに含まれているが、日本の電話文化特有の丁寧語や敬語のニュアンスをどこまで再現できるかは未知数だ。
料金体系も現時点では非公開。ウェイトリスト制で運用されているようだが、電話1件あたりの課金なのか月額制なのかも不明。リアルタイムの音声通話はLLMのトークンコストに加えて電話回線の通信料もかかるため、安くはならないだろう。
OpenClawやPerplexity Computerとは何が違うのか
「AIが実世界のタスクを実行する」という点では、OpenClawやPerplexity Computerも同じカテゴリに入る。ただしアプローチが根本的に違う。
OpenClawはPC上のアプリケーションを操作して「デジタルな作業」を自動化する。Perplexity Computerも同様で、ブラウザやデスクトップアプリの操作が中心だ。
一方のAsmi AIは電話回線を使う。デジタルの世界ではなく、アナログの電話網を通じて人間の相手と会話する。Webサイトがなくてオンライン予約もできない町の歯医者や個人経営の工務店でも、電話番号さえあればAIがコンタクトを取れる。
このアプローチの強みは、デジタル化されていない相手にも到達できることだ。日本の中小企業や個人商店の多くはまだ電話が主な連絡手段であり、オンライン予約システムを導入していないケースも多い。そういった相手とのやり取りこそ、電話ベースのAIエージェントが真価を発揮する場面だ。
今後の可能性
Asmi AIのような「電話するAI」が普及したとき、いくつかの面白い変化が想像できる。
一つは、「電話が苦手」という悩みの消滅。電話をかけること自体にストレスを感じる人は少なくない。特に若い世代では「電話恐怖症」という言葉もあるほどだ。AIが電話を代行することで、コミュニケーション手段の選好がタスクの障壁でなくなる。
もう一つは、小規模事業者の予約効率化。電話でしか予約を受け付けていない店舗は、営業時間外の電話を取りこぼしている。顧客側がAIで電話するようになれば、店舗側もAIで応答する構図が生まれ、結果として24時間の予約成立が可能になる。AIとAIが電話で会話する未来は奇妙に聞こえるが、両者にとって合理的ではある。
誰のためのツールか
現時点では英語圏在住で、日常的に電話タスクが発生する人がメインターゲットだろう。保険の手続き、医療機関の予約、公共サービスへの問い合わせなど、米国では電話が必須のシーンが多い。
日本からの利用は対応状況を見極める必要があるが、仮に日本語と日本の電話番号に完全対応すれば、忙しいビジネスパーソンや電話が苦手な人にとっては強力なツールになる。料金設定次第では、秘書代行サービス(月数万円)の代替として現実的な選択肢だ。
AIがチャットで質問に答えるフェーズから、実世界で手足を動かすフェーズに移行しつつある。Asmi AIはその最前線にいるツールの一つだが、実用性は対応地域と料金次第。ウェイトリストが開いたら、まず英語圏の用事で試してみるのがよさそうだ。
関連記事
音声エージェントの「間」がようやく自然になる — ElevenLabs Conversational AI 2.0の中身
ElevenLabs会話AI 2.0のターンテイキング・RAG・バッチコールの技術詳細と料金を解説。
10週間でARR22億円に達したSlack常駐AIの正体 — Viktorという「もう一人のチームメンバー」
Slack/Teamsに常駐するAIコワーカー「Viktor」を解説。3,000+ツール連携、月$50〜の料金、10週でARR $15Mの急成長の理由を整理する。
Cursorの「寝ている間に仕事が終わる」が冗談じゃなくなってきた — Automations、Agents Windowに統合
Cursor 3.5でAutomationsがAgents Windowに統合。マルチリポ対応・ノーリポ自動化・5つのMarketplaceテンプレートの中身と使い所を整理する。