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「近くのカフェでアイスラテを頼んで」— ChatGPTとClaudeから実際に注文できる時代が始まった

「近くで美味しいプアオーバーが飲めるスペシャルティコーヒーショップを探して、ハウスブレンドの豆を一袋注文して」

こんなプロンプトをChatGPTやClaudeに投げると、実際に店舗が検索され、メニューが表示され、注文が確定し、支払いまで完了する。ブラウザを開くことも、アプリを切り替えることもなく。

7月1日、決済プラットフォームのSquareがChatGPTアプリとClaudeプラグインの提供を正式に開始した。AIチャットの中で「注文したい」と言えば、実際に注文が通る。SF映画の話ではなく、いま米国の飲食店で動き始めている現実だ。

仕組み — 注文はどう流れるのか

裏側で動いているのは、Blockの「Order by Cash App」インフラだ。SquareのライブカタログとAIが接続されており、メニュー、価格、カスタマイズオプション、在庫状況がリアルタイムで反映される。品切れの商品がAIに表示されることはない。

ユーザーの体験はシンプルそのもの。ChatGPTやClaudeに「○○を注文して」と伝えると、AIが周辺の対応店舗を検索し、メニューを提示する。ユーザーが確認すると、Order by Cash Appで支払いが完了する。あるいは、カートに商品が入った状態で店舗のチェックアウトページにリダイレクトされるパターンもある。

注文は店舗のSquare POSとキッチンディスプレイ(KDS)にそのまま入る。店舗側は「AIチャット経由の注文」としてレポートで確認できるが、オペレーションは通常のオンラインオーダーと全く同じ。新しい端末も、追加のトレーニングも要らない。

手数料 — ここが本当に重要

正直、最も驚いたのは手数料体系だ。

Squareは追加のマーケットプレイス手数料を取らない。発生するのは通常のカード処理手数料(約2.9% + $0.30)のみ。DoorDashの15〜30%、Uber Eatsの20〜30%と比べると、文字通り桁が違う。

プラットフォーム 手数料
DoorDash 15〜30%
Uber Eats 20〜30%
Grubhub 5〜20%
Square AI連携 約3%(カード処理費のみ)

飲食店にとって、デリバリーアプリの高い手数料は長年の悩みの種だった。その構造を根本から変えうるのがこの連携の本質で、単に「AIで注文できて便利」という話を超えている。

デリバリーが必要な場合はホワイトラベルの配車ネットワーク経由で、距離に応じた定額($7〜10程度)が発生する。パーセンテージではなく定額という点も、既存プラットフォームとの大きな違いだ。

店舗側の条件 — セットアップは「ゼロ」

対象は、米国内でSquare Online Orderingを有効にしている飲食店。該当する店舗は自動的にオプトインされる。追加のAPI設定もなければ、契約変更もない。

これは地味だが重要なポイントだ。Shopifyが3月に発表した「Agentic Storefronts」も同様の方向性だが、Squareは特にオフラインの中小飲食店に強い。チェーン店ではなく、近所のカフェや個人経営のレストランが対象に入る。

「エージェントコマース」という新しい市場

SquareのグローバルパートナーシップリードであるMorgan Kuntze氏は、今回の発表を「agentic commerce(エージェントコマース)」と位置づけている。AIエージェントが単に質問に答えるのではなく、ユーザーの代わりに取引を完了するという概念だ。

数字で見ると、この方向への移行は既に始まっている。消費者の42%がすでにAIツールを商品の発見や比較に使っており、2030年までに「エージェント経由の買い物」は米国だけで約3,850億ドル規模になるとの予測がある。

Shopifyは3月にUniversal Commerce Protocol(UCP)をGoogleと共同開発し、Walmart、Target、Etsy、Visa、Mastercardらが参加表明。Squareは中小飲食店、Shopifyはeコマースという棲み分けが見えてくる。Amazon Alexa+との音声コマース連携も同時に発表されており、AIが「注文する」行為そのものを担う方向は不可逆に見える。

日本のSquareユーザーへの影響

現時点では米国限定だが、Squareは日本でも決済端末として広く普及している。個人経営のカフェやレストランでの導入が多く、もしこの機能が日本に展開されれば、影響は小さくないだろう。

ただし実現にはいくつかのハードルがある。日本のSquare Online Orderingの普及度、Cash Appに相当する決済手段(PayPayやLINE Pay連携?)、そしてChatGPT/Claudeの日本語での精度。これらが揃えば、「LINEで注文」の次のステップとして「AIチャットで注文」が自然に入ってくる可能性はある。

正直な評価

面白いのは、技術的に何か革新的なことをしているわけではない点だ。既存のSquareカタログ、既存のCash App決済、既存のKDS連携。それらをAIプラットフォームの「プラグイン」として公開しただけ。だが、その「だけ」が巨大な意味を持つ。

気になるのはユーザーの信頼の問題。AIに「注文して」と任せるには、間違った店舗に注文されるリスク、金額の確認なしに決済されるリスクを受け入れる必要がある。現時点ではユーザーが確認するステップが入っているようだが、その「確認」が形骸化するのは時間の問題だろう。

もう一つ、データの問題。AIが「あなたは毎朝ここのラテを頼んでいますね」と学習したとき、その購買履歴は誰のものなのか。Square、OpenAI/Anthropic、ユーザー本人。この三者間のデータ所有の線引きは、まだ誰も答えを出していない。

それでも、DoorDashに30%を取られるくらいなら3%でAI経由の注文を受ける方がいい — 店舗オーナーの答えは明白だ。

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