Comet開発者が次に作ったのは「仕事するブラウザ」 — 数時間タスクを任せられるPolar
AIブラウザは、ここ1年でひととおり出そろった感がある。検索をAIに置き換えて、開いているタブに話しかけて、旅行の予約を頼む——どれも便利ではあるけれど、「これがブラウザの未来か」と問われると、少し首をひねっていた人も多いはずだ。
その違和感を、当のAIブラウザを作った側の人間が言語化してみせた。7月29日、Perplexityで Comet の開発に携わった Kevin Jiang が、新しいAIブラウザ Polar を立ち上げ、Madrona主導で570万ドル(約8.5億円)のシードを調達した。

「タブに話しかける」の次
Jiangの主張はシンプルだ。第一世代のAIブラウザは、デフォルト検索を置き換え、タブとチャットさせることを狙った。だがそれは長期的に強い提案ではなかった——本人がCometを内側から見てきたうえでの総括だから、重みがある。
Polarが賭けるのは「知識労働(knowledge work)」だ。旅行予約のような単発の用事ではなく、リサーチ、採用、営業、オペレーション、事業運営といった、ブラウザ上で何時間も続く仕事。ここでこそブラウザエージェントは本当に価値を持つ、という読みである。
具体的には、ワークフローをスケジュール実行し、プロンプトを保存し、いま開いているタブをもとにタスクをエージェントへ割り当てられる。目玉は、複雑な知識労働タスクを数時間にわたって自律的に走らせ続けられるブラウザエージェントだ。「数分で終わる雑務」から「数時間かかる調査」まで、幅を持って任せられると謳っている。
なぜChromiumを「フォーク」したのか
技術的に見逃せないのが、PolarがChromium(Google Chromeのベース)を正式にフォークして作られている点だ。前身のComposerがElectron上のエージェントだったのに対し、Polarはブラウザそのものを掌握している。
これは地味だが本質的な差だと思う。拡張機能や外付けエージェントは、どうしてもブラウザの「上」に乗るだけで、ページの中身やタブの状態に深く手を入れにくい。ブラウザ本体を握れば、人間とエージェントとインターネットのあいだに、これまでなかった種類のインターフェースを作り込める。数時間の自律動作という難しい目標も、この土台があってこそ現実味を帯びる。
何が変わりうるか
もしPolarのエージェントがうたい文句どおり数時間走り続けられるなら、変わるのは「調べ物の待ち方」だと思う。
競合リサーチや候補者のソーシング、営業リストの精査——いま人間がタブを何十枚も開いて延々とやっている作業を、開いたタブごとエージェントに渡して、席を立っている間に進めてもらう。戻ってきたら結果がまとまっている。そういう「ブラウザに仕事を預けて離席する」働き方が、日常になりうる。
ただ、期待しすぎるのはまだ早い。自律で数時間動くエージェントは、途中の判断ミスがそのまま数時間ぶんの無駄になりやすく、どこまで人間が介入せずに任せられるかは実際に使ってみないと分からない。現状はmacOSのみで、Windows対応は今後の予定。日本語のドキュメントやサイトを相手にどこまで精度が出るかも未知数だ。
とはいえ、「AIブラウザの第一世代は方向を間違えた」と作り手自身が総括し、知識労働に的を絞り直した——この仕切り直しには説得力がある。Cometを知る人ほど、次に何が起きるか見ておく価値がある。詳細はPolar公式サイトで確認できる。AIブラウザの現在地を押さえるなら、先行するPerplexityの Cometと読み比べると、この1年の変化がよく見える。
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