ClaudeもGPTもDeepSeekも、1つのブラウザで切り替える — 美団が出したAIブラウザTabbit
AIブラウザという言葉を、この1年で何度も聞くようになった。Arcの後継として登場したDia、OpenAIのAtlas、Perplexityのブラウザ。どれも「ブラウザにAIを載せる」のではなく「AIを前提にブラウザを組み直す」方向に進んでいる。
そこに中国から一台、面白いのが入ってきた。美団(Meituan)傘下のGN06——旧「Light Year(光年之外)」——が作った Tabbit だ。フードデリバリーの美団がなぜブラウザを?という違和感がまず面白いのだが、中身を見ると、単なる話題作りではない筋の通ったプロダクトだった。
何ができるのか
Tabbitがやろうとしているのは、ブラウジングを「受け身の閲覧」から「AIエージェントが動く作業場」に変えることだ。柱は3つある。
ひとつめが、ページ内容の会話的理解。開いている記事や選択したテキストをブラウザが解釈し、文脈を踏まえた質問に答える。「このページの要点は?」「この表の3行目は何を意味する?」といったやり取りが、タブを離れずにできる。
ふたつめが、エージェントモード。これが本命だ。複数タブをまたいでページを開き、データを抽出し、フォームを埋め、結果を統合する——という多段の作業を、バックグラウンドで自律実行する。人間が画面に張り付いていなくても、裏でタスクが進む。
みっつめが、Skillsシステム。繰り返す操作をノーコードでワンクリックのマクロにできる。「毎朝この3サイトを巡回して価格をまとめる」みたいな定型作業を、プロンプトの使い回しではなく再利用可能な部品として保存できる仕組みだ。
一番の差別化は「モデルを選べる」こと
個人的にTabbitで一番効くと思ったのは、10以上のLLMを内蔵していて切り替えられる点だ。標準では美団自社のLongCat-Flash-Chatが動くが、GPT、Claude、DeepSeek、Doubao、Qwen、Kimiなどサードパーティのモデルに切り替えられる。
DiaやAtlasは基本的に「その会社のモデル」に紐づく。OpenAIのブラウザでGeminiを主役にはできない。TabbitはむしろOpenRouter的に「ブラウザという器の中でモデルを取っ替え引っ替えする」思想で、ここは他のAIブラウザにない味だ。用途によって、コードの読解はClaude、中国語の処理はQwen、コスト重視ならLongCat、と使い分けられる。
実力への評価と、正直な留保
開発の経緯もプロダクトの本気度を裏づけている。2026年3月2日にmacOS/Windowsでパブリックベータを出し、12回のバージョン反復と約100日のテストを経て、6月9日にV1.0に到達した。突貫ではなく、それなりに磨いてから正式版にしている。
期待できるのは、この「マルチモデル×エージェント×Skills」が噛み合ったときの日常業務の圧縮だ。リサーチ、価格比較、フォーム入力、定型レポート作成——ブラウザの中で完結する仕事は思っている以上に多い。それをタブ横断で自動化できるなら、「ブラウザを開いて手で回していた作業」がまるごとエージェント任せになる余地がある。ここが揃えば、AIブラウザは"便利な検索窓"から"働く相棒"に変わる。
ただ、留保もはっきり書いておく。まず、中国発のプロダクトである以上、日本のユーザーにとってはデータの取り扱いやプライバシーポリシーの精査が前提になる。エージェントがフォームを自動で埋める以上、何がどこに送られるかは特に気になるところだ。次に、エージェント型ブラウザ全般に言えることだが、自律操作の信頼性——意図しないクリックや誤操作をどれだけ防げるか——は実運用で削られる部分で、ここはまだ未知数だ。そして日本語UIやローカライズの成熟度も、現時点では過度な期待は禁物だろう。
とはいえ、「モデルを選べるAIブラウザ」という切り口は、囲い込みが進むこのジャンルにおいて明確に新しい。DiaやAtlasを触って「なぜこのモデルに固定されるんだ」と感じた人には、Tabbitは一度試す価値がある。詳細は公式サイトで確認できる。
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