Perplexityに聞くだけで、パワポもExcelもそのまま出てくるようになった
リサーチ系AIの話をすると、必ずどこかで行き詰まるポイントがある。
いくら綺麗な調査結果が出てきても、それを上司やクライアントに渡すためにPowerPointに貼り直す時間が要る。スライドに置く数字は別途Excelにまとめる必要があるし、BIダッシュボードを作るならさらに別のツールを開く。「リサーチは終わったのに仕事は半分残っている」、というあの妙な脱力感だ。
Perplexityが、その出口を書き換えにきた。
Deep Researchが「提出物」を直接出すようになった
3月末に段階的にロールアウトされた新機能は、公式には「Creating assets with Perplexity」と呼ばれている。Deep ResearchやPro Searchで得た結果を、その場で以下の成果物として吐き出せる。
- PPTX — PowerPointスライド
- XLSX — Excelスプレッドシート
- PDF / DOCX — ドキュメント
- HTML — ダッシュボードや簡易Webサイト
しかもこれは別画面でもプラグインでもなく、普段のPerplexityの会話画面からそのまま生成される。「このトピックを10ページのスライドにまとめて」と追加で頼むだけでいい。出来上がったPPTXは即ダウンロードできるし、Google Driveを連携していればそのままDriveに保存される。
PerplexityはすでにLabsという「長時間の制作タスク」向け機能を別立てで持っていたが、今回の更新でメインの検索UIの延長線上にアセット生成が入ってきたことが重要だ。リサーチと制作の境界線がほぼ消えた、と言ってもいい。
使える条件 — どのプランで使えるか
現時点で利用できるのは以下のプラン:
- Pro($20/月、約3,000円)
- Max($200/月、約30,000円)
- Enterprise Pro / Enterprise Max
- Education Pro
無料プランでは使えない。ただしこの機能のためだけにProに入る価値はあると思う。月$20は、ChatGPT Plusと比べれば高くもないし、PPTX/XLSXを2〜3回でも実務に使えれば元が取れる。
Google Driveへのエクスポートには、事前にPerplexity ConnectorsでDriveを接続しておく必要がある。Drive連携自体は以前から用意されている入出力経路だが、アセット機能が出てきたことで「成果物をDriveに直送する」という使い方がようやく意味を持ち始めた。
何が変わるか — 「調査→納品」の間が溶ける
試しに、よくある実務ケースを3つ並べて考えてみる。
ケース1: 競合調査レポート 従来は「ChatGPTで調査 → スプレッドシートに手で転記 → Googleスライドに貼る → 画像を調整」のフローだった。Perplexityなら、「主要プレイヤー5社を価格と機能で比較したスライドにして」と指示するだけで、比較表付きのPPTXが出てくる。出典リンク付きというのもPerplexityの強みで、スライドを直接レビューに回しても「ソースは?」の突っ込みに耐える。
ケース2: 市場データのダッシュボード HTMLでダッシュボードが生成できる、というのは地味に大きい。マーケットサイズや成長率を調べた上で、「グラフ付きのHTMLダッシュボードにして」と言えば、コピペで社内Wikiに埋め込める軽量サイトが返ってくる。Lookerを立ち上げるまでもない一次共有に使える。
ケース3: 企画書ドラフト DOCXで吐けるので、そのままWordに取り込める。日本企業の現場では「提出物は最終的にWord」という文化がまだ根強い。Perplexityで調査し、そのままWord提出形式で出してくれる、という動線は想像以上にフィットする。
逆に言うと、「調査は別ツール、作成は別ツール」という昔ながらの作業分担が崩れる。これは組織内での「誰の仕事か」の線引きにも影響する話で、アシスタントが書いていた調査レポートの多くは、Perplexity Proの契約1つで置き換わる可能性がある。
ChatGPTのCanvasやGeminiのDeep Researchとの違い
似たような方向を目指しているサービスはすでにある。
ChatGPT Canvasは「執筆・編集を共同作業のように行う」UIで、Pythonを動かしてXLSXやPDFを生成することも可能だ。ただしCanvasはあくまで「ChatGPT上での執筆環境」であり、PPTXのような構造化プレゼン資料の生成は苦手。最近はAdvanced Data Analysisと組み合わせてPPTXを吐く使い方もあるが、スライドデザインの品質は頭打ち感がある。
GeminiのDeep Researchは、リサーチ自体は非常に強い。ただし生成される成果物はGoogleドキュメント寄りで、Googleスライドやシートに直接吐き出す機能は限定的だ(2026年4月時点)。GeminiはGoogle Workspaceとの統合が深いので今後追いついてくる可能性は高いが、現時点ではPerplexityの方が**「調査→成果物ファイル」の動線が完成している**。
NotebookLMとも比較されやすいが、NotebookLMは「自分がアップロードした資料を深掘りする」ツールであり、Web全体からのオープンリサーチとは役割が違う。使い分けの軸は「入力ソースが手元にあるか、ネット上か」になる。
気になる点もある
この更新は素直に便利だが、触ってみると引っかかるところもある。
まず、スライドデザインのクオリティは期待を超えない。レイアウトは整っているが、プレゼン資料としてはやや単調で、そのまま役員会議に出すには少し手を入れる必要がある。おそらく今後テンプレート追加で改善されるだろうが、現時点では「初稿が一瞬で出てくる」という価値にとどまる。
次に、クレジット・レート制限の扱いが不透明だ。Proユーザーでも、1日に何回Deep Researchを回して何個PPTXを作れるのかが公式には明示されていない。長時間のタスクはPerplexity Labs側に回される挙動があるらしく、実務で毎日大量に使う人は、実際のレート感を体感で掴むしかない。
三つ目、日本語資料の品質は英語よりも一段落ちる。日本語でスライドを頼むと、見出しや本文は自然な日本語で出てくるものの、図表のラベルやチャートの凡例が英語のまま残ることがある。完全な日本語プレゼンを出したい場合は、もう一度編集工程が必要になる可能性が高い。
この機能の本当のインパクト
Perplexityがやろうとしているのは、「AIリサーチサービス」から「AI制作物プラットフォーム」への移行だ。
検索を答えで返すだけのサービスは、ChatGPTもGeminiもClaude.aiも全員やっている。そこで差を付けようとすると、「答えから先」の部分 — つまり成果物生成 — に踏み込むしかない。Perplexityが今回踏み出したのは、「答え」よりも「提出物」の方に価値がある現場ユーザーへの照準合わせだと言っていい。
そして、これはPerplexity Cometが目指す「ブラウザ自体がAIアシスタント」という方向とも符合する。ブラウザで調べ、Deep Researchで深掘りし、そのままPPTXに落とし、Driveに保存する — 全部Perplexity一つでやれる動線は、他社がすぐには真似できないアドバンテージだ。
月$20で試せるところはもう試してもいい。特に「調査してはスライドを組む」を週に何度も繰り返すマーケター、コンサル、アナリスト職にとっては、働き方の一部が静かに書き換わる可能性がある。
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