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月商3,000億円、年間赤字2兆円——OpenAIが「それでもIPOする」理由

5月22日、OpenAIがSECにS-1を非公開で提出した。ゴールドマン・サックスとモルガン・スタンレーが主幹事を務め、早ければ9月にも上場する。時価総額の目標レンジは8,520億〜1兆ドル超。実現すれば、テック史上最大のIPOになる。

数字だけ見ると圧倒的だ。月間売上は約20億ドル(約3,000億円)。年間換算のARRは250億ドルに達し、ChatGPTの有料ユーザーは5,000万人、法人ユーザーは900万人を超えた。2030年には年間売上2,800億ドルという社内予測もある。

ただし、この会社は黒字ではない。

売上が伸びるほど赤字も膨らむ構造

2025年通年の売上は131億ドル。だが運営コストに220億ドルを費やし、純損失は約90億ドルだった。2026年は赤字がさらに拡大し、140億ドルの営業損失が見込まれている。キャッシュフローが黒字化する見通しは2029年。つまり、あと3年は赤字が続く。

GPUの調達費、データセンターの運用費、そしてフロンティアモデルの訓練コスト。売上が伸びてもインフラ投資がそれ以上のペースで膨らむ。AI企業特有のコスト構造だ。

にもかかわらず、投資家は殺到している。

マスク訴訟の敗北がIPOの扉を開いた

タイミングには理由がある。5月21日、イーロン・マスクがOpenAIの営利転換を不正とした訴訟で連邦陪審が請求を棄却した。「提訴が遅すぎた」という手続き論での敗北だが、OpenAIにとっては十分だった。IPOの最大の法的リスクが消えたのだ。

S-1提出はその翌日。用意周到というより、この判決を待っていたと見るほうが自然だろう。

Anthropic、SpaceXとの「IPOレース」

OpenAIだけではない。Anthropicは評価額9,000億ドルでの資金調達を進めており、第1四半期の売上は48億ドル。年内にIPOに踏み切る可能性がある。SpaceXもxAIとの統合後、別ルートでの上場を模索している。

2026年Q4は、AI企業のIPOが3つ同時に起きるという前代未聞のシナリオすらあり得る。市場がこれだけの大型上場を同時に消化できるかどうか、それ自体がテストになる。

S-1公開までに見ておくべきこと

S-1はロードショーの約15日前に公開される。9月上場なら、7〜8月には詳細な財務データが明らかになるはずだ。注目すべきポイントは3つ。

まず、GPUコストの内訳。OpenAIがMicrosoftのAzure依存をどこまで脱却できているかが、利益率の見通しを左右する。

次に、ChatGPTの課金ユーザーの成長率。5,000万人という数字は大きいが、成長が鈍化していれば評価額の根拠が揺らぐ。

最後に、非営利→営利の転換条件。この構造転換が完了しなければ、投資家にとって不確実性が残る。

正直な見方

月商3,000億円の企業が赤字のままIPOに踏み切る——異例だが、前例がないわけではない。Amazonは上場後7年間赤字だった。ただし当時と違い、OpenAIには同じ市場で同じ規模の競合が複数いる。

1兆ドルという数字は、「AIが人類の生産性を根底から変える」というシナリオに対するプレミアムだ。そのシナリオを信じるなら安い。信じないなら、この赤字を抱えた会社の株を最初に買う理由はない。

いずれにせよ、S-1が公開されれば、OpenAIの実態が初めて公の数字で検証可能になる。「AIの時代」を謳うなら、数字で語るべきときが来た。

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