1プロンプトで6カット、1秒17円から — Kling 3.0 Turboが見せるAI動画量産の形
AI動画生成ツールの多くは「1回のプロンプトで1カット」が前提だ。30秒の動画を作るには、カットごとにプロンプトを書き、生成し、手動で繋ぎ合わせる。見た目は未来的だが、制作フローはけっこう泥臭い。
Kuaishouが6月17日にリリースしたKling 3.0 Turboは、この構造に手を入れてきた。最大6ショットを1回のプロンプトで同時生成し、キャラクターと背景の一貫性を保ったまま連続シーケンスとして出力する。カット間の繋ぎ目を気にする作業が、そもそも発生しない。
Turboと通常版の棲み分け
Kling 3.0 Turboは、2月にリリースされたKling 3.0の高速・低コスト版だ。位置づけを整理すると:
- Kling 3.0(通常版): 最高画質。ネイティブ4K出力、Motion Brush、ストーリーボード。ヒーロー動画向け
- Kling 3.0 Turbo: 速度とコスト重視。最大1080p、マルチショット生成、改善されたリップシンク。量産向け
- Kling 3.0 Omni(同日リリース): 4K編集パイプラインの強化。ネイティブ3840×2160出力、クリップ長が10秒→15秒に拡張
正直なところ、「Turbo」「Omni」と名前が増えすぎて混乱する。要するに、量産はTurbo、作り込みは通常版、4Kが必要ならOmniという使い分けだ。
マルチショットの実用性
6ショットの同時生成は、広告制作の現場で最もインパクトがある。たとえば「製品を手に取る→使う→満足する→ロゴ」という4カットのCMを、1プロンプトで一貫した世界観のまま生成できる。ある事例では、Kling 3.0を使って1日600本のUGC広告を量産したチームが報告されている。Turboのマルチショットなら、この数字はさらに跳ね上がるだろう。
リップシンクも改善された。対応言語は英語、中国語、日本語、韓国語、スペイン語の5言語。従来のKling 3.0と比べて口元の動きがオーディオに追従する精度が上がっており、不気味の谷を越えるケースが増えたという評価が多い。
料金
| プラン | 解像度 | 価格 | 日本円換算(目安) |
|---|---|---|---|
| Turbo | 720p(音声付き) | 0.8元/秒 | 約17円/秒 |
| Turbo | 1080p(音声付き) | 1.0元/秒 | 約21円/秒 |
| Omni 4K | 3840×2160 | 約$0.43/秒 | 約65円/秒 |
10秒の動画を1080pで生成すると約210円。4Kなら約650円。大量生産用途では720pのTurboが最もコスパが良く、10秒で約170円だ。
競合との立ち位置
AI動画生成は2026年、完全な群雄割拠状態にある。
Seedance 2.0(ByteDance)はリップシンクの精度で一歩先を行く。音素レベルの音声・映像一致は現時点で最も自然。無料枠があるのも強い。Veo 3.1(Google)はシーンの一貫性とプロンプト理解度で優位。Runway Gen-4.5はVideo Arenaで高評価を維持している。
Klingの強みは量産向けのコストパフォーマンスとマルチショットだ。1秒あたりのコストが競合の中で最も低い水準にあり、かつ複数カットを一貫して生成できる唯一のモデル。作り込みよりも回転数で勝負する広告・EC・SNSコンテンツの制作に最も向いている。
気になる点
Turboの上限が1080pという点は、最終アウトプットとして使う場面を選ぶ。テレビCMやYouTubeの長尺コンテンツには通常版かOmniが必要になる。
もう一つ、Klingのプロダクトラインが複雑になりすぎている。Kling 3.0、Turbo、Omni、さらにAPIとWebアプリの機能差。どれを使えばいいのか、初見のユーザーは迷う。ここはKuaishouが早めに整理すべきポイントだろう。
Kling AIの登録ユーザー数はグローバルで1億人を突破し、法人顧客は約5万社に達している。Kuaishouはこの事業の外部資金調達を検討中とされており、単独上場の可能性も報じられている。
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