ChatGPTの中で1億商品を検索できるようになった — 後払い大手Klarnaが仕掛けるAIコマース
「防水で2万円以内のランニングシューズ、黒以外で」——こんな注文を、ChatGPTに投げると商品一覧が返ってくる。しかもリアルタイムの在庫と価格付きで。
2026年5月20日、スウェーデンの決済大手KlarnaがChatGPT内で動作する「Klarna Shopping Search」をローンチした。Klarnaが持つ1億以上の商品データベースと4億件のマーチャントリスティングに、ChatGPTの会話インターフェースから直接アクセスできる。
Amazonを開く前にChatGPTで探す
従来のネットショッピングは「Amazonを開く→検索→フィルタ→レビューを読む→比較→購入」という流れだった。Klarna Shopping Searchは、この最初の数ステップをChatGPTの会話に置き換える。
使い方はシンプルだ。ChatGPTに欲しいものを自然言語で伝えると、Klarnaの商品データから条件に合う商品がビジュアルカード形式で表示される。価格はリアルタイム。在庫状況もリアルタイム。複数のマーチャントの商品が横並びで出てくるため、1つのECサイトに縛られない比較ができる。
気に入った商品があれば、クリックするとマーチャントのサイトにリダイレクトされ、そこで購入を完結する。ChatGPT内で決済まで完了するわけではないが、「何を買うか決める」プロセスがチャットで完結する点が新しい。
技術的に何が起きているか
裏側ではKlarnaの「Product Search MCPサーバー」が動いている。MCPはModel Context Protocolの略で、AIモデルが外部データソースに接続するための標準規格だ。ChatGPTはこのMCPサーバーを通じてKlarnaのライブコマースデータにアクセスし、ユーザーの質問に対して最適な商品を返す。
13の市場に対応しており、アメリカ、イギリス、ドイツ、スウェーデンなどが含まれる。残念ながら日本は現時点で対象外だ。
マーチャント側から見ると、Klarna Shopping Searchは新しい集客チャネルになる。商品はオーガニック検索として関連性ベースで表示され、より上位に表示したいマーチャントはスポンサードプレースメント(有料広告枠)も利用できる。Google検索広告のChatGPT版と考えればイメージしやすい。
700%成長という数字の重み
Klarnaがこのタイミングで仕掛けた背景には、明確なデータがある。
2025年のホリデーシーズンに、AIプラットフォーム経由での小売サイトへのトラフィックが前年比700%成長した。しかもAI経由で来た訪問者のコンバージョン率は、通常の検索経由より31%高かった。
つまり「AIチャットで買い物を相談してからECサイトに来た人は、買う確率が高い」ことが数字で裏付けられている。Klarnaはこのトレンドをいち早く押さえにいった形だ。ローンチ当日、Klarna株は4%上昇している。
Google Universal Cartとの違い
面白いのは、同じ週にGoogleがI/O 2026で「Universal Cart」を発表したことだ。Google側はSearch、Gemini、YouTube、Gmailを横断するAIショッピングカートで、価格追跡・在庫通知・互換性チェックまでAIが自動で行う。
両者を比べると、アプローチの違いがはっきりする。
Googleは「すでにユーザーがいる場所」にショッピング機能を溶かし込む戦略だ。検索、メール、動画——日常的に使うサービスの中で、気になった商品をカートに放り込める。
KlarnaはChatGPTという「AIとの対話」にショッピングを持ち込む。「何が欲しいかまだ決まっていない」段階から、会話を通じてニーズを具体化しながら商品に辿り着く。
正直、現時点ではGoogleの方が網の広さで有利だ。ただし「相談しながら買い物する」体験は、ChatGPTの方が自然かもしれない。Amazonのレビューを延々とスクロールするより、「予算はこれくらいで、用途はこうで、デザインはこんな感じ」とチャットで伝えて絞り込んでもらう方が効率的な場面は確実にある。
日本での展開と今後
現時点で日本は対応市場に含まれていない。Klarna自体が日本市場への本格進出をしていないため、短期的に日本語対応が来る可能性は低い。
ただし、この動きの本質は「Klarnaが日本に来るかどうか」ではない。ChatGPTのようなAIアシスタントが、検索エンジンやECサイトを介さずに直接商品を提案し、購買に導く——このパターンが確立されつつあることが重要だ。
日本でも同じ仕組みが広がるのは時間の問題だろう。楽天やYahooショッピングがChatGPTやClaudeにMCPサーバーを提供すれば、「AIに聞いて買う」は一気に現実になる。そのとき、Google Universal Cartが先に日本に来ているか、それとも国内ECプレイヤーが独自に動くか。2026年後半のAIコマース競争から目が離せない。
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