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Figure AIの創業者が新会社で1,000億円を集めた — Harkが作っている「ユニバーサルAI」とは

ステルススタートアップに$700M(約1,050億円)。これは普通ではない。

ヒューマノイドロボットのFigure AI、電動航空機Archer Aviationを立ち上げてきたBrett Adcockが、3つ目の会社「Hark」で5月21日にシリーズAを発表した。評価額は$6B(約9,000億円)。プロダクトはまだ何ひとつ公開されていない。

Hark AI 創業者Brett Adcock

公開されているのは「方向性」だけ

Harkが公表している情報は驚くほど少ない。

要約すると、こうだ。

「人とAIをつなぐ新しいインターフェースを作る。独自のマルチモーダルモデルと専用ハードウェアを、最初から一緒に設計する。音声、テキスト、視覚、永続的メモリを使って、現実世界とリアルタイムにやり取りできるシステムを目指す。」

TechCrunchが「universal AI interface」と表現したのは、Hark自身がそういう言葉で語っているからだ。

具体的に何ができるデバイスなのかは、いまも公表されていない。プロトタイプの写真も、デモ動画もない。それでもVCの大手が殺到した。

投資家リストを見ると本気度がわかる

調達ラウンドの主導はParkway Venture Capital。それ以外に名前を連ねたのが、Nvidia、AMD Ventures、Intel Capital、Qualcomm Ventures、ARK Invest、Salesforce Ventures、Greycroft、Brookfield、Prime Movers Lab、Tamarack Global。

ここで目を引くのがNvidia、AMD、Intel、Qualcommの4社が全部入っていることだ。普通、半導体大手は競合への共同投資を避けるが、それを全部こなしているのが「Brett Adcock + Apple出身デザイナー + Meta Superintelligence Lab出身研究者」というチーム構成への期待感を物語る。

ARK Investの参加も意味が大きい。創業者のCathie Woodはハードウェア×AIの長期投資テーマで知られており、ARKが入ったということは「次のAppleになる可能性がある会社」という見立てがあるということだ。

調達総額は$800M(自己資金$100Mを含む)。70人のチーム、Nvidia B200 GPUデータセンターを自前で運用。設備投資のスケールは、すでにスタートアップというよりMid-tier研究機関に近い。

チーム構成 — Apple + Meta + Figureの混成

Harkのチームを見ると、Adcockが何をやろうとしているかが見えてくる。

デザインディレクター: Abidur Chowdhury 元AppleのIndustrial Design担当。AppleのWatch、Vision Proの工業デザインに関わった。「物理ハードウェアの完成度」を担当する人材。

Apple系メンバー追加 David Narajowski、Dave Wilkes。いずれもAppleの工業デザイン・プロダクトディレクター出身。

Meta Superintelligence Lab出身のAI研究者 Mingbo Ma、Xubo Liu、Xianfeng Rui、Kainan Peng、Zhihong Lei。マルチモーダルAIの最前線にいた研究者たち。

その他 Google、Amazon、Tesla出身のエンジニア。

つまりこのチームは「Apple流の工業デザイン」+「Meta系のフロンティアAI研究」+「Figure系のロボット・ハードウェア量産経験」を組み合わせている。狙っているのが「AI機能を持つ消費者ハードウェア」であることは、構成から透けて見える。

いつ何が出るのか

Hark自身のアナウンスでは、こうなっている。

  • 2026年夏: マルチモーダルAIモデルのリリース(既存プロダクト・サービスと連携するパーソナルAIプラットフォーム)
  • その後: 専用ハードウェアデバイスのリリース

つまり、ソフトウェア側のAIプラットフォームが先に来て、その上で動くハードウェアが後追いする構成だ。Humane AI Pin、Rabbit R1、Friend Pendantのような「AIガジェット」の系譜だが、それらが既存のChatGPT/Claude APIを使って失敗した教訓を踏まえているのだろう。

「自社モデル + 自社ハードウェア」のフルスタック設計はAppleの戦略そのものだ。ただ、それを「AIインターフェースに最適化された新カテゴリのデバイス」として作るという話だ。

何が実現したら嬉しいのか

実際のプロダクトがまだないので、ここからは推測になる。ただ、チームと方向性から、いくつかの可能性が見える。

1. 「すべてのアプリを横断する」AIアシスタント スマホやPCで現在の「アプリごとに分断されているAI機能」を統合する形が来る可能性が高い。Slack内のAI、Notion内のAI、ChatGPTアプリ……これらが「Hark」という1つのインターフェースに集約されて、横断的な指示ができるようになる。例えば「先週のSlackでの議論をまとめてNotionに保存し、Linearのチケットを作って」のような指示が、複数アプリを意識せずに実行される世界だ。

2. 「自分の文脈」を覚え続けるパーソナルAI 永続的メモリと自社ハードウェアの組み合わせで、ChatGPTの「会話履歴」よりも深く・長期的に自分のコンテキストを保持できる可能性がある。「3年前の旅行で食べたパスタの店、覚えてる?」みたいな問い合わせが現実的に動くデバイス。

3. 物理世界とのリアルタイム連携 カメラ・マイク・センサーを内蔵したハードウェアが「常に見ている・聞いている」状態で、必要なときだけ答える。Google GlassとAirPodsとApple Vision Proの中間にあるような、目立たないが常時稼働するデバイス。これがハマれば、スマホを取り出す回数が劇的に減る。

すべて推測だ。Humane AI Pinが破綻し、Rabbit R1がガラクタ評価で売却された業界の前例を見ると、ハードウェアAIの道は険しい。

「ステルスに$700M」の意味

冷静に考えれば、これは奇妙な現象だ。プロダクトもデモも公開されていない会社に、Nvidia、Intel、AMD、Qualcomm、ARK Investが$700Mを投じた。

理由は単純で、Brett Adcockの「実績による信頼」が大きい。Figure AIをわずか3年で$40B評価のヒューマノイド企業に育てた実績。Archer Aviationをナスダック上場させた実績。VCにとって、彼の判断は他の起業家3人分くらいの重みを持つ。

それと、現在のAI業界の「スマホの次のデバイス」に対する飢餓感もある。OpenAIがJony Iveと組んで$6.5BでIO Productsを買収したのが2025年。Friend Pendantが$1Bラウンドを計画。Limitlessが$420M調達。「AIネイティブの新しいハードウェア」への期待は、すでに業界を覆っている。

一方、心配な面もはっきりある。Humane AI Pinは「Apple出身デザイナー + 巨額投資 + 注目度」を揃えて、$700Mを使い切って失敗した。前例がある業界で、Harkがどこまで差別化できるかは2026年夏のリリースを待たないと分からない。

日本のユーザーから見ると

正直に言うと、現時点でHarkが日本市場にすぐ来る可能性は低い。Brett AdcockがすでにFigure AIを日本展開していないことも踏まえると、最初は米国限定でリリースされる可能性が高い。

ただし、Harkが提示する「ユニバーサルAIインターフェース」というコンセプト自体は、日本のユーザーにとっても他人事ではない。スマホとPC、Slack、Notion、ChatGPT、Cursor、Discord……AIアプリが乱立する状況で「全部つなぐ1つの場所」へのニーズは、間違いなく存在する。

Harkがそのリファレンス実装を提示できれば、Apple、Google、Microsoftが続く流れになる。「スマホの次の何か」の正体が、Harkのプロダクト発表で具体化するかもしれない。

2026年夏が、その最初の試金石になる。

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