Grammarlyが「文章を直す」から「文章を書く」へ — Smart DraftsとTone Rewriterで変わったこと
「英語の文法をチェックするツール」。多くの人がGrammarlyに持つイメージはこれだろう。赤い下線でスペルミスを指摘し、カンマの位置を直し、受動態を注意する。便利だが地味な存在だった。
2026年のアップデートで、Grammarlyはその枠を大きく踏み出した。プロンプトから文章の下書きを生成する「Smart Drafts」と、文体をワンクリックで変換する「Tone Rewriter」の2機能が加わり、「直すツール」から「書くツール」への転換を明確にしている。
Smart Drafts — 短い指示から下書きを作る
Smart Draftsは、数行のプロンプトとトーンの指定から完成度の高い下書きを生成する機能だ。
「来週の会議のアジェンダをプロフェッショナルなトーンで」と入力すれば、構造化された文章が出てくる。出力された下書きには、Grammarlyの文法・トーン・明瞭さチェックが自動適用済み。ChatGPTで下書きを作ってからGrammarlyで直す、という2段階の作業が1ステップに統合された。
正直、この機能単体で見れば「ChatGPTでよくないか?」と思うだろう。その疑問は正しい。だが、Smart DraftsがChatGPTと違うのは「Grammarlyが動くすべての場所で使える」点だ。
Gmail、Google Docs、Slack、LinkedIn、Notion — Grammarlyのブラウザ拡張やデスクトップアプリが入っている環境なら、わざわざChatGPTを開いてコピペする必要がない。メールを書いている途中、Slackの返信中、ドキュメントの執筆中に、その場で下書きを呼び出せる。このコンテキストスイッチのなさが、単純なAI文章生成ツールとの差だ。
Tone Rewriter — 同じ内容を別の人格で
Tone Rewriterは「書いた文章の内容を変えずに、トーンだけ変える」機能だ。
「confident」「diplomatic」「enthusiastic」「formal」「friendly」などのプリセットが用意されていて、例えば直接的すぎるフィードバックを「diplomaticトーン」に変換すれば、角を立てずに同じ指摘ができる。
チーム向けには「Brand Voice」設定もある。組織全体で統一したトーンを定義しておけば、誰が書いても同じ印象の文章になる。カスタマーサポートのテンプレートや、プレスリリースのトーン統一に実用的だ。
料金と使い分け
Grammarlyの現在のプランは3つ。
| プラン | 月額 | AIプロンプト |
|---|---|---|
| Free | 無料 | 100回/月 |
| Pro | $12/月(年払い)〜$30/月 | 2,000回/月 |
| Enterprise | 要見積もり | 無制限 |
Smart DraftsもTone RewriterもAIプロンプトの回数を消費する。Freeプランの100回では、Smart Draftsを常用するには心もとない。Proの2,000回あれば、日常的なビジネスライティングには十分だ。
年払いなら月$12(約1,800円)。ChatGPT Plusの月$20と比べると安い。ただし、Grammarlyはあくまで「文章に特化したAI」であり、ChatGPTのような汎用チャットAIではない。メール・ドキュメント・メッセージの文章品質を上げることに集中するなら、Grammarlyのほうがコスパは良い。
16言語対応の拡充
2026年のアップデートで16の新言語が追加された。Grammarlyは長らく英語オンリーの印象が強かったが、多言語対応を着実に進めている。
ただし、現時点で日本語のサポートは限定的だ。日本語の文法チェックや文体変換は主要機能の対象外で、日本語ユーザーにとっては引き続き「英語ライティングの補助ツール」という位置づけになる。日本語の文章をAIで改善したい場合は、ChatGPTやClaudeのほうが汎用的に使える。
Grammarlyを選ぶ理由、選ばない理由
Grammarlyの最大の強みは「アプリを横断して動く」ことだ。ブラウザ拡張をインストールしておけば、Webアプリ上のあらゆるテキスト入力欄でAI文章機能が使える。ChatGPTやClaudeでは毎回コピペが必要な場面を、Grammarlyはゼロタッチで処理する。
一方、弱点も明確だ。日本語非対応。長文の構成や論理展開の支援は弱い。AIとの対話的なブレインストーミングには向かない。Smart DraftsはあくまでGrammarlyが得意とする「明確で簡潔なビジネス英語」の範囲内で威力を発揮するツールだ。
英語で仕事をする機会が多い人、特にメールやSlackのやり取りが多いビジネスパーソンにとっては、年$144の投資は十分に元が取れる。日本語中心の人がわざわざ導入する理由は薄い。
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