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GPT-5.5とClaude Opus 4.7、どちらが「使える」か — 同じ週に出た2つのフロンティアモデルを並べてみた

4月16日にClaude Opus 4.7、4月23日にGPT-5.5。わずか1週間の間に、AnthropicとOpenAIがそれぞれのフロンティアモデルを投入した。

どちらもコーディング性能を大幅に引き上げ、100万トークンのコンテキストウィンドウを備え、エージェント用途を強く意識している。数字だけ見ると「ほぼ互角」に見えるのだが、実際にベンチマークを並べると面白いことが起きている。勝敗がベンチマークのカテゴリごとにきれいに分かれるのだ。

この記事では、両モデルを5つの軸で比較し、「結局どっちを使えばいいのか」を整理する。

スペック比較: 数字で見る2モデル

項目 GPT-5.5 Claude Opus 4.7
リリース日 2026年4月23日 2026年4月16日
入力料金 $5 / 1Mトークン $5 / 1Mトークン
出力料金 $30 / 1Mトークン $25 / 1Mトークン
コンテキスト 922K入力 + 128K出力 1M入力 + 128K出力
画像入力 あり あり(最大2,576px、3.75MP)
SWE-bench Verified 87.6%
SWE-bench Pro 58.6% 64.3%
Terminal-Bench 2.0 82.7% 69.4%
GPQA Diamond 94.2%

入力単価は同額。出力はOpus 4.7のほうが$5安い。ただしこの差が実際のコストに直結するかというと、そう単純でもない。

ベンチマーク: 勝敗がきれいに分かれる

VentureBeatの分析が興味深い。両社が共通して公開している10のベンチマークのうち、Opus 4.7が6つでリード、GPT-5.5が4つでリードしている。

そして勝敗のパターンには明確な傾向がある。

Opus 4.7がリードするベンチマーク:

  • GPQA Diamond(科学的推論)
  • HLE(難問推論、ツールあり/なし両方)
  • SWE-bench Pro(実コードベースのバグ修正)
  • MCP Atlas(MCPサーバー構築)
  • FinanceAgent v1.1(金融エージェント)

GPT-5.5がリードするベンチマーク:

  • Terminal-Bench 2.0(ターミナル操作のエージェント作業)
  • BrowseComp(Web情報収集)
  • OSWorld-Verified(デスクトップ操作)
  • CyberGym(サイバーセキュリティ)

つまり、Opus 4.7は「コードを深く読み、正確に修正する」タスクに強く、GPT-5.5は「ツールを駆使して自律的にタスクをこなす」タスクに強い。

正直、ここまできれいに棲み分けが出るとは思わなかった。

コーディング: 精度のOpus、効率のGPT

開発者がもっとも気にする部分を掘り下げる。

SWE-bench Proでは、Opus 4.7が64.3%でGPT-5.5の58.6%を約6ポイント上回っている。SWE-bench Proは実際のオープンソースリポジトリのバグ修正を評価するベンチマークで、「既存のコードを正確に理解して直す」能力の指標になる。

一方、Terminal-Bench 2.0ではGPT-5.5が82.7%、Opus 4.7が69.4%。13ポイントの差は大きい。Terminal-Benchはターミナル上でエージェントとして複数ステップのコーディング作業を完遂する能力を測る。

ここで効いてくるのがトークン効率だ。MindStudioの検証によると、同一のコーディングタスクにおいて、GPT-5.5の出力トークン数はOpus 4.7の約28%で済む。言い換えると、GPT-5.5は72%少ないトークンで同等の作業を完了する。

出力単価が$30と$25で一見GPT-5.5のほうが高く見えるが、実際のタスクあたりのコストは逆転する可能性がある。エージェント型のワークフローで長時間走らせる場合、この差は無視できない。

コンテキスト長: 見た目は同じ1M、中身は違う

両モデルとも公称は「1Mトークン」だが、実態には差がある。

GPT-5.5は入力922K + 出力128K。さらに272Kトークンを超えるプロンプトでは入力2倍・出力1.5倍の料金が適用される。大規模コードベースを丸ごと読ませるような使い方では、コストが跳ね上がる設計だ。

Opus 4.7は1M入力 + 128K出力で、長文プロンプトへの追加料金はない。コードベース全体を投入して「このバグを探して」と指示するような使い方では、Opus 4.7のほうがシンプルにコスト計算できる。

ただしOpus 4.7にも注意点がある。4.7では新しいトークナイザーが採用されており、同じテキストでもOpus 4.6比で1.0〜1.35倍のトークン数にマッピングされる場合がある。名目上の単価は据え置きだが、実質コストは微増している可能性がある。

エージェント性能: 自律性のGPT、確実性のOpus

エージェントとしての使い方が増えているなかで、両モデルのアプローチの違いは鮮明だ。

GPT-5.5はOpenAI自身が「agentic coding model」と位置づけている。マルチステップのタスクを与えると、計画→ツール使用→自己検証→継続というループを自律的に回す。Terminal-Bench 2.0やOSWorldでの高スコアがこの能力を反映している。

Opus 4.7は「self-verification」機能を強化している。長時間のエージェントタスクにおいて、自分の出力を定期的に検証し、誤りを検出したら修正する。SWE-bench ProやMCP Atlasでの高スコアは、この慎重さの結果だ。

端的に言えば、GPT-5.5は「どんどん進む」タイプ、Opus 4.7は「確認しながら進む」タイプ。どちらが正解かは、タスクの性質による。

料金を実タスクで比較すると

表面的な単価だけでは見えない部分がある。

1万トークンの入力に対して典型的なコーディング応答を返すケースで試算すると、GPT-5.5の出力トークンが少ないぶん、1回あたりのコストはほぼ同等かGPT-5.5のほうが安くなる場面がある。

しかし、SWE-bench Pro的な「大きなコードベースを読んで特定のバグを修正する」タスクでは、長い入力コンテキストが必要になる。272Kを超えると料金が倍になるGPT-5.5に対して、Opus 4.7は追加料金なし。この場合はOpus 4.7が明確に安い。

ユースケース コスト優位
短いプロンプトでエージェント実行 GPT-5.5(トークン効率◎)
大規模コードベースのバグ修正 Opus 4.7(長文割増なし)
バッチ処理・大量API呼び出し GPT-5.5(バッチ半額あり)
コードレビュー・PR要約 Opus 4.7(精度重視)

結局、どう使い分けるか

1週間で2つのフロンティアモデルが出て「どっちにすればいいんだ」と困る気持ちはわかる。だが、データを並べてみると使い分けの指針は割とクリアだ。

GPT-5.5を選ぶべき場面:

  • ターミナル上でのエージェント作業(ファイル操作、ビルド、デプロイ)
  • Computer Use(デスクトップ操作の自動化)
  • トークン効率が重要な大量バッチ処理
  • ブラウジングを含む情報収集タスク

Opus 4.7を選ぶべき場面:

  • 既存コードベースのバグ修正・リファクタリング
  • コードレビュー・PR分析
  • 長大なコンテキストを入力する必要があるタスク
  • MCPサーバーの構築・連携

両方使える環境にあるなら、タスクの性質で切り替えるのが現時点では最適解だ。Cursor 3やWindsurf Wave 13のようなマルチモデル対応IDEが増えている背景には、まさにこの「1つのモデルで全部は無理」という現実がある。

そしてもう一つ。2日前にリリースされたDeepSeek V4が、両モデルの約6分の1の料金で「ほぼ同等」のスコアを叩き出している。フロンティアの争いは激しいが、コスト効率の戦いはまた別のレイヤーで起きている。

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