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Googleが“株でチップを買う”異例の契約 — Marvellへの1.8兆円ワラントが狙うNVIDIA外し

チップを買うのに、現金ではなく「自社が相手の株を買える権利」を対価にする——そんな契約を、Googleが結んだ。

8月19日、半導体大手のMarvellが、Googleに対して同社株を最大**122億ドル(約1.8兆円)**分購入できるワラント(新株予約権)を付与したと明らかになった。取引契約自体は7月29日に締結済みで、対象はGoogleのTPU(Tensor Processing Unit)エコシステム向けのカスタム半導体だ。発表を受けてMarvellの株価は8〜12%跳ね上がった。

一見すると金融ニュースだが、これはAIインフラの主導権をめぐる話でもある。

「株で払う」契約の中身

ワラントの条件はかなり具体的だ。Googleは約5900万株を、1株あたり206.58ドルで買える権利を得る。ただしこの権利は一度に確定するわけではない。初年度に確定するのはわずか140万株ほどで、残りはGoogleが5億ドル分のチップを買うごとに段階的にアンロックされていく仕組みになっている。

つまりMarvellから見れば、Googleがチップを買えば買うほど、Googleに自社株を安く渡す約束をした、ということだ。逆にGoogleから見れば、大量発注を続ければ続けるほど、成長するMarvell株を仕込める。両者の利害を「発注量」で縛りつける構造になっている。

このディールが最大限まで進めば、2033年度までにMarvellにおよそ**1200億ドル(約18兆円)**の売上をもたらす可能性があるという。桁が大きすぎて実感が湧きにくいが、それだけGoogleがTPU向けチップを長期・大量に買い続ける前提だと読める。

なぜGoogleはここまでするのか

答えはシンプルで、NVIDIAへの一極依存を薄めたいからだ。

いまAI学習・推論の計算基盤は、NVIDIAのGPUがほぼ独占している。GoogleはずっとTPUという自前のAIチップを開発してきたが、その設計・製造を支えるパートナーを増やすことは、供給の安定と価格交渉力に直結する。今回の対象も、AI推論アクセラレータ、ストレージコントローラ、ネットワークインターフェース、メモリインターフェース、そしてメモリ近接コンピューティングと幅広い。TPUを構成する周辺チップを、まとめてMarvellに委ねる形だ。

注目すべきは、GoogleのカスタムシリコンパートナーがこれまでBroadcom一社に近かった点。今回Marvellが第2の主要パートナーとして加わったことで、Googleは一社依存のリスクも同時に下げている。NVIDIAだけでなく、自陣営の中でも二社体制を敷いてきた、というわけだ。

この動きが意味すること

ここからは筆者の見立てだ。

第一に、AIチップの主戦場が「GPU単体」から「システム全体」へ移るというシグナルだと思う。演算チップだけ速くても、メモリやネットワークが追いつかなければAIは動かない。GoogleがMarvellに任せた領域がまさにその周辺だという点に、次の競争軸が見えている。

第二に、これはユーザーが払うAIコストの話でもある。GoogleがTPU基盤を自前で強化できれば、GeminiやGoogle Cloud上のAIサービスの単価を、NVIDIA価格に振り回されずに設計できる余地が広がる。すぐに値下げが来るわけではないが、中長期でAI利用料の下押し要因になり得る。ここは正直、消費者にとって地味に効いてくるポイントだ。

一方で、警戒しておきたい面もある。「株を報酬にチップを買う」構造は、需要をディール当事者が人為的に固定するという側面を持つ。半導体需要が実需に裏打ちされているのか、それとも巨大テック同士の資本の絡み合いで膨らんでいるのか——AIバブルを心配する声がある今、この種の“循環する取引”は少し慎重に見ておいたほうがいい。

とはいえ、方向性ははっきりしている。NVIDIA一強の構図を崩そうとする動きは、GoogleだけでなくAmazonやMicrosoftでも進んでいる。今回のMarvellとの契約は、その流れを象徴する一手だ。詳しい条件はMarvellの公式サイトや各社の開示資料で今後さらに明らかになっていくだろう。

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