Google Cloud Next 2026直前プレビュー — "Agentic Cloud"に賭けた5つの見どころ

来週の水曜日、4月22日の朝9時(PT)から、ラスベガスのMandalay Bay Convention CenterでGoogle Cloud Next 2026が幕を開ける。
ここ数年の「Cloud Next」は、半分がAzureへの対抗策、もう半分がエンタープライズへのアピールという色が強かった。だが、今年のオープニングキーノートのタイトルは身も蓋もなく「The agentic cloud」。Googleがついに、クラウド事業の看板をまるごと「エージェントのためのインフラ」に張り替えに来る、という宣言だ。
記事公開時点で発表済みの情報をかき集めつつ、「当日これが出たら熱い」ポイントを整理しておきたい。当日の時点で古くなっていたらすまないが、逆に言えば、この先1週間が「事前に頭を整理しておく」最後のタイミングでもある。
開催概要
- 会期: 2026年4月22日(水)〜24日(金)
- 会場: Mandalay Bay Convention Center, Las Vegas
- オープニングキーノート: 4月22日 9:00〜10:30 PT — Thomas Kurian(Google Cloud CEO)+ Sundar Pichai(Google / Alphabet CEO)
- デベロッパーキーノート: 4月23日 10:30〜11:45 PT — タイトル「Get real: Agents in the autonomous era」
- セッション数: 事前に公開されているセッションライブラリだけで数百件
Sundar Pichai自ら登壇する年は、過去の傾向からしても「全社としての大玉発表がある年」だ。2023年はDuet AI、2024年はGeminiの本格展開、2025年がAgentspaceだった。2026年は、正直に言ってそのどれよりも濃い内容になりそうな気配がある。
見どころ1: 7世代TPU "Ironwood" の本格投入
Google Cloud Next 2026の土台を支える最大のファクトが、7世代TPU「Ironwood」だ。
公式のプレスリリースでは「高ボリューム・低レイテンシのAI推論で4倍のパフォーマンス向上」と謳われていて、これをベースにした「Google Cloud AI Hypercomputer」が今回のキーノートの目玉に据えられている。狙いはシンプルで、「LLM推論のコストを下げる競争」にTPU側から一撃を入れる、というものだ。
AWSのTrainium 2、NVIDIAのBlackwell、最近だとOpenAI内製チップの噂まで含めると、AIインフラ層の地殻変動は2026年に一気に表面化している。その中でTPUが「4倍の推論性能」を武器に攻めに出る意味は大きい。GeminiモデルをAPIで使う側の企業にとっても、これは「Gemini 3 Proの値下げ余地」に直結する話だ。キーノートで何らかの料金調整の発表があるかどうかは、個人的に一番注目しているポイントでもある。
見どころ2: エージェント基盤の一気通貫化
もうひとつの看板が、エージェント基盤の全面刷新だ。
事前に公開されている情報を整理すると、今年のCloud Nextでは以下のレイヤーがまとめて発表される見込みになっている。
- Agent Development Kit (ADK) — 60以上のパートナーが参加するOSSのエージェント開発キット
- 用途別エージェントスイート — データサイエンス、データ分析、Deep Research、コーディング、サイバーセキュリティ、カスタマーサービス、カスタマーエンゲージメントなどに特化したエージェント
- Agentspace の進化版 — 昨年発表された社内向けエージェントプラットフォームの後継
ここで大事なのは「Vertex AI単体」や「Agentspace単体」ではなく、モデル・フレームワーク・デプロイ基盤・用途別テンプレートを1枚のスタックとして見せに来ている点だ。言い換えると、Googleは「個別ツールの競争」ではなく「プラットフォームとしての乗り換えコスト」を武器にしようとしている。
これはOpenAIのManaged Agents、AnthropicのClaude Managed Agentsへの直接的なカウンターと読んでいい。3社が同じ方向を向きはじめたタイミングで、Googleだけがインフラから用途別エージェントまで垂直統合している、という構図を作りたい意図が透けて見える。
見どころ3: NVIDIA Vera Rubin NVL72
TPUの話と並行して、NVIDIA側との提携も動いている。事前のティザーでは「NVIDIA Vera Rubin NVL72」のラックスケール構成がGoogle Cloud上に初期導入される見通しが示唆されていた。
Ironwood(TPU)とVera Rubin(GPU)の両方を同じクラウドから引ける、という構図は、顧客から見ると「推論ワークロードはTPU、学習や特殊用途はGPU」という使い分けが1つのクラウド上で完結することを意味する。AWS・Azureが提供しているような「GPU一辺倒ではない選択肢」を、ついにGoogle Cloudが前面に押し出す形だ。
MLインフラを社内で抱える大企業にとっては、調達戦略がここで一段変わる可能性がある。
見どころ4: 裏テーマ "Gemini 3.5"?
ここからは完全に筆者の予想になるが、Cloud Nextの例年の流れを踏まえると、大型のモデル発表がキーノート内に紛れ込む可能性が高い。Google I/O(5月19日開催)を前にしたタイミングで、Sundar Pichai自ら登壇する会で「Gemini 3.5 Pro」的な名前のアップデートが出る、というシナリオは現時点で十分ありえる。
すでに公開されている情報の中にはモデルバージョン名への言及はないが、以下の状況証拠は揃っている。
- Gemini 3.1 Proのリリースから2ヶ月が経過した
- Deep Thinkが4月にメジャーアップデートされてAPI早期アクセスまで開放された
- OpenAIがGPT-6を4月14日に公開したことで、GoogleがI/Oまで待つモチベーションが薄れた
- Ironwoodインフラ発表と同じ舞台に「その上で動く次世代モデル」を置くのが例年のパターン
もしこの予想が当たれば、LLM市場の勢力図が事実上「Gemini 3.5 Pro ⇔ GPT-6 ⇔ Claude Sonnet 5」の三つ巴に書き換わるタイミングになる。外れたとしても、Vertex AI上の新モデル提供や値下げアナウンスは何らかの形で必ず含まれるだろう。
見どころ5: 日本市場と「グローバルからの温度差」
今年のCloud Nextで、日本の企業にとって注目すべきは「日本語対応のエージェントがどこまで本気で来るか」だ。
3月にAnthropicが東京オフィスを開設し、OpenAIの日本法人も一気に営業攻勢をかけている中、Google Cloud Japanは「パートナーネットワーク+多言語エージェント」で反撃に出るのが自然な流れだ。Agent Development Kitのパートナー60社の中に日本のSIerがどれくらい入っているか、日本語ユースケース事例がどれくらい紹介されるか、は必ずチェックしておきたい点。
特に、金融・製造・官公庁といった「クラウド移行が遅れていた」業界でのエージェント事例が出るかどうかは、日本のエンタープライズAI市場全体の地殻変動を占う材料になる。AWSのre:InventやMicrosoft Igniteで日本語事例が控えめだった中、Cloud Nextで日本語の本気度が示されれば、Google Cloudが一気にエンタープライズAIの本命に躍り出る可能性がある。
当日どこを見ればいいか
最後に、現地に行かなくても情報を追える手段をいくつかまとめておく。
- Google Cloud Blog — キーノートと同時に、主要発表の公式ポスト群が一斉更新される
- YouTubeの Google Cloud チャンネル — キーノートのライブ配信とアーカイブ
- Xの
@GoogleCloudと#GoogleCloudNext— 発表の瞬間に反応が集まる - Session Library — googlecloudevents.com/next-vegas で公開されているセッション一覧。気になるトピックを事前に絞っておくと、当日の情報の洪水に溺れずに済む
個人的には、キーノートそのものよりも「開催2日目以降に出る技術ブログの更新」のほうを楽しみにしている。エンジニアリング側の細かい中身は、だいたいキーノート翌日以降のブログ記事で本気の情報が出てくるからだ。
ひと言だけの予想
2026年はAIインフラ層の「ボトルネックがどこに移るか」が決まる年だと筆者は見ている。計算リソースなのか、エージェントフレームワークなのか、データ接続なのか、用途別の業界ノウハウなのか — 各社がそれぞれの答えを持ち寄ってくる中、今回のGoogle Cloud Nextは「Googleはインフラとエージェントを同時に取りに行く」という回答を出してくる場になるはずだ。
予想が当たるかは来週水曜日の朝にわかる。日本時間だと4月23日(木)の午前1時。起きていられる人は、一次情報をその場で追うことを強くおすすめしたい。
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