Google I/O 2026、全発表を1記事で — Gemini 4からGooglebookまで今年の本気度がわかる
2026年5月19日、Googleは年次開発者カンファレンス「Google I/O 2026」のキーノートをMountain ViewのShoreline Amphitheatreで開催した。

昨年のI/Oも「AIの年」と銘打たれたが、今年はその看板に偽りがない。Geminiがモデルとしてだけでなく、AndroidやChrome、ノートPCにまで浸透する「OSレイヤーとしてのAI」に本格シフトした。発表が多岐にわたるため、カテゴリごとに整理する。
Gemini 4 — 10Mトークンのコンテキストウィンドウ
最大の注目はGemini 4だ。コンテキストウィンドウが1000万トークンに拡大し、100万行を超えるコードベースを1回のAPIコールに丸ごと投入できる計算になる。ネイティブマルチモーダルに対応し、テキスト・画像・動画を前処理なしで扱える。
正直、実効性能はウィンドウの50〜70%程度になるのが大規模コンテキストモデルの通例だが、それでも500〜700万トークンは実用域だ。長大な法律文書の一括分析やリポジトリ全体を見渡したコーディングなど、これまで「分割して入力」していた作業がワンショットで済むようになる。
開発者向けには3つの「アジェンティックコーディング」セッションが用意されており、Gemini 4をバックエンドにしたエージェント構築のベストプラクティスが共有される見込みだ。
Jules V2(Project Jitro)— 「何をしたいか」だけ伝えるコーディングエージェント
Googleの非同期コーディングエージェントJulesがV2にアップグレードされた。内部コードネームは「Project Jitro」。
V1では「このファイルを修正して」と具体的に指示する必要があったが、V2では「テストカバレッジを80%に上げてほしい」「p95レイテンシを30ms削減して」とゴールだけ伝えれば、Julesが自分で変更箇所を特定し、コードを書き、テストを回す。計画段階で人間が承認・修正できるので、完全放置ではなく"目標だけ渡す半自律型"のポジションだ。
Cursor 3やClaude Codeが「エディタ内のペアプログラマー」なら、Jules V2は「バックグラウンドで回るCIのようなエージェント」に近い。棲み分けがはっきりしてきた。
Gemini Intelligence — AndroidがAIで"先回り"する
Gemini IntelligenceはAndroidに組み込まれるAIレイヤーで、単体アプリではなくOS全体に溶け込む設計が特徴だ。
具体的にできること:
- Chrome Auto Browse: Webサイトを自律的にナビゲートし、予約やフォーム入力を代行する。6月下旬からSamsungとPixelに展開
- Autofill進化: Googleアカウントに紐づいた情報から、アプリやブラウザのフォームをインテリジェントに自動入力
- Rambler: Gboardの音声入力で「あー」「えっと」といったフィラーを自動除去し、整ったテキストに変換
- Create My Widget: 自然言語でウィジェットを作れる。「今日のタスクと天気を表示して」と言えばその場で生成
注目すべきは、これが"機能の寄せ集め"ではなく、アプリ横断で文脈を共有する統合レイヤーとして設計されている点だ。メール、カレンダー、メッセージの内容を横断的に理解し、「この会議の前にこの資料を確認しては?」と先回りで提案してくる。便利な反面、Googleにどこまでデータを預けるかという判断はユーザー次第になる。
Googlebook — Chromebookの後継はAIファーストのノートPC
Googleが新カテゴリのノートPC「Googlebook」を発表した。Chromebookの後継に位置付けられ、Acer、ASUS、Dell、HP、Lenovoの5社から今秋発売される。
OSは開発コードネーム「Aluminium OS」と呼ばれていたAndroidベースの新プラットフォーム。ChromeOSの資産(ファイルシステム、ブラウザ統合)とAndroidのアプリエコシステムが統合され、Google Playアプリがネイティブ動作する。
目玉機能はGoogle DeepMindと共同開発したMagic Pointer。カーソルを揺らすとGeminiが起動し、画面上のコンテンツに応じた文脈的提案が表示される。テキストを選択して「要約して」、画像を指して「これは何?」と聞くような操作が、マウスジェスチャーだけで完結する。
筆者が気になるのは、Androidアプリがデスクトップでまともに動くかだ。過去のChromeOS上のAndroidアプリ体験は正直ひどかった。今回はOSレベルでネイティブ統合したと言っているが、マルチウィンドウやキーボード操作のUXがどこまで練られているか、実機を見るまで判断は保留したい。
Android XRグラス — Samsung、XREAL、Warby Parkerと共同開発
AIメガネの本命がようやく姿を見せた。GoogleはSamsung、XREAL、Warby Parker、Gentle Monsterの4社とAndroid XR搭載スマートグラスを共同開発している。
SamsungのAndroid XRグラス(コードネーム「Jinju」)は約50gと軽量で、12MPカメラ、方向性スピーカー、フォトクロミックレンズを搭載。Gemini 2.5 Proがリアルタイム翻訳、ナビゲーション、視覚理解を処理する。XREALの「Project Aura」はより野心的で、70度の視野角を持つ光学シースルー型ヘッドセット。
Warby Parkerは日常使いのデザイン、Gentle Monsterはファッション路線と、用途別に振り分けられている。Meta Ray-Ban一強だった市場に、Googleが本気で殴り込みをかけた形だ。
Android 17 — プライバシー強化とAIウィジェット
Android 17では細かいがユーザーに直接響く改善が多い。
- 位置情報の細粒度制御: アプリが「正確な位置情報」を使えるタイミングを、アプリ使用中の特定タスクに限定できる
- 連絡先アクセスの最小化: アプリが全連絡先ではなく特定の1件だけをリクエストできるAPIが追加
- Pause Point: 画面の使いすぎを検知し、休憩を提案する機能
- 3D絵文字(Noto 3D): 従来の2D絵文字が立体化
- Find Hub: 紛失デバイスを探す機能が強化。生体認証でロックし、紛失マーク付与も可能に
位置情報と連絡先のきめ細かい制御は地味だが重要だ。これまでは「許可する/しない」の二択だったものが、「この操作の時だけ」と条件付きにできるようになった。
Android Auto — Gemini搭載でようやく実用的に
Android AutoがMaterial 3 Expressiveデザインで刷新された。Geminiが深く統合され、メッセージ・メール・カレンダーの文脈を理解した上で返信や質問に応答する。
動画アプリが60fps/フルHD対応になったのは待望の変更だ。さらにDolby Atmosにも対応し、カスタマイズ可能なウィジェットも追加された。車内体験がようやくスマートフォンのレベルに追いつきつつある。
Google Flow + Veo 3.1 — AI映像制作のメインストリーム化
AI映像制作ツール「Flow」がVeo 3.1、Imagen 4、Geminiを統合し、149カ国以上で利用可能になった。テキストからの映像生成、シーン拡張、オブジェクト差し替え、カメラワーク制御がすべてプロンプトで操作できる。
Google AI Proで月100回の生成、AI UltraではVeo 3のネイティブ音声生成(環境音やキャラクターのセリフ付き)が使える。Flowの登場以来、15億以上の画像・動画が生成されたという数字が、クリエイティブAIの需要の大きさを物語っている。
開発者向けまとめ
- Gemini 4 API: 10Mトークン、ネイティブマルチモーダル、アジェンティックコーディング対応
- Jules V2: ゴール指向の非同期コーディングエージェント
- Android Studio AI: Gemini統合の強化、Firebase連携
- Google AI Studio: Tab-Tab-Tab機能によるプロトタイピング加速
筆者の所感
今年のI/Oで最も印象的だったのは、Geminiが「モデル」から「インフラ」になったことだ。Android、Chrome、ノートPC、車、メガネ。Geminiがどこにでもいる世界を、Googleは本気で作ろうとしている。
ただ、そのビジョンが実現するかは別の話だ。Chromebook上のAndroidアプリ、Google Glassの失敗、Google+の消滅——Googleには壮大なビジョンを打ち出しては中途半端に終わらせてきた歴史がある。Googlebook、Android XRグラス、Gemini Intelligenceのそれぞれが、実際のユーザー体験としてどこまで完成度を保てるか。秋の発売を待って判断したい。
一方、Gemini 4の10Mトークンコンテキストは開発者にとっては即座にインパクトがある。大規模コードベースの一括解析やリポジトリ全体を見渡したリファクタリングが現実的になる。APIが公開され次第、試す価値は十分にある。
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