Googleの音楽AIが本気になった — Flow MusicとLyria 3 Proで変わるDTMの入口
SunoやUdioがAI音楽のブームを作った。でもGoogleが静かに後ろから追い抜こうとしている。
Google Flow Musicは、Googleが2026年2月に買収したProducerAIをリブランドして生まれたAI音楽生成プラットフォームだ。Google I/O 2026で大幅アップデートが発表され、最新の音楽生成モデルLyria 3 Proを搭載している。
Sunoは「テキストから曲を作る」で市場を切り開いた。Flow Musicは「曲を作ってから編集する」まで1つのプラットフォームでやろうとしている。
テキストから曲、そしてその先へ
基本的な使い方はSunoと同じだ。プロンプトを入力すると、フルレングスの楽曲が生成される。ジャンル、ムード、楽器の指定もできる。ここまではどのAI音楽ツールも同じ。
Flow Musicが違うのは、生成した後の編集機能が充実していることだ。
セクション単位でのAI編集ができる。イントロだけやり直す、サビのビートを変える、ブリッジを丸ごと再生成する——こうした部分的な修正がプロンプトで指示できる。Sunoの場合、気に入らない部分があれば曲全体を再生成するか、外部のDAWに持ち出す必要があった。
AIカバー機能も面白い。既存の曲のスタイルを変換しつつ、メロディと構造は保持する。ポップスをローファイ・ヒップホップに、クラシックをエレクトロニカに。リミックスの制作がプロンプト1つで完了する。
Lyria 3 Pro — Googleの音楽モデルの現在地
Flow Musicの裏で動いているのがLyria 3 Proだ。Googleの音楽生成モデルの最新版で、最大3分の楽曲を構造的に生成できる。
I/O 2026で追加されたのがFlow Agent。マルチステップのクリエイティブタスクを1セッションで処理する。「アップテンポのジャズを3バージョン作って、それぞれにミュージックビデオを付けて」といった複合的な指示を、手動で1つずつやらなくていい。
Nano Bananaという画像生成エンジンもFlow内に統合された。カバーアートやビジュアル素材をワークスペース内で生成できるため、曲 → アートワーク → ミュージックビデオまでFlow Musicの中だけで完結する。正直、このパイプラインの一貫性はSunoやUdioにはない強みだ。
料金はクレジット制
Flow Musicはクレジット制で、無料枠もある。
無料のStarterプランは毎日のクレジット補充つきで、試すだけなら十分。有料プランはCreator(月約3,000クレジット ≒ 600曲)、Professional(10,000クレジット ≒ 2,000曲)、Studio(30,000クレジット ≒ 6,000曲)の3段階。
GoogleのAI Plus / Pro / Ultraプランに加入していれば、Geminiアプリ経由でもLyria 3 Proを使える。Ultraなら最高の利用上限と早期アクセスが付く。
具体的な月額はプラン選択ページで変動があるため、公式の料金ページで確認するのが確実だ。
Suno・Udioと何が違うのか
現時点でのAI音楽ツールの勢力図はSuno、Udio、そしてFlow Musicの三つ巴になりつつある。
Sunoの強みはシンプルさとコミュニティだ。プロンプトを入れれば曲ができる、という体験が磨き上げられている。Udioは音質の高さで評価が高い。
Flow Musicの差別化ポイントは3つ。セクション単位の編集、Google製ツールとの統合(画像生成、動画生成、AIエージェント)、そしてiOS/Androidアプリによるモバイル対応。特にVeo 3と組み合わせたミュージックビデオの自動生成は、SunoやUdioにはまだない機能だ。
ただし、Sunoのコミュニティ機能やUdioの音質面での評価にはまだ追いつけていない印象がある。生成される楽曲の「味」というか個性は、Sunoの方がユーザーの期待に近いという声も海外では聞く。
iOSアプリが先行、Androidは後追い
Flow MusicのiOSアプリはすでにApp Storeに出ている。Android版は後日リリース予定。GoogleのサービスなのにiOSが先というのは少し意外だが、ProducerAI時代の資産を引き継いだ結果だろう。
モバイルで曲を作り、Webで本格編集するというワークフローは悪くない。電車の中で思いついたメロディのアイデアをプロンプトで形にし、帰宅後にPC版で仕上げる——そんな使い方が現実的になった。
音楽制作の敷居がまた下がった
Flow Musicが本当に変えるのは、プロの音楽制作というよりも「音楽を作ってみたい」と思った人の最初の一歩だ。
動画制作者がBGMを自分で作る、ポッドキャスターがジングルを生成する、ゲーム開発者がプロトタイプ用のサウンドトラックを数分で用意する。こうしたユースケースでは、DAWを学ぶコストを丸ごとスキップできる。
Googleのエコシステムに乗っていることの意味は大きい。YouTube Musicとの連携、Google Driveでの保存、Geminiとの対話——これらが繋がれば、音楽制作は「専門作業」から「日常の延長」に変わっていく可能性がある。
関連記事
Suno v6が登場 -- 3つのモデルと「言葉で曲を編集」で何が変わるのか
Suno v6スイート(v6 / v6-wild / v6-mini)が公開。Warner・BMGとの共同開発で著作権的にクリーンなモデルへ。既存曲の自然言語編集や料金、v5.5からの変更点と旧モデル廃止の影響を整理する。
Alibabaがプロンプトから丸ごと1曲を作るAIを公開 — 音楽生成「HappyShrimp」の狙い
Alibabaが公開したテキスト→楽曲のAI音楽モデルHappyShrimp(快乐小虾)を解説。曲を最初から丸ごと設計する仕組み、対応ジャンル、Taihe Musicとの提携、Suno等との違いをまとめる。
Sunoで弾いたMIDIが、そのままAIへの"発注書"になる — ブラウザDAW「Studio 2.0」を触ってみた
SunoのブラウザDAW「Studio」が2.0に。MIDI録音・ピアノロール編集、MIDIを生成プロンプトに使う機能、チャットで作る自作プラグイン、32bit/48kHz無制限書き出しを、DTM視点でレビューする。