Slackで絵文字を押すとCursorが勝手にバグを直す — v3.8 Automationsの新トリガー
Cursorの社内PRの30〜35%は、もう人間が書いていない。
クラウドエージェントが自律的にコードを書き、テストし、PRを出す。6月18日にリリースされたCursor v3.8のAutomationsアップデートは、その「人間が介在しないコーディング」のトリガーをさらに広げた。GitHub PRのレビューコメント、GitHub Actionsの完了通知、Slackメッセージへの絵文字リアクション。これらのイベントをきっかけに、エージェントが勝手に動き出す。
/automateスキル — 自然言語で自動化を設定する
v3.8の目玉は/automateスキルだ。ローカルのエージェントセッションで、自動化したいことを自然言語で書く。するとCursorがトリガー、命令、ツール構成をまとめて組み立ててくれる。
「PRにレビューコメントが付いたら、指摘内容を自動修正してコミットしてほしい」と書けば、GitHub PR review commentトリガーを設定し、修正用のインストラクションを組み立て、必要なMCPツールを接続する。フォームでトリガーを手動設定していた手間が消えた。
3月のAutomationsローンチ時点では、この設定の煩雑さが最大のハードルだった。「何ができるかは分かるけど、設定が面倒」という声が多かったのを受けての改善だろう。
5つの新GitHubトリガー
今回追加されたGitHubトリガーは以下の5つ。
- Issue comment — PRではない通常のIssueにコメントが付いたとき
- PR review comment — PRのdiffにインラインコメントが入ったとき
- PR review submitted — PRレビュー全体が送信されたとき
- Review thread updated — PRのレビュースレッドが解決/未解決に変更されたとき
- Workflow run completed — GitHub Actionsのワークフロー実行が完了したとき
3月時点でサポートされていたのは「PRがマージされたとき」「Slackメッセージ」「Linear Issue作成」「PagerDutyインシデント」「Webhook」の5種類。今回の追加で、GitHub上の主要なイベントはほぼカバーされた。
なかでもWorkflow run completedが強力だ。CIが失敗したらエージェントが自動でトリアージを始める——という流れが、テンプレートひとつで動く。マーケットプレイスには「失敗したGitHub Actionsのトリアージ」と「PRレビューコメントの自動修正」が追加されている。
Slackの絵文字リアクション = トリガー
Slack連携も変わった。Slackメッセージに特定の絵文字でリアクションすると、それがトリガーになってAutomationが起動する。
Cursor社内ではこの仕組みが実際に使われている。たとえば脆弱性の報告がSlackに投稿されたら、指定の絵文字でリアクション。エージェントがその報告を読み取り、HTMLのエクスプロイトページを生成し、バックエンドサーバーを起動し、ブラウザで動作を確認してスクリーンショットを撮り、デモHTMLをリポジトリにコミットする。人間がやったのは、絵文字を押しただけだ。
トリガーとなったSlackメッセージには完了後にステータス絵文字(✅)が自動で付く。コミュニティフォーラムでは「この絵文字を無効にしたい」という要望も出ていて、小さなことだが、実際に使い込まれている証拠だと思う。
Computer Use — エージェントが自分の画面を持つ
v3.8ではComputer Useが全Automationでデフォルト有効になった。
クラウドエージェントはそれぞれが独立したVM(仮想マシン)のなかで動く。VMにはデスクトップ環境、VNC、Chromeが含まれている。エージェントはマウスとキーボードでアプリを操作し、開発サーバーを立ち上げ、ブラウザでUIを確認し、スクリーンショットや動画をPRに添付できる。インストラクションに「作業のデモを含めて」と一行書くだけでいい。
これが意味するのは、レビュアーがブランチをチェックアウトしなくても動作を確認できるということだ。「本当に動くの?」をPRの説明欄で見られる。コードレビューのボトルネックが一つ減る。
ただし、Cursor自身が認めているように、現状のAIモデルはComputer Useを完全に自律でこなせるほど成熟していない。専用のサブエージェントとカスタムプロンプティングで精度を補っている。どんなUIでも操作できる汎用ツールというより、開発ワークフローに最適化された仕組みと理解するほうが正確だ。
料金
AutomationsはProプラン(月額$20、約3,000円)から利用できる。別途アドオンの購入は不要。
| プラン | 月額 | Automations |
|---|---|---|
| Hobby(無料) | $0 | 利用不可 |
| Pro | $20(約3,000円) | ✓ |
| Pro+ | $60(約9,000円) | ✓(3倍のクレジット) |
| Ultra | $200(約30,000円) | ✓(20倍のクレジット) |
| Business | $40/ユーザー(約6,000円) | ✓ + チーム管理機能 |
Automationsの実行はクレジットを消費する。プラン料金がそのまま月間クレジットプールになるため、Pro($20)ならクレジットも$20分。Computer Useを含むマルチステップのエージェント実行はクレジット消費が大きいので、常用するならPro+以上が現実的だろう。
Bugbot(自動PRレビュー)は別料金で$40/ユーザー/月。AutomationsとBugbotは別機能なので混同に注意。
「エージェントの起動」が人間依存でなくなること
v3.8のインパクトを一言にすると、エージェントが動き出すきっかけを人間のプロンプト入力に限定しなくなったことだ。
PRにレビューコメントが付く → エージェントが修正する。CIが落ちる → エージェントがトリアージする。Slackで報告が来る → エージェントが調査を始める。人間は結果を確認するだけ。
もちろん、すべてのタスクにこれが適用できるわけではない。複雑な設計判断、要件の解釈、ビジネスロジックの変更は人間の仕事のままだ。しかし「レビューコメントへの対応」「CI失敗のトリアージ」「セキュリティスキャン」のような、パターンが明確で反復的なタスクは、もうエージェントに任せて問題ないレベルに来ている。
Cursorの社内PRの30〜35%がエージェント製という数字がそれを示している。ただし、Cursor社のコードベースは長年かけてエージェントフレンドリーに整備されてきた。一般的なレガシーコードベースで同じ比率は、まだ難しい。
それでも、まずはCIの失敗トリアージや定型的なレビュー対応から始めてみる価値はある。設定は/automateで一言書くだけだ。
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