Codexが「ほぼ何でもやる」と言い出した — Mac操作・メモリ・90プラグインの全容
「Codex for (almost) everything」。

4月16日、OpenAIがCodexのアップデートに付けたタイトルがこれだ。コーディングエージェントとして使っていたツールに「ほぼ何でもやる」と名付けるのは、控えめに言って大胆な方向転換に見える。
実際にアップデート内容を一つずつ見ていくと、タイトルに負けていない変化量がある。Mac上のアプリを勝手に操作し、Webページに赤入れしてエージェントに指示を出し、画像も作り、しかも前回の会話内容を覚えている。週300万人が使っているコーディングツールが、突然コードの外に飛び出した。
Computer Use — バックグラウンドで「もう一人の自分」が動く
一番インパクトが大きいのはComputer Useだろう。Codexが自分専用のカーソルを持ち、macOS上の任意のアプリを見て、クリックして、タイプできるようになった。
ポイントは「バックグラウンド」で動くこと。自分がSlackでやり取りしている間に、Codexが別のカーソルでFigmaを開いてスクリーンショットを撮り、Excelにデータを貼り、ターミナルでテストを走らせる——という動きが物理的に可能になる。複数のエージェントを同時に走らせることもできるので、ひとつのMacの上で3つの作業を並列に進めることすらできる。
ただし現時点ではmacOS限定。Windowsはデスクトップアプリ自体は使えるが、このバックグラウンドのカーソル操作はまだ来ていない。EU・UKへの提供もこれから。率直に言えば、Claude Coworkのリモートデスクトップ方式と比べると対象ユーザーが限られる。だがMacStoriesが「テストした中で最高のComputer Use」と書いた実装品質は、この制約を差し引いても注目に値する。
内蔵ブラウザ — 「ここ直して」を指差しで伝える
地味だが実用度が高いのが、Codexアプリ内に組み込まれたブラウザだ。Webページを開き、特定の要素を指して「この部分のテキストを変えて」「このフォームのバリデーションを追加して」とコメントを書ける。
従来はスクリーンショットを撮ってチャットに貼り、「この画面の3番目のボタンを〜」と言葉で伝えていた。それが「赤入れ」に変わる。フロントエンド開発で一番もどかしかった「画面の話をテキストで伝える」工程が一段楽になる。
メモリプレビュー — セッションの壁が消え始めた
AIコーディングツール全体が抱えてきた構造的な問題がある。新しいセッションを開くたびに、コードベースの説明から始めなければならないこと。プロジェクトの規約、好みのライブラリ、過去に試して失敗したアプローチ——毎回ゼロから伝え直すのは本当に面倒だった。
Codexのメモリプレビューはここに踏み込む。過去のセッションで学んだ個人設定、修正内容、調査に時間がかかった情報を記憶し、次回以降のセッションに引き継ぐ。まだ「プレビュー」の段階だが、方向性として正しい。
Claude Codeの/memoryやCursorのRulesファイルと比べると、Codexのアプローチは「ユーザーが意識的に書き込む」のではなく「勝手に覚える」方向だ。手間がない反面、何を覚えているかの透明性が課題になるだろう。
90超の新プラグイン — 開発ツールチェーンを全部つなぐ意思
プラグインの追加は地味に見えるが、数がすごい。CircleCI、GitLab Issues、Microsoft Suite、CodeRabbit、Atlassian Rovo、Neon by Databricks、Remotion、Renderなど90以上が一気に加わった。
これはCodexを「1つのモデルが1つのコードを書く」存在から、「開発ワークフロー全体を監督するハブ」に変えたいという意志表示だ。CIの結果を拾ってきてバグを直し、PRのレビューコメントに返信し、デプロイまで見届ける。MCP(Model Context Protocol)経由のカスタム接続も合わせると、ほぼどんなツールとも繋がる。
CursorがMarketplaceで30以上のプラグインを展開し始めた直後のタイミングでもある。プラグインエコシステムの争いは本格化している。
自動化の進化 — 寝ている間に仕事が進む
Automationsの拡張も見逃せない。Codexが自分で次のタスクをスケジュールし、複数日にまたがるワークロードを自律的に再開できるようになった。既存の会話スレッドをオートメーションに再利用することもできる。
たとえば「毎朝9時にこのリポジトリのdependabotアラートを確認して、セキュリティパッチのPRを出しておいて」のような継続的な指示が可能になる。CursorのAutomationsがSlack・GitHub・PagerDuty連携で先行していた領域に、Codexが追いついた格好だ。
画像生成とSSH — 守備範囲の拡張
gpt-image-1.5を使った画像生成がワークフローに統合された。UIのモックアップやアイコン作成をコーディングセッションの中で完結できる。デザイナーに「ここの画像だけ先にください」と頼む手間が一つ減る。
リモートdevboxへのSSH接続もアルファ版で追加された。ローカルのMacを使わず、クラウド上の開発環境にCodexを繋いで作業させられる。本番環境に近いLinuxマシンでの動作確認が、Codexの画面内で完結する将来が見えてくる。
OpenAIの本当の狙い — ChatGPT、Codex、どちらがスーパーアプリになるのか
Engadgetがこのアップデートを「OpenAIの次期スーパーアプリの土台」と表現したのは的確だ。OpenAIはChatGPTとCodexという2つのクライアントアプリを持っているが、機能の重複が増えている。ChatGPTにもコーディング機能が入り、Codexにもチャット・画像生成が入った。
最終的にどちらかに統合するか、それとも「一般ユーザー向けChatGPT」「プロ向けCodex」で棲み分けるのか。今回のアップデートはCodexを「開発者が一日中開いておくアプリ」にしようとしている。コーディングだけでなく、メール対応もリサーチも画像作成もこの中で済ませてほしい——という設計思想が透けて見える。
正直な評価
Computer Useの実装品質は高い。バックグラウンド動作・並列実行という設計判断は、Claude Coworkのフォアグラウンド方式やPerplexity PCのブラウザ中心アプローチとの明確な差別化になっている。
一方で、macOS限定という制約は大きい。メモリはまだプレビュー段階で、何を覚えて何を忘れるかのコントロールが不透明。90超のプラグインも量は立派だが、それぞれの完成度はまちまちだろう。
「ほぼ何でもやる」はまだ宣言の段階であり、実力がそこに追いつくかどうかはこれからの話だ。だが、OpenAIがCodexをコーディングの外に本気で拡張しようとしていることだけは、このアップデートで疑いようがなくなった。
料金は既存のChatGPTプラン(Plus $20/月〜)に含まれる。Computer Useの追加課金もない。「とりあえず触ってみる」ハードルが低いのは、この手の新機能にしては珍しく良心的だ。
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