AI SDR 比較2026 — 11x AI・AiSDR・Artisan・Agent Frank・Clay、営業AIエージェントはどれを選ぶ
「AIが勝手にアポを取ってくる」——AI SDR(AI営業開発担当)というジャンルが、2026年に入って一気に実用段階に入った。リードを探し、メールを書き、返信を捌き、ミーティングを設定する。かつて人間のインサイドセールスがやっていた一連の作業を、エージェントが回す。
ただ、いざ導入しようとすると壁にぶつかる。製品ごとに「どこまで自律的にやるのか」も「いくらかかるのか」もバラバラで、しかも日本語で横並び比較した情報がほとんどない。英語圏はベンダー自身の比較記事だらけで、どれも自社に都合よく書かれている。
この記事では、代表的な5つ——11x AI、AiSDR、Artisan、Agent Frank(Salesforge)、Clay——を、「自律型かコパイロット型か」という運用モデルと、料金・導入のしやすさで整理する。先に結論を言えば、多くの日本のチームにとって最初の一歩は「完全自律型の高額ツール」ではない。
忙しい人向け・30秒で結論
- まず小さく試したい / 公開料金で判断したい → AiSDR。$250/月のSoloプランから始められ、料金が明快。
- 完全自律で大量アウトバウンドを回したい(予算あり) → 11x AI(Alice)。電話まで含めて自律性が高いが、月数千ドル〜。
- メールからLinkedInまで一気通貫で任せたい → Artisan(Ava)。ただし料金は要問い合わせ。
- 人間の承認を残しつつ自動化したい → Agent Frank。オートパイロットとコパイロットを切り替えられる。
- エージェントではなく“燃料”(リストと情報)が欲しい → Clay。これは分類が違う(後述)。
一覧比較表
| ツール | 運用モデル | 月額の目安 | 料金の透明性 | 得意なこと | こんな人に |
|---|---|---|---|---|---|
| 11x AI(Alice) | 完全自律(電話含む) | $3,750〜(年契約・公称) | 低(実勢は要見積もり) | フルオートのアウトバウンド | 予算のある中〜大規模チーム |
| AiSDR | 自律寄り(設定で調整) | $250〜$2,500(四半期課金) | 高(公開・明快) | 高速導入・SMB向け | まず小さく始めたい人 |
| Artisan(Ava) | 完全自律(E2E) | 要問い合わせ(推定$500〜) | 低(セールスゲート) | メール〜LinkedIn一気通貫 | 一気通貫を任せたい人 |
| Agent Frank(Salesforge) | 自律/コパイロット切替 | 要問い合わせ | 中 | 承認フロー付き自動化 | 人の監督を残したい人 |
| Clay | データ/エンリッチ層 | 無料〜$149前後 | 中 | リスト作成・情報補完 | 他ツールの“燃料”が欲しい人 |
※料金は2026年10月時点で公開情報・第三者推定をもとに整理した目安。AI SDR市場は料金をセールス面談でしか開示しないツールが多く、公表値と実勢がずれる。導入前に必ず各社へ見積もりを取ってほしい。
公開料金で判断できる数少ないツールとして、まずはAiSDRの公式ページで自社のリード数に当てはめて試算するのが現実的だ。
この比較の前提(正直に)
断っておくと、この記事は筆者が5製品を本番の営業現場で回して成約率を比べた、という類のものではない。AI SDRは契約単価が月数千ドルに達することも多く、横並びで実運用検証するのは現実的ではないからだ。ここでやっているのは、各社の公開情報・料金ページ・第三者レビューを突き合わせ、運用モデルと料金構造・導入ハードルを揃えて整理することだ。
そのうえで最初に伝えたいのは、この市場の料金はかなり不透明だという事実。たとえば11x AIは公式が「Growthプラン月$3,750(年契約)」と出しているが、第三者レビューは「実勢は月$5,000〜15,000」「年契約は$50,000〜90,000が多い」と報告していて、桁が食い違う。Artisanに至っては公開価格すらなく、推定が月$500から年$40,000まで散らばっている。数字を鵜呑みにせず、必ず自社の条件で見積もりを取るのが前提になる。
まず押さえる分類:自律型・コパイロット型・データ層
製品名を並べる前に、AI SDRは3つの層に分かれると理解しておくと迷わない。
ひとつは完全自律型(オートパイロット)。リード発掘からメール送信・返信対応まで人の手を離れて回る。11x AIやArtisanがここ。強力だが、送る文面を人間が見ないため、トーンがずれて成約率を落とすリスクがつきまとう。
ふたつめがコパイロット型。下書きや提案はAIがやるが、送信やタイミングの最終判断は人間が握る。Agent Frankはオートパイロットとコパイロットを切り替えられるし、AiSDRも設定で自律度を調整できる。日本企業の「まず様子を見たい」文化とは、こちらのほうが相性がいい。
みっつめがデータ/エンリッチ層。Clayがここで、これはSDRエージェントそのものではなく、送る相手のリストを作り、会社情報や連絡先を50以上のソースから補完する“燃料”にあたる。11xやArtisanと競合するものではなく、むしろ併用するものだ。この違いを知らずに「ClayとAiSDRどっち?」と比べると話が噛み合わない。
11x AI(Alice)— フルオートの先駆、ただし高い
AI SDRという言葉を広めた代表格。デジタルワーカー「Alice」がアウトバウンドを丸ごと回し、電話対応まで含めて自律性が高いと評価されている。公式のGrowthは5ユーザー・月2,000プロスペクトで$3,750(年契約)から。
弱点:とにかく高く、料金が不透明。第三者レビューでは実勢が月$5,000超、年契約で数万ドル規模という報告が目立つ。完全自律ゆえ、文面の質を人が見ないことへの不安も残る。小規模チームが最初に触るには重い。
AiSDR — 公開料金で小さく始められる現実解
今回の5つで、料金が最も明快なのがAiSDR。Soloが月$250、Exploreが月$900、Scaleが$2,000前後、エンタープライズは個別。四半期課金で、年払いなら約20%引きという構造だ(出典により$750/$1,500など食い違う記載もあるので、最新は公式で確認を)。導入が速く、リード数の上限が緩い点も小規模チーム向きとされる。
弱点:完全自律型ほどの“全部お任せ”感はなく、ある程度の設定と運用の手間は残る。月単位で気軽に止められない四半期課金も、短期トライアルにはやや不向きだ。
Artisan(Ava)— メールからLinkedInまで一気通貫
AI BDR「Ava」が、リスト作成・エンリッチ・メール・LinkedInアウトリーチまでをエンドツーエンドで自動化する。一気通貫の体験を売りにしている。
弱点:料金が完全にセールスゲートで、公開されていない。第三者推定は月$500〜年$40,000とレンジが広すぎて、事前に予算を組みにくい。クレジットや送信インフラ、メールボックス、電話番号などの追加要素で実費が膨らむ点にも注意がいる。
Agent Frank(Salesforge)— 承認フローを残したい人へ
Salesforgeが提供するAgent Frankは、完全自動の「オートパイロット」と、人間が承認する「コパイロット」の2モードを切り替えられるのが特徴。いきなり全自動に振り切るのが怖いチームが、コパイロットから慣らしていける設計だ。
弱点:公開料金の情報が乏しく、実勢は要問い合わせ。モード切替の柔軟さは裏を返せば「どこまで任せるか」の運用設計を自分で詰める必要がある、ということでもある。
Clay — これは“競合”ではなく“燃料”
繰り返すが、Clayはカテゴリが違う。50以上のデータプロバイダーをウォーターフォールで束ね、精度の高いリストと補完情報を作る。無料枠があり、Starterは月$149前後(これは二次情報で未確認)。11xやAiSDRが「送る人」なら、Clayは「送る相手を用意する人」だ。
たとえば「Clayで業界・従業員規模・直近の資金調達でリストを絞り込み、担当者のメールとLinkedInを補完 → その精度の高いリストをAiSDRやArtisanに流し込んでアウトリーチさせる」という組み合わせが、実務では定番の形になりつつある。リストの質はそのまま返信率に跳ね返るので、ここを疎かにしたままエージェントだけ導入しても成果は出にくい。
弱点:単体では営業活動は完結しない。アウトリーチのエージェントと組み合わせて初めて価値が出る。ここを誤解すると「導入したのに成約が増えない」となる。
用途別・結局どれを選ぶか
- まず試す・公開料金で判断したい小規模チーム:AiSDR。$250のSoloから始められ、効けば上位プランへ。
- 予算があり、完全自律で量を出したい:11x AI。ただし見積もりは覚悟する。
- メールもLinkedInも一気通貫で任せたい:Artisan。価格は要問い合わせ前提で。
- 人間の承認を残して慣らしたい:Agent Frankのコパイロットモード。
- そもそもリストが弱い:先にClayでデータ基盤を整える。
電話での一次架電まで自動化したいなら、AI音声エージェントで架電を回すLeaping AIのような選択肢や、温かいリードに絞るFuzzy AIのアプローチもあわせて検討したい。CRM側で完結させたいならHubSpotのエージェント機能やSalesforce Agentforceという道もある。
競合記事とは逆の、あえての推し
英語圏の比較記事は、たいてい「最も自律性が高いのは11x」「Avaはオールインワン」と、完全自律型を上位に推す。だが筆者の見立ては逆だ。多くの日本のチームが最初に選ぶべきは、完全自律の高額ツールではなく、**AiSDRのような“公開料金で小さく始められるコパイロット寄り”**だと思う。
理由は2つ。ひとつは、AI SDRは文面のトーンや日本語の自然さが成約率を大きく左右し、完全自動で人が文面を見ない運用は、日本語の商習慣では事故りやすい。もうひとつは、料金が不透明な高額ツールを検証なしで年契約するのはリスクが高すぎる。月$250で始めて、効果を見ながら自律度と予算を上げていく——この順番のほうが、たいていの現場では失敗しない。
まずはAiSDRの公式ページで自社のリード規模に当てはめ、小さく回してみることをおすすめする。そこで手応えを掴んでから、11xやArtisanのような上位ツールの見積もりを取っても遅くない。
まとめ
AI SDRは「人を置き換える完全自律型」から「人を補助するコパイロット型」、そして「リストを作るデータ層」まで、層で理解すると選びやすくなる。市場全体として料金がまだ不透明なので、公表値を出発点にしつつ、最終判断は必ず自社条件での見積もりで固めてほしい。
派手な「全自動」に飛びつく前に、自分たちが本当に自動化したいのはどの工程なのか——そこを見極めるのが、遠回りに見えて一番の近道になる。
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