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AIにPCを丸ごと任せるツール、1週間で5つ出そろった — 機能・料金・制約を全比較

2026年4月14日から18日までの5日間で、OpenAI、Anthropic、Perplexity、xAIが相次いでデスクトップ操作AIをリリースまたはアップデートした。オープンソースのOpenClawを加えると、「AIにパソコンの操作を任せる」選択肢が一気に5つになった。

偶然ではないだろう。各社がほぼ同時に踏み込んだということは、この領域がいよいよ実用段階に入ったと業界全体が判断したということだ。

ただ、5つのアプローチは驚くほど違う。料金は月額0円から4万5千円まで開きがあり、操作方式も「APIで連携する」「画面のピクセルを読む」「ローカルで完結する」とバラバラ。どれを選ぶかで、できることもリスクも大きく変わる。

5製品の全体像

まず、何を比較しているのかを整理する。

製品 提供元 リリース 月額料金 対応OS
Codex Computer Use OpenAI 2026年4月16日 $100〜200(約1.5〜3万円) macOS(Windows版はCU非対応)
Claude Cowork Anthropic 2026年4月9日 GA $20〜(約3,000円〜) macOS / Windows
Perplexity Personal Computer Perplexity 2026年4月16日 $200(約3万円) macOS
Grok Computer xAI 2026年4月13日 β $300(約4.5万円) macOS / Windows
OpenClaw OSS 継続更新中 無料(マネージド版$59/月) macOS / Windows / Linux

5つとも「AIがユーザーの代わりにPCを操作する」製品だが、設計思想がまったく違う。その違いを掘り下げる。

操作方式の違い — ここが最大の分岐点

デスクトップエージェントを比較するうえで、最も重要なのは「どうやってアプリを操作するか」だ。

Codex Computer Useは、画面を認識しつつ独自のカーソルでアプリを操作する。ユーザーが作業している横で、AIが別のカーソルを動かして並行作業する設計。複数エージェントを同時に走らせても、ユーザーの操作を邪魔しない。加えて90以上のプラグイン(Atlassian、CircleCI、GitLab、Microsoft Suiteなど)でAPI連携も併用する。

Claude Coworkは、Anthropicが開発したComputer Use APIを経由してアプリを操作する。ファイルシステムへの直接アクセス、ドキュメント生成、フォルダ整理が中心。非エンジニアが「同僚に頼む感覚で」使えることを最優先にした設計で、技術的な知識はほぼ不要。

Perplexity Personal Computerは、ネイティブMacアプリ(Mail、カレンダー、Finder、Messages)に直接アクセスする方式。タスクの性質に応じて19以上のAIモデルを自動で使い分けるマルチモデルアーキテクチャが特徴。Mac miniに常駐させて24時間稼働させる運用を公式が推奨している。

Grok Computerは、完全にピクセルベース。画面映像を直接処理し、人間と同じように「見て、クリックして、タイプする」。APIもアクセシビリティ情報も使わない。直近5秒間の画面を常時分析し、アプリの状態を追いかけながら操作する。

OpenClawは、メッセージングアプリ(WhatsApp、Telegram、Slack、iMessageなど50以上)をインターフェースとして使う。基本は「チャットで指示を出すと、ローカルのAIが処理する」スタイルだが、Desktop Control Skillを追加すればOpenCVベースの画面認識でマウス操作・キーボード入力・スクリーンキャプチャも可能。ただし商用製品ほど洗練されてはいない。

この違いが意味することは明確だ。APIのないレガシーソフトを操作したいならGrok Computerの一択。AppleのネイティブアプリをフルにAI化したいならPerplexity。プラグインエコシステムで拡張したいならCodex。技術に不慣れな人が今日から使いたいならClaude Cowork。クラウドにデータを送りたくないならOpenClaw。

料金を本気で比べる

料金体系は各社で大きく異なる。

Codex: Proプラン(月額$100 / 約1.5万円)からComputer Use機能が利用可能で、Plusプランの5倍の利用枠がつく。Pro Ultraプラン($200 / 約3万円)なら20倍。Plusプラン($20)ではコーディング支援のみ。Windows版も3月からあるが、Computer UseはmacOS限定。

Claude Cowork: Proプラン(月額$20 / 約3,000円)から利用可能。Maxプラン($100 / 約1.5万円)でより多くの利用枠。Teamプラン($25/ユーザー)で共有機能。最も低い金額で始められる。

Perplexity Personal Computer: Maxプラン限定で月額$200(約3万円)。Proプラン($20)では使えない。Mac miniを24時間稼働させる想定で、電気代は月数百円。

Grok Computer: SuperGrok Heavyプラン(月額$300 / 約4.5万円)。現在プライベートベータ中。5製品中で最も高い。

OpenClaw: セルフホストなら完全無料(LLMのAPI料金のみ自己負担。ローカルモデルを使えば0円)。マネージド版のOpenClaw Cloudは月額$59(約8,850円)。セルフホストにはNode.jsの知識が必要。

年間コストで計算すると、Claude Cowork Proが約3.6万円、Codex Proが約18万円、Perplexity MaxとCodex Pro Ultraが約36万円、Grok Computer Heavyが約54万円。この差は無視できない。

正直なところ、Claude Coworkの$20スタートは戦略的に正しいと思う。デスクトップエージェントはまだ新しいカテゴリで、ユーザーが「何にいくら払えるか」の相場観がない。低価格で入口を広げて、体験してもらってから上位プランに誘導する設計は理にかなっている。

何ができて、何ができないか

機能を並べるだけでは選べない。「何が得意で、何が苦手か」を整理する。

Codex Computer Use

得意: 開発ワークフロー全体の自動化。PR確認、ターミナル操作、SSHデバイス接続、フロントエンドのプレビュー。90以上のプラグインでサードパーティツールとも連携できる。画像生成機能でUIモックアップも作れる。 苦手: Computer UseはmacOS限定。Windowsユーザーは蚊帳の外。非エンジニアには機能過多。月$100からとはいえ、試すだけでもそれなりの出費。

Claude Cowork

得意: ファイル整理、議事録の要約、レポート作成など「オフィスワーク」。ドラッグ&ドロップのワークスペースで複数セッションを同時管理。Windowsにも対応。 苦手: Computer Useの操作範囲は限定的。ブラウザ操作やサードパーティアプリとの連携はCodexほど深くない。

Perplexity Personal Computer

得意: 検索とアクションの統合。「先月のクレカ明細を分析して」のような、情報収集と処理を一気通貫で実行。iPhoneからリモートで指示を出せる。Mac miniで24時間放置運用が可能。 苦手: Mac限定。Perplexityの検索エコシステムに依存するため、他社LLMとの組み合わせ自由度は低い。プライバシー訴訟を抱えている点も気になる。

Grok Computer

得意: 理論上、どんなソフトウェアでも操作可能。APIのないレガシーシステム、社内専用ツール、古いデスクトップアプリもカバー。 苦手: ピクセルベースゆえに操作精度が画面認識の品質に依存。UIレイアウトの変更やポップアップに弱い。月$300かつベータ段階。

OpenClaw

得意: 完全ローカル稼働でプライバシー最強。メッセージングアプリ50以上に対応。無料。カスタマイズの自由度が高い。 苦手: セットアップに技術知識が必要。Desktop Control Skillはあるが商用製品ほど安定していない。セキュリティ脆弱性の報告歴あり(改名騒動、偽トークン事件)。Anthropicが定額プランでの利用を禁止した前例もある。

結局、誰が何を選ぶべきか

使う人と目的で切り分けるのが一番わかりやすい。

エンジニアで、開発ワークフローを自動化したい → Codex Computer Use。PR、テスト、デプロイ、SSHまで一気通貫。プラグインエコシステムも開発者向け。

非エンジニアで、日常のオフィスワークをAIに任せたい → Claude Cowork。月$20から始められて、ファイル操作とドキュメント作成に特化。Windowsも対応。

情報収集と分析を丸ごと自動化したい → Perplexity Personal Computer。検索とアクションの統合が他にない強み。Mac mini常駐で「夜中に勝手にリサーチ」も可能。

APIのないレガシーソフトを自動化したい → Grok Computer。ピクセルベースの操作は唯一無二。ただしベータ段階で$300。待てるなら待つのも手。

データをクラウドに送りたくない → OpenClaw。完全ローカル、完全無料。ただしGUI操作ではなくチャット経由のバックエンド自動化が中心。

見落とされがちなリスク

5製品すべてに共通するリスクがある。AIにPCを操作させるということは、そのAIがPC上のすべてのデータにアクセスできるということだ。

Codex、Claude Cowork、Perplexity、Grok Computerはいずれもクラウドにデータを送信する。操作内容がモデルの学習に使われるかどうか、各社のポリシーを確認する必要がある。特に業務データを扱う場合、情報セキュリティ部門との調整は必須だろう。

OpenClawはローカル完結だが、セキュリティ監査を受けたわけではない。OSSの利点はコードが公開されていることだが、351,000スターのプロジェクトでも脆弱性は見つかっている。

もう一つ。これらのツールが「間違った操作をした場合」の取り消しは簡単ではない。メールを誤送信した、ファイルを削除した、APIを叩きすぎた——人間の操作ミスなら「元に戻す」で済むが、AIが自律的に行った操作は、そもそも何をしたのか把握するところから始めなければならない。

この1週間が意味すること

5製品が同じ週にぶつかったのは、技術の成熟以上に「市場の確信」を示している。各社はこのカテゴリが立ち上がると確信し、先行者利益を取りに来た。

まだカテゴリとしては黎明期だ。操作精度、セキュリティ、プライバシー、料金設計——すべてが今後数ヶ月で大きく動くだろう。だから今の時点で「これが正解」と断言するのは難しい。

ただ、一つだけ確かなことがある。1年前は「AIにPC操作を任せる」という発想自体がSF的だった。今週、それが月額3,000円から試せるようになった。この速度感が、2026年のAI業界そのものだと思う。

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