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Facebookの元VP、15年ぶりにCEOへ復帰 — AIコーディングに$135M賭けた「8090 Labs」

Chamath Palihapitiyaという名前に馴染みがなくても、経歴を聞けば「ああ、あの人か」となるかもしれない。Facebookのユーザー数を数千万から7億5,000万に伸ばしたVP of Growth。その後ベンチャーキャピタルSocial Capitalを設立し、SPAC(特別買収目的会社)ブームを牽引して「SPACの王」と呼ばれた人物。テック系ポッドキャスト「All-In Podcast」の共同ホストでもある。

そのChamathが、15年ぶりにフルタイムの経営者に復帰した。2024年1月に自ら創業したAIコーディング企業「8090 Labs」のCEOとして。

6月29日、SalesforceVentures主導で1億3,500万ドル(約200億円)のシリーズAを発表。All-In Podcastの共同ホスト全員——David Sacks(Craft Ventures)、David Friedberg(The Production Board)、Jason Calacanis(LAUNCH)——が出資者に名を連ねている。

「コードを書くことはボトルネックではない」

8090 Labsの製品名は「Software Factory」。Cursor、Claude Code、GitHub Copilotとは競合しない。その上に乗るレイヤーだ。

Chamathの持論はこうだ。「規制の厳しい企業では、コードを書くこと自体がボトルネックだったことは一度もない。コードをコンプライアンス審査、セキュリティレビュー、監査に通すことがボトルネックだ」。

Software Factoryは、要件定義からコード実行までの全プロセスを4つのモジュールで管理する。

Refinery(要件定義) — 自然言語の機能要望を構造化されたプロダクト要件書に変換する。曖昧な「こういう機能が欲しい」を、AIが精密な仕様に落とす。

Foundry(設計) — 要件をアーキテクチャ設計図に変換する。技術スタック、セキュリティ要件、アーキテクチャ原則を決定する。

Planner(計画) — 設計をトレース可能なワークオーダーに分解する。なぜこのタスクが必要で、どの要件に紐づくかが明確。

Assembler(実行) — ワークオーダーをMCP(Model Context Protocol)経由でCursorやClaude Codeに送り込み、AIエージェントがコードを書く。

つまり、既存のAIコーディングツールが「開発者の手を速くする」ものだとすれば、8090は「開発プロセス全体を企業品質で回す」ためのものだ。エージェントが受け取るのは曖昧なプロンプトではなく、ナレッジグラフから構造化されたコンテキスト。だからハルシネーションによる依存関係の矛盾やアーキテクチャの不整合が起きにくい、という理屈だ。

$200/月 か、$1M/年 か

セルフサーブプランは月額200ドル/ユーザー+トークン従量制。エンタープライズプランは年100万ドルから。8090が設計・構築・ホスティングまで丸ごと請け負うフルマネージド型だ。

EY(アーンスト・アンド・ヤング)との提携では、数万人のコンサルタントへの展開を計画中。公称で開発生産性70%向上、デリバリー速度80倍、自動テストカバレッジ95%超という数字が出ている。

ターゲットは明確に「規制産業のエンタープライズ」だ。医療、金融、保険、航空宇宙、エネルギー、米国政府。「バイブコーディング」が許されない世界。

正直な所感

Chamathの復帰と「All-In全員出資」というストーリーは派手だが、冷静に見るとこのプロダクトは個人開発者には無縁だ。月200ドルのセルフサーブですら、フリーランスが気軽に試せる価格ではない。

エンタープライズ向けの「SDLC全自動化」というビジョン自体は筋が通っている。CursorもCopilotも「コードを速く書く」問題は解いたが、「書いたコードを組織のプロセスに通す」部分は手つかずのまま残っている。そこにフォーカスするのは賢い。

ただし、発表から1年以上経って具体的な利用実績がEYくらいしか出てこない点は気になる。プロダクトは2025年9月に公開されているが、導入事例の深掘りが少ない。$135Mの資金で顧客基盤をどこまで広げられるかが、今後の試金石になるだろう。

AIコーディング市場は2026年で128億ドル規模。Cursor(ARR 20億ドル超)、GitHub Copilot(有料470万人)、Claude Code(開発者満足度1位)が三つ巴で戦う中、8090はあえて「コーディングツール」ではなく「ソフトウェア工場」というレイヤーに立った。Chamathが15年間投資の世界にいて、今ここに戻ってきた理由を考えると、この市場を最も大きく切り取れるのは「ツール」ではなく「プロセス」だと踏んだのだろう。

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