FlowTune Media

AIコーディングエージェントがRustで書き直された — Devin Localの中身

2024年11月、WindsurfがCascadeという名の補完AIで一世を風靡した。2026年6月、CognitionがWindsurfを買収し「Devin Desktop」にリブランド。そして7月1日、CascadeはEOL(サポート終了)を迎えた。猶予期間なし、段階的廃止なし。その日を境に動かなくなった。

後継として投入されたのがDevin Localだ。Cascadeのコードベースを引き継いだのではなく、Rustでゼロから書き直されたまったく別のエンジン。公称30%のトークン効率改善と、サブエージェントによる並列処理が売りになっている。

Cascadeとの違い — 設計思想が変わった

Cascadeは本質的にシングルコンテキスト・逐次処理のエージェントだった。一つのタスクを一つの文脈で順番に解いていく。

Devin Localはマルチエージェントアーキテクチャに転換した。テスト実行、ドキュメント生成、リファクタリングといった分離可能なタスクを、並列のサブセッションに振り分けて同時に走らせられる。これはDevin Cloud(クラウド版の自律エージェント)で既に採用されていたアプローチをローカルに持ち込んだ形だ。

IDE側のインターフェースも変わった。従来のサイドパネルではなく「Agent Command Center」というカンバンビューが主画面になり、ローカルとクラウドのエージェントセッションを一覧で管理する。複数タスクをエージェントに割り振って進捗を俯瞰する — いわば「開発者がマネージャーになる」UIだ。

30%のトークン効率 — 実際どうか

Cognitionは「同じタスクで30%少ないトークンで完了する」と主張している。ある中規模のリファクタリングタスクで、Cascadeが約24,000トークンを消費したところDevin Localは約18,000で済んだという報告がある。

ただし独立した大規模ベンチマークはまだ存在しない。方向性としては信頼できそうだが、「常に30%」と期待するのは早い。Rust化による起動速度の向上やメモリ使用量の削減は体感できるレベルとの声が多い。

チームで週に数百のエージェントセッションを回している場合、30%のトークン削減はACU(Agent Compute Unit)の消費を抑える実利がある。Pro プラン($20/月、約150ACU)で運用している場合、同じ予算でより多くのタスクを処理できることになる。

ACP — もう一つの重要な変化

Devin LocalがCascade時代と大きく違うのは、Agent Client Protocol(ACP) をネイティブサポートしている点だ。

ACPは「AIエージェント版のLSP(Language Server Protocol)」と呼ばれるオープン規格。エディタとAIエージェントの間の通信を標準化する。MCPがエージェントと外部ツール(データベース、API等)をつなぐのに対し、ACPはエディタとエージェントをつなぐ。

2025年8月にZed Industriesが策定し、JetBrains、Google(Gemini CLI)、GitHub(Copilot CLI)が参加。2026年6月時点で50以上のエージェントが対応している。

これが意味するのは、Devin Desktop上でDevin Local以外のエージェント — Claude Code、Gemini CLI、OpenCodeなど — も動かせるということだ。IDE自体がエージェントのハブになる設計で、特定のエージェントにロックインされない。

移行の現実

ほとんどのユーザーにとって、6月2日のOTAアップデートで移行は自動的に完了している。プラン、料金、設定、拡張機能、MCP接続はすべて引き継がれた。

問題はCI/自動化パイプラインだ。「Cascade」を明示的に呼び出すスクリプトを持っていたチームは、7月1日に突然壊れた。devin acp またはOSSの acpx CLIに書き換える必要がある。

Cascadeの「Memories」(学習した文脈記憶)はDevin Localの「Skills」に手動変換する必要がある。自動マイグレーションはない。ここは正直、Cognitionの対応が雑だったと言わざるを得ない。

料金

プラン 月額 ACU
Free $0 約5 ACU
Pro $20 約150 ACU
Max $100〜200 約700 ACU
Teams $500+ プール制

1 ACU = 約15分のアクティブなエージェント作業に相当する。Pro プランの150 ACUなら、月に37.5時間分のエージェント稼働。日常的な開発補助には十分だが、フルタイムでエージェントを回す使い方にはMaxが必要になる。

CursorやClaude Codeに移るべきか

Cascade廃止をきっかけに、CursorやClaude Codeに移行したユーザーも少なくない。特に「単一タスクに集中したい」個人開発者には、Devin Localのマルチエージェント設計は過剰に感じるかもしれない。

一方、チームで複数タスクを並行して処理したい場合や、ACP対応の多様なエージェントを一つのIDEで切り替えたい場合は、Devin Desktopの「Agent Command Center」に利がある。

筆者の印象としては、Devin Localは「一人のスーパーエンジニア」ではなく「エージェントチームのオーケストレーター」を目指している。その方向性が自分のワークフローに合うかどうかが、乗り換えの判断基準になる。

関連記事