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「PCを閉じても動き続けるAIエージェント」をVercelがオープンソースで公開した

コーディングエージェントには致命的な弱点がある。ノートPCを閉じたら止まることだ。

Claude CodeもCursorも、基本的にはローカルマシンのプロセスとして動く。出先でWi-Fiが切れたら、深夜にスリープが入ったら、その時点でエージェントの作業は中断される。これが地味にストレスだった人は少なくないはずだ。

Vercelがこの問題に対するリファレンス実装をオープンソースで公開した。Open Agentsだ。

Vercel Open Agents

設計の核心: エージェントとサンドボックスの分離

Open Agentsの設計で最も重要なのは、「エージェントはVM(仮想マシン)の外で動く」という決定だ。

従来のアプローチでは、エージェントがVM内部で動き、ファイルの読み書きやコマンド実行を直接行う。だがOpen Agentsでは、エージェントはVMの外側に位置し、ツール経由でサンドボックスを操作する。ファイル読み込み、編集、検索、シェルコマンド——すべてがAPIコールとして抽象化されている。

この分離が何をもたらすか。エージェントの実行がリクエストのライフサイクルから独立する。つまり、ブラウザを閉じてもエージェントは動き続ける。サンドボックスはスナップショットで休止・再開できる。モデルとサンドボックスを独立に進化させられる。

3層アーキテクチャ

Open Agentsは明確に3つのレイヤーに分かれている。

Webアプリケーション層 — 認証、チャットUI、ストリーミング表示を担当。Next.jsで構築されており、Vercelにデプロイすればそのまま動く。

Durable Agent Workflow層 — VercelのWorkflow SDKを使い、エージェントの各ステップを永続化する。接続が切れても途中から再開できるのはこのレイヤーのおかげだ。長時間のリファクタリングを投げて、翌朝結果を確認する、というワークフローが成立する。

Sandboxed Execution層 — 隔離されたVM内でファイルシステム、シェル、Git、開発サーバーが動く。エージェントがどんなコマンドを実行しても、本番環境には一切影響しない。

Fork前提の設計

ここが正直に面白いと思った点。Open AgentsはSaaSではなく、「フォークして自分のものにしてくれ」という設計思想で作られている。

認証の仕組み、エージェントのプロンプト、使用するモデル、サンドボックスの構成——すべてカスタマイズ可能。Vercelが提供しているのは「こうやって作るんだよ」という青写真であり、完成品ではない。

企業が自社の開発フローに合わせた専用エージェントを構築したいとき、ゼロから設計する必要がなくなる。認証、永続化、サンドボックス管理の「面倒な部分」が既に実装されているのだ。

実際のワークフロー

使い方はシンプル。Webチャットで指示を出し、エージェントがサンドボックス内でコードを書く。完了したら自動でGitHubにコミットし、PRを作成する。

音声入力にも対応しており、スマホからの指示も可能だ。「このバグ直して」と口頭で伝え、PCの前に戻ったときには修正PRが上がっている——という体験を実現できる。

セッション共有機能もある。エージェントの作業過程をチームメンバーとリアルタイムで共有し、途中で方針を修正することもできる。

現実的な制約

4.5kスターとまだ若いプロジェクトなので、いくつか注意点がある。

Vercelへのデプロイが前提。他のクラウドプロバイダーで動かすには、Workflow SDKとサンドボックスの部分を自前で実装し直す必要がある。ここは明確なベンダーロックインだ。

また、エージェントの「賢さ」自体は背後のLLMに依存する。Open Agentsが提供するのはあくまでインフラ(永続化、サンドボックス、GitHub連携)であって、コーディング能力そのものではない。Claudeが苦手なタスクは、Open Agentsでも苦手だ。

データベースはPostgreSQLを使うが、セッションが増えるとストレージコストも増える。大規模チームで使う場合はDB管理のコストも見積もっておくべきだろう。

誰に向いているか

個人開発者がサクッと使うには少しオーバーキルだ。Claude Codeを直接使えば済む場面は多い。

Open Agentsが真価を発揮するのは、以下のケースだ。「社内にAIコーディングエージェントの仕組みを入れたいが、外部SaaSにコードを渡したくない」——この要件を持つ企業にとって、フォーク可能なリファレンス実装の存在はありがたい。

もう一つ。複数人のチームで非同期にエージェントを活用したい場合。ローカル実行型のClaude Codeでは「Aさんのマシンで動いてるから他の人はアクセスできない」という問題が起きるが、クラウド上のOpen Agentsなら共有が自然にできる。

将来的には、CI/CDパイプラインにOpen Agentsを組み込み、PRが作られるたびにエージェントが自動レビュー→修正提案を出す、という運用も視野に入る。Durable Workflowの永続性がそのままバッチ処理的な使い方を可能にしている。

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