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MozillaがAIエージェント専用のブラウザAPIを作った — Tabstackは「robots.txt を守るスクレイパー」

AIエージェントにWebを見せたいとき、選択肢は意外と少ない。

SeleniumやPlaywrightでヘッドレスブラウザを動かす方法はあるが、セットアップが面倒で、サイトのBot対策に引っかかることも多い。Browser Useのようなツールも出てきたが、ローカルでブラウザを立ち上げる必要がある。

そこにMozillaが出してきたのがTabstackだ。AIエージェントが「URLを渡すだけで」Webページを読み、操作し、データを構造化して返すAPIサービス。プライバシーとrobots.txt遵守をうたう、Mozillaらしいプロダクトになっている。

Tabstack

4つのエンドポイント、それだけ

Tabstackの設計は潔い。やれることを4つのAPIに絞っている。

Extract(10クレジット/回)はURLを渡すとページの中身をMarkdown、JSON、またはカスタムスキーマで返す。「このページの価格表だけJSON形式で取ってきて」のような使い方ができる。

Generate(100クレジット/回)はWebデータを元にカスタム出力を生成する。たとえばプロダクトページから比較表を生成する、ニュースサイトから要約レポートを作る、といった処理を一発でやる。

Automate(100クレジット/回)が一番ブラウザっぽい。クリック、スクロール、フォーム入力、検索。人間がブラウザでやる操作をAIが代行する。ログインが必要なサイトでの操作も想定されている。

Research(250クレジット/回)は自律的なリサーチエージェント。質問を投げると複数のWebページを横断的に調べて、構造化された回答を返す。fastモードとbalancedモードがある。

料金は「使った分だけ」

無料枠は新規アカウントに10,000クレジット。個人プランは月額無料で1,000クレジットごとに$0.35(約52円)。Teamプランは月$99(約1.5万円)で50万クレジット付き。Proプランは月$499(約7.5万円)で300万クレジット付き。

Extractなら10クレジットなので、無料枠だけで1,000ページ分の構造化データが取れる。正直、ちょっと試す分にはかなり余裕がある。

Mozillaが作る意味

「またスクレイピングAPI?」と思うかもしれない。ただ、Mozillaが作っている点には意味がある。

まず、すべてのリクエストに専用のUser-Agentが付く。サイト運営者はTabstackのトラフィックを識別・制御できる。robots.txtのTabstack向けディレクティブも尊重される。こっそり巡回するスクレイパーとは設計思想が根本的に違う。

次に、データの扱い。取得したデータはエフェメラル(一時的)で、Mozillaはこのデータでモデルを学習しない。ユーザーのデータはユーザーのものというMozillaの伝統的なスタンスがここにも現れている。

Browser UseやFirecrawlとの違い

AIのWeb操作ツールは群雄割拠だ。簡単に整理する。

Browser Useはローカルでブラウザを実行するオープンソースツール。自前でブラウザを管理する必要があるが、完全にコントロールできる。ローカル実行を重視する人向け。

FirecrawlはWebスクレイピングに特化したAPI。構造化データの抽出が得意だが、ブラウザ操作(クリック、フォーム入力)には弱い。

Tabstackはその中間に位置する。APIだから環境構築不要、ブラウザ操作もできる、かつプライバシー重視。ただし、ローカル実行はできないし、Mozillaのサーバーを経由する以上、速度面では直接スクレイピングに劣る場面もあるだろう。

AIエージェントの「Web接続層」になれるか

個人的に面白いと思うのは、Tabstackの4つのAPIがそのままAIエージェントのツールとして使えること。

たとえばClaude CodeやCodex CLIのエージェントにTabstackのAPIキーを渡せば、「このサイトの料金ページを見て比較表を作って」「このフォームに記入して送信して」といった指示が通るようになる。MCPサーバーとして統合すれば、AIの「手」を直接Webに伸ばせる。

価格比較ボットを作る、競合サイトの定期モニタリングを自動化する、入力フォームの自動テストを回す。APIが4つしかないシンプルさが、逆にこうした組み合わせを考えやすくしている。

ただ、まだProduct Huntでの反応は122 upvoteで、大きなバズにはなっていない。Mozillaのプロダクトは技術的には優れていても市場でスケールしない歴史があるから(Firefox OSやMDNの縮小を思い出す)、長期的な継続性は少し気になるところだ。

Webをプライバシーに配慮しながらAIに開放するという方向性自体は、間違いなく正しい。あとはどれだけ開発者コミュニティに根づくかだ。

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