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マッキンゼーに頼む代わりにAIに頼む — 月3.7万円で戦略レポートが出てくるRocket.newの実力

「コードは誰でも書ける時代になった。コモディティだ。でも何を作ればいいかは、まだ誰も教えてくれない」

インド・スーラト発のスタートアップRocket.newのCEO、Vishal ViraniがTechCrunchの取材でこう語った。バイブコーディングの普及でアプリ開発のハードルは限りなく下がった。Lovableで画面を作り、Claude Codeでバックエンドを書く。技術的にはそれで動くものが作れる。

問題は、その前の段階だ。

市場にニーズはあるのか。競合はどこにいるのか。価格はいくらに設定すべきか。GTM戦略をどう組むか。従来、これらの問いに答えるにはマッキンゼーやBCGに数百万円を払うか、自分で何週間もリサーチするしかなかった。Rocket.newが月$250(約3.7万円)で提供しているのは、この「作る前の判断」をAIに任せるサービスだ。

「バイブコンサルティング」とでも呼ぶべきもの

Rocket 1.0として2026年4月にリリースされたこのプラットフォームは、3つの機能を統合している。

まずリサーチ。1,000以上のデータソース(公開API、独自クローラー)から競合情報、市場データ、業界動向を収集する。次に戦略レポート生成。収集したデータを元に、価格設計、ユニットエコノミクス、Go-to-Market戦略を含む構造化されたドキュメントを出力する。最後にアプリ構築。戦略に基づいてReact、Next.js、Flutter等のコードを生成し、Netlifyへのワンクリックデプロイまで面倒を見る。

正直、「戦略レポートとコード生成が一体化している」という設計は面白い。リサーチの結果が「だから、こう作るべき」という具体的な実装に直結する。

月$25から$350まで、3段階の料金

プラン 月額 主な機能
Build $25(約3,750円) アプリ構築、プロンプトからUI生成
Strategy & Research $250(約3.7万円) 月2-3本のコンサルティングレポート + Build全機能
Full Platform $350(約5.3万円) 競合インテリジェンス + 全機能

中間の$250プランが「マッキンゼーの1/10」と称されている部分だ。月に2〜3本の「McKinsey-grade」レポートを生成できるとされる。

数字で見ると

$15Mのシードラウンド(Accel、Salesforce Ventures、Together Fund)を調達済み。ユーザー数は40万人から150万人に急増し、180カ国に展開。年間ARPUは約$4,000(約60万円)、粗利率50%以上と報じられている。

57人のチームで150万ユーザーを捌いているのは、AIレバレッジの恩恵だろう。

正直な評価

良い点。 「何を作るか」の判断材料をAIで安く手に入れるというコンセプト自体が新しい。コード生成ツールは飽和状態にあるが、その上流の意思決定を支援するプロダクトは少ない。スタートアップの初期仮説検証、サイドプロジェクトの市場調査、既存事業の新規サービス企画あたりに使えそうだ。

気になる点。 レポートの質は見極めが必要だろう。1,000以上のデータソースと言っても、公開データの集約が中心であれば、業界のインサイダーしか知らない定性情報は入ってこない。マッキンゼーが高いのはデータだけでなく、クライアント企業の内部事情を加味した判断と、その判断に対する責任を負うからだ。AIレポートに同じ重みを期待するのは無理がある。

もう一つ。レビューサイトでは「アプリ構築部分のバグ修正がまだ難しい」という指摘が散見される。戦略レポートは良くても、その先の実装で躓くと体験全体の評価が下がる。

これが広がると何が変わるか

もしRocketの品質がもう一段上がれば、スタートアップのピッチデックに「AIが出した市場分析」が標準装備される未来は近い。投資家への提案資料を自動生成し、その中のTAM/SAM/SOM算出もAIが担う。人間の仕事は「AIの分析をもとに、最終的な判断を下す」ことに集中する。

コンサルティングファームへの影響も見逃せない。もちろんFortune 500のような大企業は引き続き人間のコンサルタントを起用するだろう。だが中小企業やスタートアップのセグメントでは、月3.7万円のAIレポートが「十分に使える」水準に達すれば、市場構造そのものが変わる。

バイブコーディングが「誰でも作れる」を実現したように、「誰でも戦略を立てられる」時代がくるのかもしれない。ただし「戦略が立てられる」と「正しい戦略を選べる」は別の話だ。Rocketが提供するのはあくまで材料であり、最終判断は依然として人間に委ねられる。

そこを理解した上で使うなら、月3.7万円は試す価値のある投資だと思う。

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