ProtonMailの会社が作ったAIは「運営者すら中身を読めない」 — Lumo 2.0の実力と限界
ChatGPTもClaudeも、あなたの会話を読んでいる。
正確には「読める状態にある」だ。サービス提供者はサーバー上の会話データにアクセスでき、利用規約に基づいてモデルの改善に使う可能性がある。ほとんどの場合、それは問題にならない。でも顧客の個人情報、社内の機密文書、医療データ——そういうものをAIに渡すとき、「読めない」と「読まない約束」の間には大きな差がある。
Proton Lumo 2.0は、その差を埋めようとしている。
ProtonMailの会社が作ったAI
Protonは、エンドツーエンド暗号化メールサービス「ProtonMail」で知られるスイスの企業だ。VPN、クラウドストレージ、カレンダー、パスワードマネージャー——すべてのサービスに共通する設計思想は「運営者すら中身を見られない」こと。
その思想をAIに持ち込んだのがLumoだ。2025年7月にローンチし、1年で1,000万人のユーザーを獲得した。6月30日にリリースされた2.0は、アーキテクチャを一から作り直した大型アップデートになる。
性能は240%向上、でも最前線ではない
2.0での変化は大きい。独立ベンチマーク(Artificial Analysis Intelligence Index)で、前バージョンから最大240%のスコア向上。日常的なクエリの応答速度は76%速くなった。
新たに追加された機能も多い。
- 推論モード: 高速な「Fastモード」と、複雑な問題に時間をかける「Thinkingモード」の2段構え
- 画像の生成と認識: テキストからの画像生成、アップロード画像の分析、画像の編集
- メモリとプロジェクト: セッションをまたいで文脈を記憶。長期的な作業に使える
- カスタムLumo: 特定の用途に特化したアシスタントを作成可能(OpenAIのGPTsに相当)
- ゴーストモード: セッション終了と同時に会話が完全に消える。最大限の匿名性
内部ではQwen 3.5やGLM 5.2などのオープンソースモデルを使い、リクエストに応じて最適なモデルを自動選択するルーティングシステムを採用している。すべてProtonが管理する欧州のサーバーで処理され、データが外部に出ることはない。
ただし正直に言えば、ChatGPTやClaudeと比べると出力の質には差がある。創造的な文章やニュアンスのある推論では、フロンティアモデルに及ばない。レビュアーの多くが「プライバシーが必要な作業はLumo、それ以外はChatGPT/Claude」という使い分けを推奨している。
料金
| プラン | 月額 | 内容 |
|---|---|---|
| Free | 無料 | 基本機能、メッセージ数制限あり |
| Plus | $12.99(約2,000円) | 無制限チャット、高速モデル優先、画像生成、プロジェクト無制限 |
| Professional | $14.99(約2,300円) | Plus全機能 + チーム管理・共同作業 |
| Business | 要問い合わせ | エンタープライズ向け |
年払いなら$119.88/年(約1,500円/月)。ChatGPT Plus($20/月)やClaude Pro($20/月)より安い。ただし性能差を考えると、コスパの評価は「プライバシーにどれだけ価値を置くか」次第だ。
誰に向いているのか
Lumo 2.0が活きるのは、AIに渡すデータの機密性が高い場面だ。
弁護士が依頼人の書類を要約する。医師がカルテの記述を整理する。スタートアップが未公開の事業計画をAIにレビューさせる。こうした場面では「運営者が読めない」という保証が、性能差よりも重要になる。
逆に、普段のブレスト、コード補完、カジュアルな調べ物であれば、ChatGPTやClaudeのほうが体験は良い。Lumoはあくまで「プライバシーが譲れないときの選択肢」であって、汎用AIの代替ではない。
Protonのエコシステムとの統合も進んでいる。Proton DriveのファイルをLumoに直接読み込ませることができ、ProtonVPNと組み合わせれば通信経路も保護できる。今後はProton Mailとの連携(AIでメール作成)やCalendar連携も計画されているようだ。
プライバシーAIの選択肢が広がっている
Venice AIがシリーズAでユニコーン評価を受け、Apple Intelligenceはオンデバイス処理を武器にし、そしてProton Lumoはゼロアクセス暗号化で勝負している。「AIにデータを渡したくない」というニーズに応えるプレイヤーが、ようやく揃い始めた。
Lumo 2.0の性能が240%向上したとはいえ、フロンティアモデルとの差はまだある。だがこの差は縮まり続けている。オープンソースモデルの進化がそのままLumoの性能に反映されるからだ。Qwenが強くなれば、Lumoも強くなる。
「プライバシーのために性能を妥協する」時代が終わるのは、そう遠くないかもしれない。
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