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MacでAIを動かすのに、もうOllamaは要らないかもしれない — 7MBのSwiftアプリ「Osaurus」

MacでローカルLLMを動かすとき、ほとんどの人が最初に触るのはOllamaだろう。使えはする。だが、正直に言えばMac上での体験は最適とは言い切れない。Goで書かれた汎用サーバーを、Apple Siliconの上でやや不格好に走らせている——そんな感覚が拭えなかった。

Osaurusはその不満を正面から解決しようとしている。Swiftでゼロから書かれた、Mac専用のAIランタイムだ。アプリのサイズはわずか7MB。Apple SiliconのMLXフレームワークをネイティブに使い、Ollamaより20%高速だと公称している。

5月15日にTechCrunchで取り上げられ、GitHubでは5,400スターを超えた。累計ダウンロードは11万2,000回以上。そして$63Mの資金調達を完了している。名前を聞いたことがなくても、数字だけ見れば無視できない存在になりつつある。

「Ollamaの代替」では収まらない設計

Osaurusを触って最初に感じたのは、これは単なる「速いOllama」ではない、ということだ。

ローカルLLMサーバーとしての機能はもちろんある。Gemma 4、Qwen 3.6、DeepSeek V4、Llamaなど主要なオープンモデルをMLX上で推論できる。だがOsaurusはそこで止まらず、OpenAI、Anthropic、Gemini、xAI/Grokなどクラウドプロバイダーへの接続も統合している。

つまり、ローカルとクラウドの両方を同じインターフェースから切り替えて使える。ちょっとした質問はローカルのGemma 4で処理し、込み入った推論が必要なときだけClaudeやGPTに切り替える——という使い方が1つのアプリ内で完結する。

さらに、macOS 26以降ではAppleの純正Foundation Modelsにも対応する。Appleがデバイス上で提供するオンデバイスモデルを、Osaurusの統一インターフェースから呼び出せるようになる。

20以上のネイティブプラグイン

Osaurusが「ランタイム」と名乗る理由は、プラグインシステムにある。

Mail、Calendar、Vision(画像認識)、macOS Use(デスクトップ操作)、XLSX、PPTX、Browser、Music、Git、Filesystem、Search、Fetchなど、20以上のネイティブプラグインが最初から組み込まれている。AIモデルが手元のMacのアプリやファイルに直接アクセスし、操作できるということだ。

「メールを要約して」「カレンダーの空きを探して」「このスプレッドシートを分析して」——こうしたタスクを、外部サービスに依存せず、Mac上で閉じた形で処理できる。

MCP(Model Context Protocol)にも対応しており、外部のAIエージェントからOsaurusのツール群にアクセスすることも可能だ。Claude CodeやCursorなどMCP対応ツールと連携させれば、Osaurusが持つMacネイティブの機能を外部エージェントから呼び出すという使い方もできる。

セキュリティ:サンドボックスで隔離する発想

ローカルでAIエージェントに「何でもやらせる」のは、便利な反面リスクも大きい。Osaurusはここにハードウェアレベルのサンドボックスを用意している。

コード実行はLinux VMの中で隔離され、AIがファイルシステムやネットワークに直接触れる範囲を制限できる。Claude CodeやCodexが「承認プロンプト」で安全性を確保しているのに対し、Osaurusはインフラレベルで封じ込める思想だ。

加えて、secp256k1ベースの暗号化IDをデバイスごとに生成する仕組みもある。エージェントの行動にデバイス単位の署名が付くことで、「どのMacで、どのエージェントが、何をしたか」を追跡可能にしている。エンタープライズ用途を見据えた設計だろう。

メモリシステム:セッションを超えて学ぶ

Osaurusのメモリは3層構造になっている。Identity(ユーザーの人物像)、Facts(学習した事実)、Episodes(過去のセッション記録)。これらはすべてMarkdown形式でローカルに保存され、ObsidianのVaultと互換性がある。

セッションを超えて「昨日話した内容」を覚えていて、文脈を引き継いでくれる。ChatGPTのメモリ機能に似ているが、データがすべてローカルにあるという点で根本的に異なる。クラウドに送らずに、パーソナライズされたAI体験を構築できる。

正直な制約

良いところばかり書いてきたが、見過ごせない制約もある。

64GB以上のRAMが必要。 ローカルLLMを実用的に動かすには最低64GBのメモリが要る。M4 MacBook Proの標準構成(24GB)では力不足だ。ベースモデルのMacBookを使っている人は、実質的にクラウドプロバイダー経由でしか使えない。

macOS 15.5以上が必須。 比較的新しいOSバージョンが求められる。古いMacは対象外。

Mac専用。 WindowsもLinuxもサポートしない。Apple Siliconに最適化しているからこそ速いのだが、チームで使う場合にMac以外のメンバーがいると統一できない。

エコシステムの成熟度。 5,400スターは立派だが、Ollamaの勢いと比べるとまだ小さい。プラグインの品質やドキュメントの充実度は発展途上だ。

刺さる人、刺さらない人

Apple Silicon Mac(できれば64GB以上)を持っていて、ローカルAIとクラウドAPIを日常的に行き来する開発者。あるいは、Obsidianで知識管理をしていて、AIの記憶をそのVaultに統合したい人。こういう層にはOsaurusは深く刺さるだろう。

逆に、RAM 24GB以下のMacBookしか持っていない人には正直厳しい。ローカルモデルがまともに動かない以上、クラウド接続のための高機能クライアントとしてしか使えず、それなら他の選択肢もある。Ollamaのエコシステム(Docker統合、膨大なコミュニティモデル)に依存している人も、移行する理由は薄い。

Ollamaとの棲み分け

OllamaはクロスプラットフォームのLLMサーバーとして圧倒的な支持を持つ。コミュニティモデルの数、Dockerとの統合、チュートリアルの充実度では依然として無敵だ。

Osaurusの優位性は「Mac上での体験」に集約される。SwiftネイティブであることによるMLXの最適化、20以上のmacOSプラグイン、Apple Foundation Modelsへの対応、メニューバーからの軽快なアクセス。Macを主力マシンにしている人にとっては、汎用的なOllamaより「このMacのため」に作られたOsaurusのほうが合理的な選択肢になりうる。

Ollamaを捨てる必要はない。両方入れて、使い分けるのが現実的だろう。ただ、Macでローカル AI を「もう一段深く」使いたいなら、Osaurusは試す価値がある。Tesla/Netflix出身のチームが$63Mを集めて作っているものが、何も生み出さないとは考えにくい。

brew install --cask osaurus で始められる。インストールサイズ7MB。試すコストはほぼゼロだ。

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