議事録も要約もPCの中で完結する — OSSの会議AI「Meetily」が2.3万スター超え
Zoom会議に「AI Notetaker」という名前のBotが入ってくるのが、地味にストレスだ。
Otter.aiやFireflies.aiのような議事録AIは便利だが、参加者リストにBotが表示される気まずさ、録音データがどこに保存されるのかわからない不安、それに月額$10〜20の課金が常につきまとう。社内のコンプライアンスチームから「クラウド型の議事録ツール禁止」と言われた経験がある人も少なくないだろう。
Meetilyは、その全部を解決しようとしているオープンソースプロジェクトだ。

Botが来ない。データが出て行かない
Meetilyの仕組みはシンプルだ。PCのシステムオーディオ(画面収録と同じ仕組み)をキャプチャして、ローカルのWhisperモデルで文字起こしし、AIで要約する。会議ソフトにBotとして参加するわけではないので、参加者リストには何も表示されない。
文字起こしも要約も、すべてPC内で処理される。音声データがインターネットに出ることはない。GDPR、HIPAA、SOX——どの規制フレームワークの下でも「データが端末外に出ない」という事実は最強の回答になる。
対応する会議ソフトはZoom、Google Meet、Microsoft Teams、Discord。正確には「システムオーディオをキャプチャする」設計なので、音声が鳴るアプリなら何でも使える。
Whisperの3〜6倍速い文字起こし
文字起こしエンジンは2つから選べる。
OpenAI Whisper(whisper.cpp) — 99言語対応の定番。Apple SiliconやNVIDIA GPU、Vulkan経由のAMD/Intel GPUで高速化される。
NVIDIA Parakeet TDT 0.6B — Whisperより3〜6倍高速で、ワードエラー率も低い(6.32% vs Whisperの7.44%)。NVIDIAのGPUを積んでいるなら、こちらを選ぶ理由は明確だ。
リアルタイムで文字起こしが走るので、会議中に「今なんて言った?」を振り返れる。Tauri 2フレームワーク上にRustバックエンド + Next.jsフロントエンドという構成で、デスクトップアプリとしてはかなり軽い。
要約はローカルでもクラウドでも
要約のAIプロバイダーは柔軟に選べる。
完全ローカルにこだわるなら、Ollamaを入れてQwen 3.5やLlama 3をローカルで走らせればいい。「PCの外に何も出さない」を徹底できる。精度を重視するなら、Claude APIやGroq、OpenRouterのキーを入れてクラウドのモデルを使うこともできる。
要約テンプレートは7種類用意されていて、議事録形式、アクションアイテム抽出、意思決定サマリーなど用途に応じて選べる。多言語での要約生成にも対応している。
料金
| プラン | 価格 | 主な機能 |
|---|---|---|
| Community | 無料(MIT) | ローカル文字起こし、AI要約、基本機能すべて |
| Pro | 約$10/ユーザー/月 | 高精度モデル、話者分離、カスタムテンプレート、PDF/DOCX出力 |
| Enterprise | 要問合せ | 100名以上、セルフホスト、コンプライアンス対応 |
無料のCommunity版でも文字起こしと要約の核心機能は完全に使える。Pro版は話者分離(誰が何を言ったか)と高精度モデルが売りだ。
正直に言うと
23,600スター、30万ダウンロードという数字は説得力がある。「ローカル完結」「Botなし」「無料」という三拍子は、既存のクラウド型ツールでは満たせない需要を確実に拾っている。
ただし、現時点での制約もある。
まず、文字起こし精度はハードウェアに依存する。M2 MacBook Proなら快適だが、メモリ8GBの古いWindows機では厳しいだろう。推奨スペックはRAM 16GB、8コアCPU、GPU付き。議事録AIとしてはやや要求が高い。
次に、CRM連携やプロジェクト管理ツールとの統合がまだない。Fireflies.aiのようにSalesforceやHubSpotに自動でメモを流したい企業ユースでは、現状では手動でのコピーが必要になる。
Linuxはまだインストーラーがなく、ソースからのビルドが前提。開発チーム13人という規模を考えると、機能追加のスピードには限界がありそうだ。
クラウド型に疲れた人の選択肢
Meetilyは「議事録AIは使いたいが、データを外に出したくない」という——考えてみれば至極まっとうな——要望に正面から応えたツールだ。
医療、金融、法務、あるいは社内規定でクラウド型が使えない組織にとっては、現状ほぼ唯一のまともな選択肢だろう。個人開発者やフリーランスにとっても、月額課金なしで議事録AIが使えること自体に価値がある。
逆に「精度が最優先で、データ管理は気にしない」「Salesforce連携が必須」という人には、素直にOtter.aiかFirefliesを使う方が幸せだ。ツールは使い分けるものだから。
関連記事
ChatGPTもClaudeも使わない「自分だけのAI」を、PewDiePieが無料で配り始めた
PewDiePieが公開したセルフホスト型AIワークスペースOdysseus。チャット・エージェント・メール・リサーチを統合し、データは自分のPCだけに残る。
AIがハッカーの代わりにアプリを攻撃する — GitHub 4万スターのOSS「Strix」の正体
StrixはOSSのAIペンテストツール。4万スター超、OWASP Top 10対応。仕組みと使い方を解説。
社員14人、ユーザー890万人 — ローカルLLMの定番Ollamaが約95億円を調達
Ollamaが約95億円調達。社員14人で890万人が使うローカルLLM基盤の実力と展望を解説。