Maestri — 無限キャンバスでAIコーディングエージェントを指揮する、macOSネイティブターミナルアプリ
AIコーディングエージェントを複数同時に使い始めると、すぐにある問題にぶつかる。ターミナルのタブが増えすぎて、どのエージェントが何をしているのか把握できなくなるのだ。
Maestriは、この問題を「無限キャンバス」で解決しようとするmacOSネイティブアプリだ。

Maestriとは
Maestriは、ブラジルのソロ開発者Evert Junior氏が開発したmacOS専用のターミナルアプリケーションだ。純Swift製でElectronやWebViewを一切使わない。SwiftUIとカスタムビルドのキャンバスエンジンで構成されている。
FigJamやMiroのようなホワイトボードツールの感覚で、ターミナルウィンドウを無限キャンバス上に自由に配置できる。各ターミナルにはClaude Code、Codex、Gemini CLI、OpenCodeなど、好きなAIコーディングエージェントを割り当てる。
エージェント同士を「線で繋ぐ」だけの協調
最も面白いのは、エージェント間通信の仕組みだ。2つのターミナルノードを線で接続すると、PTY(疑似端末)オーケストレーションにより、エージェント同士が直接テキストをやり取りし始める。Claude CodeにCodexへコードレビューを依頼させる、GeminiからOpenCodeにタスクを委任させるといった連携が、APIキーの設定もミドルウェアの構築も不要で実現する。エージェントが相手のターミナルに直接タイピングするような形で通信するため、CLIベースのエージェントなら何でも動作する。
キャンバスにはターミナル以外のオブジェクトも置ける。付箋メモ(マークダウンファイルとしてディスクに保存される)、フリーハンド描画、図形、矢印。付箋をエージェントに接続すると、エージェントがその付箋に読み書きできる。複数のエージェントを同じ付箋に接続すれば、セッションをまたいだ共有メモリになる。設計メモやタスクリストをエージェント間で共有するのに使えるわけだ。
Ombro — 離席中のエージェントを見守るローカルAI
もうひとつ独特なのが、Ombroと呼ばれるオンデバイスAIコンパニオンだ。Apple Intelligence経由でMac上にローカルで動作し、開発者が離席している間のエージェントの作業を監視する。戻ったときに「あのエージェントはここで詰まっていた」「こちらはタスクを完了した」といった要約を提供してくれる。クラウドへのデータ送信は一切ない。
アカウント登録も不要で、利用データの収集も行わない。すべてがローカルで完結する設計だ。
セットアップと実際の使い方
公式サイト(themaestri.app)からmacOS用アプリをダウンロードしてインストールする。起動後はキャンバス上にターミナルノードを追加し、各ターミナルで使いたいCLIエージェントを起動するだけだ。ノード同士を線で接続すればエージェント間通信が有効になり、付箋メモでタスクや設計メモを管理する。
たとえばClaude Code Maxのように大量のトークンを持て余している場合、複数のターミナルで並列にタスクを処理できるのは効率的だ。メインの開発はClaude Codeに任せ、コードレビューはCodexに回す。この分業体制を1つのキャンバスで視覚的に管理できるのが、ターミナルのタブ切り替えとは決定的に違うところだ。
18ドル買い切りで完結する料金体系
1ワークスペースまでは無料で使える。Proプラン(無制限ワークスペース)は18ドルの買い切り。サブスクリプションではなくライフタイムライセンスだ。AI系ツールが軒並み月額課金に走る中で、この価格設定はソロ開発者ならではの潔さがある。
正直な評価
触ってみて最も印象的なのは、エージェントの状態を「空間的に」把握できるという体験だ。ターミナルタブを切り替えるのではなく、キャンバス上で全体を俯瞰しながら各エージェントの進捗を確認できる。これは単なる見た目の問題ではなく、ワークフローの認知負荷を明確に減らしてくれる。
一方で、Product Huntのフィードバックにもあるように、長時間使用するとワークスペースが固まる(ドラッグやボタンが反応しなくなる)という安定性の課題が報告されている。ソロ開発のプロダクトであり、まだ成熟段階にあるとは言えない。
また、macOS専用という点は割り切りが必要だ。LinuxやWindowsユーザーは利用できない。
Claude Code、Codex、Gemini CLIなどを日常的に複数使い分けていて、ターミナルタブの管理に疲れている開発者にはハマるだろう。エージェントに並列でタスクを処理させたい場面や、プライバシーを重視してクラウドにデータを送りたくない場面でも、ローカル完結のMaestriは選択肢に入る。
逆に、CursorやWindsurfのようなIDE統合型のエージェントで事足りている場合は、無理に導入する必要はない。MaestriはIDEを置き換えるものではなく、CLIエージェントを束ねるオーケストレーション層だ。位置づけが違う。
公式サイト: themaestri.app
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