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ClineとRoo Codeを両方フォークした拡張が、150万ユーザーに達していた — Kilo Codeの立ち位置

VS CodeのAIコーディング拡張は、もはや戦国時代を通り越して分裂の時代に入っている。

Clineがオープンソースのコーディングエージェントとして500万インストールを突破し、そこからRoo CodeがフォークされてCustom Modesという独自路線を歩んだ。OSSのフォーク文化が活発なのは健全だが、ユーザーから見ると「結局どれを使えばいいのか」が分かりにくくなる一方でもあった。

Kilo Codeは、その問いに対して大胆な回答を出したプロジェクトだ。ClineとRoo Codeの両方をフォークし、双方の長所を取り込んだうえで、独自のアーキテクチャで全面リビルドした。2026年4月時点でVS Code/JetBrains/CLI対応、150万ユーザー、$8Mのシード資金を調達している。

何が違うのか

Clineの強みはシンプルさとコミュニティの大きさ、Roo Codeの強みはCustom Modesによるワークフローのカスタマイズ性だった。Kilo Codeはその両方を引き継ぎつつ、いくつかの独自機能を載せてきた。

Agent Manager。 これが最大の差別化ポイントだ。複数のエージェントを同時に起動し、それぞれ異なるモデルで同じタスクを走らせることができる。たとえばClaude Opus 4.7とGPT-5.4で同じリファクタリングを並列実行し、結果を横に並べて比較する——そういう使い方が想定されている。

モデルの良し悪しはタスクの種類で変わる。型の整合性が重要なTypeScriptの型定義にはClaudeが強く、データ変換のワンライナーを書かせるならGPTのほうが手っ取り早い。でも実際にどちらが良いかは走らせてみないとわからない。Agent Managerは、その「走らせてみる」コストを下げる仕組みだ。

並列ツールコール。 エージェントが複数のアクション(ファイル読み込み、ターミナル実行、検索)を同時に実行できる。Clineでは逐次実行だった処理が並列化されるため、大規模なリポジトリでのタスク完了が体感で速くなる。

インラインコードレビュー。 ファイルを変更するたびにチャット内にdiffバッジが表示され、ワンクリックでDiff Viewerが開く。さらに /local-review コマンドで、ブランチ全体の差分をAIにレビューさせることもできる。CIに流す前のセルフレビューとしては、素直に便利だと思う。

料金モデル:マークアップなしの「通り抜け」方式

Kilo Codeの料金体系は、Cursorとは根本的に異なる。

拡張自体はオープンソースで無料。AIモデルの利用料は、各プロバイダーの公式価格がそのまま適用される。CursorやWindsurfのように独自の「プレミアム使い放題」枠があるわけではなく、使った分だけ払う従量制だ。

自分のAPIキーを持ち込む(BYO Key)場合は、Kiloへの支払いは発生しない。

APIキーの管理が面倒な人向けには「Kilo Pass」がある。月額$19/$49/$199の3プランで、支払った金額がそのままクレジット残高になる。モデルの利用料はそこから差し引かれる仕組みで、残高は期限なし。月ごとにボーナスクレジットも付与されるが、こちらは月末で消える。

プラン 月額 残高 ボーナス
Starter $19 $19(無期限) 月次ボーナスあり
Pro $49 $49(無期限) 月次ボーナスあり
Max $199 $199(無期限) 月次ボーナスあり

日本円換算で月額約2,800円(Starter)から。Cursorの$20/月と近い価格帯だが、Kiloはモデル使用量に応じた従量制、CursorはFastリクエスト枠付きの定額制。どちらが安くなるかは使い方次第だ。軽い補完中心ならCursor、エージェントに長時間タスクを投げるスタイルならKiloのBYO Keyが効率的になる。

ClineやRoo Codeから乗り換える理由はあるか

正直に言えば、Clineで不満がない人がわざわざ乗り換える必要はない。Kilo Codeの独自機能——Agent Manager、並列ツールコール、インラインレビュー——は「あると嬉しい」レベルであって、「ないと困る」ものではない。

ただ、以下に当てはまるなら検討の価値がある。

一つは、複数モデルを日常的に使い分けている人。Agent Managerのマルチモデル比較は、現時点でClineにもRoo Codeにもない機能で、モデル選定に時間をかけている開発者には明確な時短になる。

もう一つは、チームでの利用を考えている場合。Kilo Teamsプラン($15/ユーザー/月)は共有ワークスペースと管理コンソールを含んでおり、ClineやRoo Codeにはない組織向けの機能がある。

逆に、Roo CodeのCustom Modesに深く依存したワークフローを構築済みの人は、移行コストのほうが高くつく可能性がある。Kiloでは「Modes」が「Agents」にリネームされており、既存の設定ファイルは一部手動での移行が必要だ。

気になる点

OSSプロジェクトとしてのガバナンスは気になる。ClineからもRoo Codeからもフォークしているということは、上流の変更を取り込み続ける負荷が2倍になるということだ。$8Mの資金で当面の開発リソースは確保されているとはいえ、フォーク元との関係がどう推移するかは注視したい。

また、「フォークの上にフォークを重ねた」プロジェクトに対して、コミュニティの一部から「オリジナルに還元しているのか」という声が上がっているのも事実だ。MIT/Apache 2.0ライセンスの範囲内では問題ないが、OSS文化の中での立ち位置は今後の評判に影響するだろう。

KiloClawというクラウドエージェント機能(月額$49)も始まっているが、まだベータの域を出ていない印象がある。ローカルのVS Code拡張としての品質に集中してほしい、というのが個人的な感想だ。

使い始めるには

Kilo公式サイトからVS Code / JetBrains / CLI版をインストールできる。自分のAPIキーを設定すれば、その時点から無料で使い始められる。500以上のモデルに対応しているため、OpenAI、Anthropic、Google、ローカルのOllamaなど、好みのプロバイダーを選べる。

ClineやRoo Codeから移行する場合は、既存の設定ファイルの互換性を事前に確認しておくことをすすめる。

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