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4Bしか動かないのに、15倍サイズを上回る — 学習データまで丸ごと公開されたK2 Horizon

「オープンモデル」と名乗るモデルは山ほどある。だが、その大半は"重み(weights)だけ"の公開だ。どんなデータで、どんなコードで学習したのかは、たいてい闇の中にある。

2026年9月3日にアブダビのMBZUAI傘下、Institute of Foundation Models(IFM)が公開したK2 Horizonは、そこを正面から破ってきた。重みだけでなく、学習コードも、学習データも、手法もまるごと出す。しかも0.9Bから375Bまで6モデルのフリート(艦隊)で、である。

「フルオープン」の意味が違う

一番わかりやすいのが、IFMの公式サイトが掲げる「fully open」の徹底ぶりだ。

  • 重み — 当然公開
  • 学習コード — 再現できる形で公開
  • 学習データ — 何を食わせたかまで開示
  • ライセンス — Apache 2.0(商用利用OK)

重みだけのモデルは「動かせるが中身は分からないブラックボックス」だが、データとコードまで揃うと、研究者は挙動を検証でき、企業は「何を学習したか説明できないモデルは使えない」というコンプラ上の壁を越えられる。ここが地味に効く。

主役は「4Bだけ動く」36Bモデル

6モデルの中でも触ってみたいのが、K2-Horizon-MoVA-36B-A4Bだ。名前が暗号めいているが、意味はシンプルで「36Bのパラメータを持つが、1トークンあたり動くのは約4Bだけ」という構成を指す。いわゆるMoE(Mixture-of-Experts)だが、K2 Horizonはそこに**MoVA(Mixture-of-Values Attention)**という新しい仕掛けを足している。

MoEは通常、フィードフォワード層を複数の"専門家"に分けて必要な分だけ動かす。MoVAはその発想をアテンションのValueヘッドにも持ち込んだもので、注意機構そのものをスパース化する。結果として、容量(賢さ)を保ったまま実際の計算量を抑えられる、というのがIFMの主張だ。

そしてベンチマークの触れ込みが強気だ。エージェント系・推論系のタスクで、自分の最大15倍サイズの密(dense)モデルやMoEモデルを上回り、クローズドなフロンティアモデルとも競り合うという(AIwireの報道)。数字を鵜呑みにはできないが、方向性は明確で、「小さく動かして賢い」を狙っている。

ローカルで動かす人にこそ効く

正直、375Bのほうは個人が手元で動かすものではない。だが36B-A4Bは違う。アクティブが4B級なら、量子化版を使えば十分な規模のGPU、場合によっては強めのApple Siliconでも現実的に動く。実際、公開直後からHugging FaceにはGGUF量子化版が早々に上がっている。

ここで効いてくるのが、以前まとめたローカルAI推論ツールの比較で触れたような「手元で完結する」環境だ。Ollamaのようなランタイムに載せてしまえば、APIキーもクラウドも要らず、社外に出せないコードや文書を食わせても外に漏れない。「賢いローカルモデルの選択肢」という点では、Qwen3.8-27BMiniMax M3が担ってきた枠に、MBZUAIという新しい系統が一つ加わった格好だ。

もしMoVAの「アテンションもスパース化」が本当に効くなら、この先の意味は小さくない。ローカルで動かせるサイズのまま賢さだけが伸びれば、「重い処理はクラウドの巨大モデル、日常はローカルの小型モデル」という使い分けが、もっと多くの人にとって現実的な選択肢になる。学習データまで開いていることは、そこに「中身を検証できる安心感」も足してくれる。

気になる点

一方で、冷静に見るべき点もある。ベンチマークの「15倍を上回る」は選ばれたタスクでの話で、日本語の実務でどこまで通用するかは別問題だ。IFM/MBZUAIは日本での知名度がほぼゼロで、日本語データの厚みも未知数。データセット公開はありがたいが、その中に何が入っているか(ライセンスや権利処理)を各自で確認する責任も、使う側に返ってくる。

とはいえ、「重みだけ」が当たり前になった空気の中で、データとコードまで全部出すという振る舞いそのものが希少だ。中身を確かめてから使いたい人にとって、K2 Horizonは久しぶりに歓迎できるリリースだと思う。まずは36B-A4Bの量子化版を、手元のローカル環境で一度動かしてみるのがいい。

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