キーボードの隣に「AIボタン」を3つ足す — Claudeで中身を自作できる小さなMac用キーパッドDune
キーボードのすぐ隣に、大きなボタンが3つだけ並んだ小さなデバイスがある。押すと何が起きるかは、その瞬間に前面で開いているアプリによって変わる。ブラウザなら要約、会議アプリならミュートと録画、エディタなら定型処理——同じ3つのキーが、文脈に合わせて役割を切り替える。
これが Dune Keypad だ。ソフトウェアが飽和しつつあるAIツール界隈で、久しぶりに「手で触れるAI」を正面から作ってきた製品として、海外で静かに注目を集めている。
「録画する」ではなく「操作する」ハードウェア
近年のAIハードウェアは、AIピンやAIレコーダーのように「あなたの行動を記録する」方向のものが多かった。Dune が面白いのは、逆にAIエージェントを"操作する"側に振り切っている点だ。実際、開発元にはウェアラブル大手 Ultrahuman の元ハードウェアVPが参画し、「記録するだけでなくAIエージェントを制御するデバイス」という触れ込みで約$5.5M(8億円前後)を調達している。
デバイス自体は驚くほど小さい。40×10×10mm、重さ50gで、USB-Cでラップトップの左側ポートに挿す。キーボードから左手をほとんど動かさずに3つのボタンへ届く配置だ。Mac の前面アプリをリアルタイムに検知し、そのアプリに割り当てられたアクションをボタンに載せる。ここが Dune の心臓部と言っていい。
Claudeに話しかけてボタンを作る
一番の売りは、ショートカットの作り方だ。Claudeに話しかけるだけで、3つのキーに好きなワークフローを割り当てられる。「Zoomを開いているときはこのボタンでミュート、このボタンで文字起こしを開始」といった指示を、自然言語で伝えて組み立てる。コミュニティ製スクリプトのマーケットプレイスも用意され、他人が作った便利なアクションをそのまま持ってこられる。
つまり Dune は、単体で完結したガジェットというより、Claude を"設定係"にした物理インターフェースだ。ボタンの数は3つしかないが、そこに何を載せるかはソフト側でいくらでも書き換えられる。ハードは最小限、賢さはAIとコミュニティに委ねる——この割り切りは今っぽい。
Product Hunt では328 upvote・51コメントを集めてその日の4位。TechCrunch も複数回取り上げており、ガジェット系メディアでの露出は新興ハードとしてはかなり多い。会議コントローラーとしての使い方が特に評価されていた。
価格
プリオーダーで$119(約1.8万円)、正式リリース後は$149(約2.2万円)に上がる見込みだ。左手用の物理デバイスとしては、Stream Deck の小型モデルなどと同じ価格帯にいる。「AIで中身を自作できる」ぶんの上乗せをどう見るか、というレンジだ。
正直な評価
素直に良いと思うのは、コンセプトの一貫性だ。「3ボタン」という制約と「Claudeで自由に中身を書ける」という拡張性の組み合わせは、絶妙にバランスが取れている。ボタンが10個も20個もあれば結局覚えきれないが、3つなら手が勝手に覚える。その3つを文脈で切り替えるという発想は、シンプルだが的を射ている。
一方で、懸念もはっきりある。まず、「前面アプリを検知して役割を変える」体験がどれだけ正確・高速かは、実機で使い込まないと分からない。切り替わりに一瞬でも引っかかりがあれば、物理ボタンの気持ちよさは一気に損なわれる。ここはレビュー動画だけでは判断しづらい部分だ。
もう一つは、Claude ありきの設計であること。ショートカットの作成や賢い挙動が Claude に依存するなら、オフライン時や仕様変更時にどこまで安定するのか、という不安が残る。物理デバイスなのにソフト/サービス側の都合で挙動が変わりうる、という構造は、良くも悪くも今のAIガジェット共通の弱点だろう。値段も、キーボードショートカットで足りている人には正直オーバースペックだ。
この小さな箱が開ける可能性
Dune を単なる便利ガジェットで終わらせず、もう一歩先を想像すると面白い。
鍵は「物理ボタン × AIエージェント」という組み合わせだ。いまAIエージェントは、チャット欄にテキストを打ち込んで起動するのが基本になっている。だが Dune のようにエージェントの起動を物理ボタンに割り当てられるなら、「席に着いて左手で1押し、今日のメールを要約させる」といった操作が、アプリを開くより速く回るようになる。エージェントを"呼び出す"体験が、キーボードやマウスと同じ身体感覚に降りてくる。
さらに、コミュニティのスクリプトマーケットが育てば、**「他人が作ったエージェント操作を、ボタン1つ買う感覚で自分の手元に足す」**世界もありうる。会議用、コーディング用、動画編集用と、用途ごとの"ボタンの効き"を配布し合う文化が回り始めれば、Dune は単体のデバイスを超えて、AIエージェントのための物理ランチャーという新しいカテゴリを作るかもしれない。そこまで揃えば、「AIを使う」という行為が、画面の中の操作から手元の1押しへと静かに移っていく。
現時点ではプリオーダー段階の新興ハードであり、実機の完成度は未知数だ。それでも、ソフトに偏りきったAIツールの流れのなかで「手で触れるAI」を真正面から提案してきた点は、単純に応援したくなる。詳細は Dune の Product Hunt ページ から確認できる。
関連記事
AIのCEO・CTO・CMOで「一人会社」を回す — 承認だけ人間がやるSoloop
Soloopは一人の創業者向けに、AI CEO・CTO・CMO・アナリストが会社運営を分担する承認ファースト型エージェントOS。何をどこまで任せられるのか、その実力と限界を解説する。
メールもSMSも「先回り」でさばく自律型AI秘書 — 創業者向けのHey Noah
Hey Noahは指示を待たず自律的に動くAIエグゼクティブアシスタント。メール・SMS・WhatsAppで会議調整やフォローアップを代行。何ができて何が不安かを整理する。
研究データの作図をAIに任せたい、でも生データは渡したくない — その両立を狙うMacアプリAutoplot
Autoplotは、表データからプロット・フィット・ヒートマップをAIアシストで作る科学作図向けMacネイティブアプリ。生データを渡さない設計、論文用の書き出し、向き不向きを解説する。