スマホもPCも、1つのAIがまたいで操作する — 話題の「デバイス横断エージェント」ConscioussAI
コンピュータ操作エージェントはこの1年で一気に増えた。ただ、そのほとんどは「PCの中」か「ブラウザの中」で完結している。ClaudeのコンピュータユースはmacOSデスクトップを、OpenAIのOperator(現在はChatGPT Agentに統合)はWebブラウザをそれぞれのフィールドにしてきた。
そこに「スマホもPCも、両方まとめて1つのエージェントが操作する」と言い切る新顔が現れた。9月1日にStartupCornersとProduct HuntでフィーチャーローンチされたConscioussAIだ。現時点ではv2026.1.33のベータ版で、名前を聞いてピンとくる人はまだほとんどいないだろう。
「チャットボットではなく、デバイスの実行レイヤー」
ConscioussAIが自ら掲げるのは、"another chatbot"ではなく「あなたのデバイスの実行レイヤー(execution layer)」というポジションだ。macOS、Windows、iOS、Androidという4つのOSにまたがってインストールでき、アプリの起動や操作、タブの開閉、テキスト入力、さらにはターミナルコマンドの実行やシステム設定の変更まで、ユーザーの許可のもとで肩代わりする。
面白いのは、これらを音声で複数のタスクとして並列に投げられる点だ。「この資料をPDFにして、Slackの未読を要約して、明日の予定をカレンダーに入れておいて」——といった指示を、それぞれ別のエージェントが同時に処理していくイメージになる。
Ambient Mode — 開く前に成果物ができている
もう一つの目玉が「Ambient Mode」だ。画面のコンテキストを常時監視し、助けが要りそうな場面で能動的に提案してくる。さらにスケジュール実行と組み合わせると、あなたがアプリを開く前に成果物を用意しておく、という動きも可能になる。
ここが個人的にいちばん想像を掻き立てられた部分だ。従来のエージェントは「指示してから動く」受け身の存在だった。Ambient Modeが本当に機能するなら、朝PCを開いた瞬間に、昨夜のうちに整理されたメール返信の下書きや、会議用の要点メモが並んでいる——という体験になる。スマホとPCをまたぐという前提と噛み合えば、移動中にスマホで受けた依頼の続きを、席に着いたPCがそのまま仕上げている、といった連続性も理屈のうえでは成り立つ。デバイスの境界を意識せずにタスクだけを追える世界は、確かに魅力的だ。
既存のコンピュータ操作エージェントとの違い
強みははっきりしている。「スマホ×PCの横断」という一点だ。
Claudeのコンピュータユースは強力だが、現状はmacOS上のClaude CodeやCowork経由のデスクトップ操作が中心で、スマホは守備範囲外。OpenAI系はブラウザ操作に寄っている。どちらも「1台のエージェントが手元のiPhoneとWindows PCを同時に面倒みる」という絵は描いていない。ConscioussAIはそこを最初から狙いにきた。
逆に言えば、単体のデスクトップ操作やベンチマーク上の精度でClaudeやOpenAIを上回るという話ではなさそうだ。勝負しているのは能力の絶対値ではなく、「守備範囲の広さ」だと理解しておくのが正しい。
正直な懸念 — デバイスを丸ごと預ける怖さ
ここからは冷静に書く。
まず、ConscioussAIは名前の通りまだ無名のスタートアップで、実績は乏しい。ベータ版であり、料金体系や正式提供の時期も現時点では明確とは言えない。「できる」と謳われている機能が、実際の環境でどこまで安定して動くかは未知数だと考えておいたほうがいい。
そしてより本質的なのがセキュリティだ。ターミナルコマンドの実行やシステム設定の変更まで許すということは、エージェントに乗っ取られたときの被害範囲がそのままデバイス全体になるということでもある。近ごろはエージェント自体を狙うプロンプトインジェクション的な攻撃も報告されており、「スマホもPCも操作できる」利便性は、裏を返せば「スマホもPCも一度に危険にさらす」ことと表裏一体だ。
Ambient Modeの常時監視も、便利さと引き換えに、画面上のあらゆる情報を見られ続けることを意味する。何がどこまで送信・保存されるのか、透明性がはっきりしないうちは、機密情報を扱う端末に入れるのは正直ためらう。
それでも見ておく価値はある
とはいえ、「デバイスの境界をまたぐエージェント」という方向性自体は、遅かれ早かれ主流になると思う。人間は普段からスマホとPCを行き来して1つのタスクをこなしているのに、AIだけがどちらか一方に閉じ込められているのは不自然だからだ。
ConscioussAIがその答えになるかは分からない。ただ、大手が慎重に切り出している領域へ、無名のスタートアップが最初から全部乗せで飛び込んできたこと自体に、この分野の熱量が表れている。導入するかどうかは別として、コンピュータ操作エージェントの現在地を知るうえで、一度は覗いておく価値のあるプロダクトだ。
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