Claude Code制限倍増の裏にSpaceXの22万GPU — Code with Claude 2026で発表された全機能まとめ
Anthropicが5月6日、サンフランシスコで開催した開発者カンファレンス「Code with Claude 2026」で、Claude Codeの制限倍増からAIエージェントの自己改善機能まで、一気に複数の発表を行った。

新モデルの発表はなかった。代わりに出てきたのは「いまある性能を、もっと使い倒せるようにする」ための実務的なアップデート群だ。API利用量が前年比17倍になったプラットフォームが、次にどこに投資しているのかがはっきり見える内容だった。
以下、開発者にとって重要度の高い順に整理する。
SpaceX提携とClaude Code制限倍増
最も即効性のあるニュースから。AnthropicがSpaceXのColossus 1データセンター(テネシー州メンフィス)の全計算容量を確保する契約を結んだ。NVIDIA GPU 22万基超、300メガワット以上の電力容量が、1か月以内にAnthropicのインフラに加わる。
この追加容量を背景に、Claude Codeの5時間ローリング制限が即日倍増された。対象はPro・Max・Team・Enterprise(シート型)の全プラン。さらにProとMaxではピーク時間帯の制限も撤廃された。
API側もOpus系モデルの制限が大幅に引き上げられている。Tier 1で入力トークン毎分の上限が1500%増、出力が900%増。Claude Codeのヘビーユーザーがぶつかっていた「5時間の壁」が、目に見えて遠のいた。
正直なところ、Claude Codeの制限は多くの開発者にとって一番のペインポイントだった。コードレビューやリファクタリングの途中で制限に引っかかり、作業が中断されるストレスは日常的なものだ。倍増しても無制限ではないが、連続作業の体験は大きく変わるはずだ。
ちなみにAnthropicはSpaceX以外にも、Amazon(最大5ギガワット)、Google・Broadcom(5ギガワット、2027年稼働)、Microsoft・NVIDIA(Azure 300億ドル)、Fluidstack(500億ドル規模のインフラ投資)と、計算資源の確保を全方位で進めている。さらに「軌道上のAI計算能力」の検討にも言及しており、SpaceXとの関係は地上のデータセンターにとどまらない可能性がある。
Dreaming — AIが「夢を見て」自己改善する
カンファレンスで最も目を引いた発表がDreamingだ。Claude Managed Agentsに追加されたリサーチプレビュー機能で、エージェントが過去のセッションを振り返り、失敗パターンやワークアラウンドを自分で抽出してメモリに保存する。
人間が「昨日やった仕事のやり方、もっと効率的にできたな」と寝る前に考えるのに近い。実際にAI法律プラットフォームのHarveyがDreamingをテストしたところ、ファイルタイプの回避策やツール固有のパターンをエージェントが記憶し、タスク完了率が約6倍に改善したという。
まだリサーチプレビュー段階でアクセスには申請が必要だが、方向性としては非常に面白い。エージェントが「使い込むほど賢くなる」ことが実現すれば、企業のAI導入は一過性の設定作業から、継続的な学習プロセスに変わる。プロンプトを手動で改善し続ける必要がなくなるかもしれない。
Outcomes — 「成功」を定義するとエージェントが勝手にリトライする
Outcomesはパブリックベータで提供開始。エージェントに「このタスクの成功条件はこれ」と定義しておくと、別のグレーダーエージェントが結果を評価し、基準を満たすまで自律的にやり直す仕組みだ。
Anthropicのテストでは、標準的なプロンプトループと比較してタスク成功率が最大10ポイント向上した。
地味だが実務で効くタイプの機能だ。これまでは「エージェントの出力を人間がチェックして、ダメなら指示を修正して再実行」というループを回していた。Outcomesはそのループの一部を自動化する。特に定型的な品質基準があるタスク――コードのテスト通過率、レポートのフォーマット準拠、データ抽出の正確性――で威力を発揮するだろう。
複数エージェントの協調がパブリックベータに
複数のエージェントを束ねて協調させるマルチエージェントオーケストレーションもパブリックベータに昇格した。デモではドローン着陸シナリオが使われ、Commander・Detector・Navigatorの3エージェントが役割分担して動作する様子が示された。
4月にManaged Agentsがローンチした時点では「リサーチプレビュー」だったマルチエージェント協調が、1か月でパブリックベータに進んだ。展開速度が速い。
Claude Code Review
Claude Codeに組み込まれたマルチエージェント型のコードレビュー機能。/ultrareview コマンドで並列のクラウドエージェントがコードを分析する。Anthropic社内では全チームが使っているという。
AI生成コードの量が増えるほど、レビューの負荷も上がる。Claude Code自身が生成したコードをClaude Codeがレビューするという構図はやや再帰的だが、少なくともセキュリティ脆弱性や明らかなロジックエラーの検出には有効だろう。CI/CD連携でのAuto-fixも提供されており、PRに対して自動で修正を適用できる。
Remote Agents — スマホからPCを操作
Remote Agentsは、スマートフォンからPC上のClaude Codeセッションを操作できる機能。移動中に「あのリファクタリング、進めておいて」とスマホから指示を出し、PCのエージェントが実行する使い方が想定されている。
便利そうだが、セキュリティ面の懸念も残る。リモートからエージェントにファイルシステム操作やシェル実行を許可する以上、認証とスコープ管理の堅牢さが問われる。
Routinesの進化
既存のRoutines機能も強化された。非同期の自動化ワークフローが組めるようになり、夜間にPRを準備させるといった使い方が可能に。高次のプロンプトとして機能し、Claude Codeの操作をスケジュール実行できる。
事例: Mercado Libreが「Q3までに自律コーディング90%」を目指す
カンファレンスで印象的だったのが、中南米最大のEC企業Mercado Libreの事例だ。23,000人のエンジニアを擁する同社が「2026年Q3までに自律コーディング90%」を目標に掲げている。Shopifyも主要顧客として名前が挙がった。
90%という数字の定義次第ではあるが、大企業がAIコーディングを「実験」ではなく「全社戦略」として語り始めたのは注目に値する。
東京開催は6月10日
Code with Claudeは今年、サンフランシスコに加えてロンドン(5月19日)と東京(6月10日)でも開催される。いずれも参加費無料で、対面・オンライン配信の両方がある。
東京開催は国内の開発者にとって直接Anthropicのエンジニアと話せる貴重な機会だ。対面枠は応募多数で締め切られる傾向があるため、興味がある人は公式サイトで早めに登録しておくのがいい。
まとめると
Code with Claude 2026は、新モデルではなく「インフラと実務機能」にフォーカスしたカンファレンスだった。SpaceXの22万GPUで制限を緩和し、Dreamingでエージェントの自律学習を始め、OutcomesとCode Reviewで品質管理を自動化する。
個々の発表は派手ではないが、全体を通して見ると「Claude Codeを本番環境で大規模に使い倒すための地ならし」という意図が一貫している。API利用量17倍という数字が示す通り、Anthropicのプラットフォームは成長フェーズに入っている。制限倍増で離脱を防ぎ、Dreamingで定着率を上げ、エンタープライズ顧客の「90%自律」という野心を支える。ツールの性能だけでなく、使い続けるためのインフラが整い始めた。
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